餃子の満洲の暖簾をくぐった先に、もう一枚「源泉掛け流し」と染め抜かれた暖簾が下がっている。群馬・老神温泉(おいがみおんせん)の「ぎょうざの満洲 東明館(とうめいかん)」は、餃子チェーンが営む温泉宿。その日帰り入浴は、老神温泉の3号泉を使った単純硫黄温泉だ。成分総計0.57g/kgと、数字のうえでは薄い湯。草津や万座のような硫黄の刺激を期待すると拍子抜けするかもしれない。それでも、その湯を——加水も加温も循環も消毒もせずに——そのまま出している正直さを、掲示と湯口の両方で確かめてきた。日帰り700円だ。

基本データ|老神温泉 東明館の日帰り入浴(立ち寄り湯)・料金・泉質
| 施設名 | ぎょうざの満洲 東明館(とうめいかん) |
|---|---|
| 所在地 | 群馬県沼田市利根町大楊1519-2(老神温泉) |
| 電話 | 0278-56-2641(フリーダイヤル 0120-56-2641) |
| 日帰り入浴(立ち寄り湯) | 12:00〜20:00(入館受付は19:00まで) |
| 入浴料金 | 大人700円・小人450円・幼児350円(税込)/6枚綴り回数券3,500円 |
| 源泉名 | 老神温泉 3号泉 |
| 泉質 | 単純硫黄温泉(低張性弱アルカリ性高温泉) |
| 源泉温度/pH | 源泉55.6℃/pH8.4(成分総計0.57g/kg) |
| 利用状況 | 加水なし・加温なし・循環ろ過なし・消毒なし(成分表掲示より) |
| 浴室 | 男女別。男湯=内湯「赤城の湯」+露天「吹割の湯」/女湯=内湯「武尊の湯」+露天「尾瀬の湯」 |
| 支払い | クレジットカード可 |
| 訪問 | 日曜の昼 |
※泉質・利用状況・料金は、浴室の温泉成分等掲示表と料金看板で確認した数字です(2026年6月時点)。
浴室|渓谷沿いの露天「吹割の湯」と内湯「赤城の湯」

浴室は男女別。この日入った男湯は、内湯が御影石づくりの「赤城の湯」、露天が「吹割の湯」という名前だった(女湯は内湯「武尊の湯」・露天「尾瀬の湯」)。内湯は天井が高く、大きな窓いっぱいに老神の緑が広がる。広すぎず狭すぎず、ひとりで来てものんびりできる落ち着いた湯船だ。

露天「吹割の湯」は岩組みで、竹垣の向こうに片品渓谷の木々が迫る。内湯から外へ出ると、山あいの空気で湯がほどよくぬるみ、長くつかっていられた。露天で外気にあたりながらクールダウンするのが好きな身としては、この距離感がちょうどよかった。
湯と源泉かけ流しの物的証拠|湯口と、掲示の「していません」

源泉かけ流しを名乗る湯は多いが、東明館はその根拠が掲示ではっきりしている。木の湯口からは源泉がとめどなく注がれ、縁から静かにあふれていく。そして浴室の温泉成分等掲示表の「温泉利用状況」欄には、こう書かれている——加水の状況「加水していません」、加温の状況「加温していません」、循環・ろ過状況「循環ろ過装置は使用していません」、消毒処理「消毒剤は使用していません」。薄める・沸かす・回す・消毒する、のどれもしていない。

源泉は55.6℃と高温だが、配管と湯口を通り、外気に触れる露天では、入りやすい湯加減に落ち着いている。湯につかると、まずほんのりと卵のような硫黄の匂いが鼻に届く。硫黄泉といっても刺激は強くなく、貝の出汁を思わせるような、やわらかい香りとさわり心地だ。湯はこの日、わずかに濁って見えた。成分総計0.57g/kgの単純硫黄泉。中国地方や九州で濃い硫黄泉に通ってきた身には物足りなさもあるが、薄いからこそ角がなく、この日は長くつかっていられた。

泉質と適応症・禁忌|単純硫黄温泉(硫黄泉)の掲示より
溶存物質は0.57g/kgと薄い部類(単純温泉の枠)だが、硫黄分が療養泉の基準(総硫黄2mg/kg以上)を満たすため、この3号泉は環境省の区分でいう療養泉(含硫黄泉)に分類される。だから温泉成分等掲示表には適応症が記載されている。薄さの根拠(溶存物質)と硫黄泉である根拠(硫黄分)は別の数字、ということだ。
掲示によれば、この湯の適応症は、固有のものとして「慢性皮膚病・慢性婦人病・きりきず・糖尿病」、一般的なものとして「神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え性・病後回復期・疲労回復・健康増進」などとされている。
いっぽうで禁忌症(入浴を控えたほうがよい症状)も掲示されている。固有の禁忌は「皮膚・粘膜の過敏な人、特に光線過敏症の人」、一般的な禁忌として急性疾患(発熱時)・重い心臓病・妊娠中(とくに初期と末期)などが挙げられている。掲示で名指しされているのは前者だが、加えて硫黄泉は一般に肌の油分を流しやすいとされるので、乾燥肌の人も長湯を避け、様子を見ながら入りたい。なお、ここで挙げた適応症・禁忌は温泉分析表の記載をそのまま紹介したもので、効果や感じ方には個人差があります。
餃子の満洲が営む宿・老神温泉|湯上がりに、そのまま餃子
東明館を営むのは、埼玉発の餃子チェーン「ぎょうざの満洲」。館内にはレストランがあり、湯上がりにそのまま満洲しょうゆラーメンや焼餃子で一杯、という流れがこの一軒で完結する。食事と温泉の動線がここまで近い宿は珍しい。グルメ側の詳しいレビューは別記事にまとめた。
▶ ぎょうざの満洲 東明館|老神温泉の宿で食べる900円ランチ(グルメ編)
老神温泉そのものは、片品川(片品渓谷)沿いの古い湯治場。赤城山の神と日光・男体山の神が戦場ヶ原で争い、矢傷を負った赤城の神が地に刺した矢から湯が湧き、その湯で傷を癒して相手を追い返した——「神を追い返した(追い神)」が転じて「老神」になったと伝わる(沼田市・老神温泉観光協会による)。硫黄をふくむ湯が、昔から湯治客に親しまれてきた温泉地だ。
アクセス・基本情報|沼田ICから約20〜25分、吹割の滝の途中に
老神温泉は群馬県沼田市の利根町、片品川沿いの渓谷温泉地。関越道・沼田ICから国道120号で尾瀬・日光方面へ約20〜25分(道路状況による)。近くには幅30m・高さ7m、「東洋のナイアガラ」とも呼ばれる吹割の滝もあり、尾瀬・吹割の滝めぐりの途中に立ち寄りやすい。駐車場は無料(建物隣+第2駐車場)。日帰り入浴は12:00〜20:00(受付19:00まで)、大人700円。
まとめ|餃子で有名な宿の、まじめな源泉かけ流し
濃さでは草津・万座に遠く及ばない。けれど東明館の湯は、薄い湯を薄いまま、薄めも沸かしも回しもせず出している——その正直さを「加水・加温・循環・消毒なし」の掲示と湯口で証明してみせる一軒だった。700円でこの湯に入れて、上がればそのまま餃子。その物的証拠が、餃子の看板に隠れているのが少しもったいないくらいだ。
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よくある質問
Q. 宿泊しなくても日帰りで入浴できますか?
A. できます。日帰り入浴(立ち寄り湯)は12:00〜20:00(入館受付は19:00まで)、大人700円です。
Q. 源泉かけ流しですか? 加水や循環は?
A. 浴室の温泉成分等掲示表に「加水・加温・循環ろ過・消毒のいずれもしていません」と明記された、源泉かけ流しです。源泉は老神温泉3号泉、単純硫黄温泉(源泉55.6℃・pH8.4)。
Q. どんな湯ですか?
A. ほんのり卵のような硫黄の香りがする、やわらかい単純硫黄泉(硫黄泉)です。草津・万座のような強い刺激はありません。硫黄泉のため、肌の弱い方・乾燥肌の方は様子を見ながら入ってください(効果・感じ方には個人差があります)。
Q. 食事だけ・入浴だけでも利用できますか?
A. どちらもできます。館内のぎょうざの満洲(トウメイカン)で食事のみの利用も可能です(グルメ編はこちら)。
硫黄泉つながり・沼田/みなかみエリアの源泉かけ流し、こちらも。



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