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悠湯里庵 日帰り入浴|川場温泉の無加温・無消毒のぬる湯

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群馬の温泉に通っていると、「いい宿の湯に、泊まらず日帰りで入れる」という情報がいちばんありがたい。川場村の山あいにある かやぶきの源泉湯宿 悠湯里庵(ゆとりあん) は、まさにそれ。茅葺(かやぶ)き屋根の風情ある宿でありながら、日帰り入浴1,100円で立ち寄れる。しかも浴場には、加水も加温も消毒もしない、源泉そのままのぬる湯が一槽ある。

日曜の朝、10:30の開店と同時に飛び込んだ。狙いは一番風呂。誰もいない湯船に、源泉だけが静かに注ぐ時間を味わうためだ。

悠湯里庵 茅葺きの門
悠湯里庵 茅葺きの門

3秒で分かる結論

  • 川場温泉「悠湯里庵」は茅葺きの源泉湯宿。日帰り入浴は10:30〜20:00・大人1,100円(予約不要)
  • 日帰りで入れるのは武尊乃湯(ほたかのゆ)。源泉は「弘法の湯」、単純温泉(アルカリ性)・pH9.1
  • 浴槽は3つ。手すり付きの「ぬる湯」だけが加水・加温・消毒なしの源泉そのまま(体感37℃)。もう一つの内湯と露天は加温・消毒を併用した放流式
  • 源泉を味わうならぬる湯一択。「源泉かけ流し」の木札も、このぬる湯の湯口にだけ立つ。浴槽ごとの利用許可証まで開示する誠実な宿
  • 宿泊もできるので、泊まりでじっくり浸かるのもおすすめ

施設情報・日帰り入浴

項目内容
施設名川場温泉 かやぶきの源泉湯宿 悠湯里庵(ゆとりあん)
所在地群馬県利根郡川場村川場湯原451-1
日帰り時間10:30〜20:00
日帰り料金大人1,100円/小人(3歳〜小学生)660円(税・入館料込)
日帰り浴室武尊乃湯(男女別・露天あり)
予約入浴は不要(食事付きは前日まで要予約)
源泉名弘法の湯(武尊乃湯で使用)
泉質単純温泉(アルカリ性・低張性)/pH9.1
湯使いぬる湯(手すり付き)=放流式(無加水・無加温・無消毒)/もう一つの内湯・露天=放流式(加水・加温・消毒併用)
宿泊可(茅葺き客室の源泉湯宿)

※料金・情報は2026年5月時点。最新は公式サイトでご確認を。

道路沿いの黒塀に「悠湯里庵」の看板、赤いポストが目印。一歩入ると、茅葺き屋根の集落がそのまま宿になったような、日本の原風景が広がる。

道路沿いの外観(黒塀と赤ポスト)
道路沿いの外観(黒塀と赤ポスト)

館内は「時代もの」の博物館みたい

玄関を入ると、まず館内の広さに驚く。天井の高い広々としたロビーに、鉱石標本のようなコレクションがずらりと並ぶガラスケース、壁一面の武者絵らしき額。温泉宿というより、ちょっとした歴史博物館に迷い込んだ感覚だ。日帰りでもこの空間を通って湯屋へ向かうので、入浴前から気分が上がる。

広い館内ロビーと展示ケース
広い館内ロビーと展示ケース
壁一面の額と展示ケース
壁一面の額と展示ケース

入口には「いらっしゃいませ」の生け花。茅葺きの宿らしい、静かなもてなしの設えだ。

玄関の設え
玄関の設え

武尊乃湯(ほたかのゆ)— 狙うは「ぬる湯」一択

日帰りで入れるのは 武尊乃湯。中には浴槽が3つある——手すり付きのぬる湯、窓辺の内湯、そして露天だ。10:30の開店直後、脱衣所のロッカーはどこも使われておらず、どの湯面もまったく揺れていない。狙いどおりの一番風呂、しばらくは完全な独り占めだった。

そして結論から言うと、私が入るのは手すり付きのぬる湯、ここ一択だ。

武尊乃湯 ぬる湯(手すり付き・源泉かけ流し)
武尊乃湯 ぬる湯(手すり付き・源泉かけ流し)

この浴槽の湯口にだけ、「武尊乃湯 源泉かけ流し」 の木札が立っている。裏を返せば、ほかの浴槽にこの木札はない。脱衣所の利用許可証で確認すると、3つの浴槽のうちこのぬる湯だけが加水・加温・消毒のいずれもしていない放流式で、もう一つの内湯と露天は加温・消毒をしている。源泉そのものに浸かれるのは、この一槽だけなのだ。

「武尊乃湯 源泉かけ流し」の木札と湯口
「武尊乃湯 源泉かけ流し」の木札と湯口

実際に浸かると、かなりぬるめ。この日(5月の朝)の体感は37℃ほどで、長湯派にはたまらない。無加温で季節や流量によって湯温は動くはずだが、源泉が静かに注ぐ音を聞きながら、のぼせることなくぼーっと浸かっていられた。鼻を近づけると、ごくかすかに硫黄っぽい香り。島根・大分のぬるめの名湯(美又や温泉津)で覚えた「ぬる湯にずっと身を委ねる気持ちよさ」が、群馬の日帰りで味わえるのはうれしい。

浴室の壁には、こんな掲示もある。

「湯の花です」の掲示
「湯の花です」の掲示

もう一つの内湯と露天は、かけ流しと呼ばない理由

同じ武尊乃湯でも、ぬる湯以外の2槽は湯の使い方が違う。脱衣所の温泉利用許可証を読むと、3つの浴槽の湯使いはこうなっている。

浴槽給湯方式加水加温消毒
ぬる湯(手すり付き)放流式なしなしなし
内湯(窓辺・露天が見える)放流式ありありあり(塩素系)
露天放流式ありありあり(塩素系)

窓辺の内湯と露天は、湯が冷めすぎないよう温め、衛生的に保つため塩素消毒もしている。理にかなった運用だ。ただ、加温・消毒をした湯を私は「源泉かけ流し」とは呼ばない。「加温・消毒併用の放流式」と区別しておきたい——「源泉かけ流し日記」を名乗る以上、ここは正確に書く。レジオネラ対策で消毒する判断自体は理解できるが、源泉そのものではないからだ。

露天は屋根付きの東屋造りで、岩組と竹垣、植栽に囲まれた気持ちのいい空間だ。湯そのものの鮮度を味わうならぬる湯だが、露天には別の役割がある。ぬる湯でじっくり温まったあと、露天に移って外気に当たると、火照りがすっと引いて整う。露天派の私には、この「ぬる湯→外気クールダウン」の往復がちょうどいい。

武尊乃湯の露天風呂
武尊乃湯の露天風呂

源泉を味わいたい人へのおすすめは明快だ。まず手すり付きのぬる湯にじっくり浸かり、温まりたくなったら窓辺の内湯か露天へ。とはいえ私は、結局ぬる湯に戻ってばかりだった。


弘法大師ゆかりの「開湯伝説」

浴室の脱衣所には、開湯伝説を記した木札があった。要約すると——霊峰・武尊山の麓にある川場温泉は、日光へ向かう途中の弘法大師が発見したと伝わる。旅の老婆をいたわった大師が杖で地を突くと湯が湧き出した、という由来で、古くから脚気(かっけ)に効く湯として知られたと伝わる。

開湯伝説の木札
開湯伝説の木札

歴史的な厳密さは案内板の責任範囲として、私は掲示の引用として紹介しておく。こうした由緒書きが残っているのも、老舗の源泉宿らしい趣だ。


温泉分析書から読む湯の素性

脱衣所には温泉分析書も掲示されていた。武尊乃湯で使われている源泉は 「弘法の湯」(利用許可証にも武尊乃湯の使用源泉として記載)。その分析書から読み取れた数値を引く。

項目
源泉名弘法の湯
源泉地での泉温約39℃(動力揚湯)
湧出量60.4 L/分
pH9.1
外観無色澄明
泉質単純温泉(アルカリ性・低張性)
引湯距離源泉地より約50m
温泉分析書(源泉名・泉温・pH)
温泉分析書(源泉名・泉温・pH)

源泉地での泉温は約39℃。これを約50m引くあいだに配管で少し下がり、加温せず浴槽に張れば湯面からの放熱でさらに落ちる。ぬる湯がぬるめに落ち着く理由は、この無加温の湯使いにあったわけだ。なお源泉名は「弘法の湯」で、宿泊者専用の湯屋「弘法乃湯」とは名前が似ているが別物(源泉名を湯屋の名にも使っている)。

溶存物質が少ないため、温泉法上の分類は 単純温泉。pHが8.5以上あるので「アルカリ性単純温泉」と呼ばれることもあるが、いわゆる硫黄泉(療養泉として硫黄を名乗るには総硫黄2mg/kg以上が必要)ではない。さきほどかすかに感じた硫黄っぽい香りも、泉質名に付くほどの量ではない。そもそもpH9前後のアルカリ性の湯では硫化水素の刺激臭は本来立ちにくく、香るとしてもごく淡いはずで、実際その通りだった。それでも、アルカリ性ならではの“ぬるすべ”した肌ざわり(皮脂や古い角質がわずかに溶けるためのぬめりで、人によっては少し乾くとも感じる)と、かすかな香りがあわさって、単純温泉という地味な分類名のわりに、湯はしっかり個性を持っている。

脱衣所には温泉利用許可証も額装されて掲示されていた。浴槽ごとの湯使いまできちんと開示しているのは、源泉宿としての誠実さの表れだ。

温泉利用許可証
温泉利用許可証

浴室入口のかけ湯

浴室の入口には、木桶と柄杓を備えたかけ湯。湯船に入る前に、ここで体を流してから入る。木でしつらえた佇まいが、源泉宿らしい風情を添えている。

浴室入口のかけ湯
浴室入口のかけ湯

宿泊でじっくり浸かるのもいい

悠湯里庵は本来、茅葺き客室をもつ源泉湯宿。口コミによると、客室へはゴルフカートや小型モノレールで移動するというユニークな造りで、湯豆腐会席などの食事も評判だ。日帰りで武尊乃湯を味わって気に入ったら、次は泊まりで弘法乃湯・里乃湯も含めてゆっくり——という楽しみ方もできる。

茅葺きの宿の佇まい
茅葺きの宿の佇まい

こんな人におすすめ・合わない人

こんな人評価理由
いい宿の湯に日帰りで入りたい1,100円・予約不要で武尊乃湯(ぬる湯は源泉そのまま)に入れる
源泉そのままのぬる湯を味わいたい手すり付きのぬる湯は無加水・無加温・無消毒、体感37℃
湯使いの物的証拠を確かめたい湯の花掲示・かけ流し木札・浴槽ごとの利用許可証まで開示
消毒なしの湯にこだわるぬる湯は無消毒(ほかの内湯・露天は加温・消毒あり)
熱い湯でガツンと温まりたい源泉のぬる湯が主役。温まりたいなら加温した内湯・露天へ
泊まりで非日常を味わいたい茅葺き客室の源泉湯宿。宿泊予約もおすすめ

まとめ

川場温泉 悠湯里庵で私が惚れたのは、武尊乃湯の手すり付きの一槽。加水・加温・消毒なしの、源泉そのままのぬる湯だ。ほかの内湯と露天が加温・消毒を併用する放流式なのに対し、この一槽だけは手を加えない生の湯。同じ湯屋でも浴槽ごとに湯使いは違う——それを掲示で正直に開示しているのが、この宿の信頼できるところだ。日帰り1,100円でこの湯に出会えるのは、群馬では貴重だと思う。

日帰りで気に入ったら、次は泊まりで。茅葺き客室と湯豆腐会席、宿泊者専用の弘法乃湯・里乃湯まで含めて、ゆっくり味わう価値のある宿だ。


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