群馬で温泉に通っていると、移動の道中そのものが楽しみになる。今回は嬬恋村の 半出来温泉(はんでき) へ抜ける昼、その手前の吾妻郡東吾妻町・原町で一杯すすってから湯に向かうことにした。狙いは 「肉汁中華そば 槻ノ木(つきのき)」。住所は東吾妻町原町365-5、JR吾妻線「群馬原町」駅から約700m・徒歩10分弱の、郊外の一軒家ラーメン店だ。渋川方面から国道145号を西へ、吾妻を抜けて嬬恋の温泉へ向かう、ちょうどその通り道にある。
屋号の槻ノ木は、店のすぐ近くにある『槻木(つきのき)』信号と、そこに立つ「原町の大ケヤキ」に由来する。槻はケヤキの古い呼び名で、この大ケヤキは推定樹齢約1000年・国指定天然記念物、日本三大ケヤキの一つに数えられる巨木だ。看板のロゴもケヤキと丼を組み合わせた意匠で、地名を背負った店名というだけで「土地の一杯」という気がしてくる。
最初に一つだけ。自分は温泉でも「余計な手を加えず仕上げた湯」に弱く、ラーメンでも雑味を抜き切った澄んだ一杯に惹かれる。屋号は「肉汁中華そば 槻ノ木」だが、看板メニューの正式名は「肉出汁中華そば」。“肉汁”の字面はガツン系を匂わせるのに、中身は“肉の出汁”——その予想の裏切りこそ、この店の入口だと思う。価格・営業情報は2026年5月時点。
3秒で分かる結論
- 群馬・東吾妻町「肉汁中華そば 槻ノ木」、注文は 肉出汁中華そば ¥850+槻ノ木ライス ¥250(支払い¥1,100)
- 看板の「肉汁」から想像する濃厚ガツン系ではなく、最初は あっさり上品な清湯。背脂が乗るのに後味が重くない
- 真骨頂は味変の振れ幅。卓上の背脂・ニンニクで「そのまま→コク→ガツン」へ自分で振れる
- スープは肉出汁/京風白出汁の二枚看板、京都府産九条ねぎを産地直送、限定で「にぼし薫る」も
- 嬬恋・半出来温泉へ抜ける道中の昼にちょうどいい立地(群馬原町駅近く・昼のみ・木曜定休、PayPay可)
基本情報|肉汁中華そば 槻ノ木(東吾妻町)

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店名 | 肉汁中華そば 槻ノ木(つきのき/TSUKINOKI) |
| 所在地 | 群馬県吾妻郡東吾妻町原町365-5 |
| 最寄駅 | JR吾妻線「群馬原町」駅から約700m・徒歩10分弱 |
| 目印 | 「原町の大ケヤキ」のある『槻木』信号からすぐ |
| 営業時間 | 11:30〜14:30(L.O.14:00)※昼のみ |
| 定休日 | 木曜 |
| 駐車場 | あり(店前7台+裏にも数台) |
| 支払い | 現金・PayPay可(カード不可) |
| 予算 | 実食¥1,100/目安¥1,500前後 |
| 訪問日 | 2026年5月29日(昼) |
| 注文 | 肉出汁中華そば ¥850+槻ノ木ライス(背脂ライス)¥250 |
国道沿いに料理写真付きの大きな看板(丼の写真と「肉汁中華そば 槻ノ木」のロゴ)が出ていて、初見でも見落としにくい。店先には「らーめん」ののぼりと「営業中」の札。郊外型で駐車場は店前に7台、さらに裏にも数台停められる(一部未舗装)ので、車で温泉に向かう群馬の動線にそのまま乗る。店内はこぢんまりとした造りで、靴を脱いで上がる掘りごたつの座敷のほか、テーブル席・カウンター席もある。

運用上の注意は、昼のみ・木曜休みであること。営業は11:30〜14:30、ラストオーダー14:00なので、入店は14時までに済ませたい。人気店で昼のピークは満席・行列になることもある。支払いは現金とPayPay(カードは不可)。郊外店でQR決済が使えるのはありがたい。1日10食の煮干し限定など営業実態が流動的な個人店なので、確実に狙うなら公式SNSで当日の状況を確認してから動くと安心だ。温泉を主目的にするなら「午前に1湯 → 昼に槻ノ木 → 午後に半出来温泉」の組み方が現実的になる。
お品書き|「肉出汁」と「京風白出汁」の二枚看板

槻ノ木のスープは大きく2系統。ベースの肉出汁中華そば ¥850 と、京風白出汁中華そば ¥900。それぞれに「わかめそば」「ちゃーしゅー麺」が並び、各種大盛は +¥150(背脂少なめ・無しの相談もできる)。店名は「肉汁」推しだが、京都を意識した白出汁をもう一枚の看板に据えているのが面白い。
サイドの主役が槻ノ木ライス(背脂ライス)¥250。さらに辛・槻ノ木ライス(極鬼殺し使用)¥300という、唐辛子「鬼殺し」を使った辛口版もあり、「鬼辛」まで対応してくれる。トッピングは肉増し・半熟味玉・京都産九条ネギ・生たまご・海苔・わかめ・背脂など。「増し・鬼増し」は基本的に別皿提供なし、シェアは控えてとの掲示があるので、増し系は自分の一杯で完結させる前提で頼みたい。


この日気になったのが「限定 1日10食」のにぼし薫るシリーズ。いつもの肉出汁・京風白出汁に煮干しを効かせた限定で、肉出汁¥950/京風白出汁¥1,000(ちゃーしゅーは各+¥200)。店内のチラシには「厳選された長崎・熊本産の煮干しを贅沢に使用」「ガツンとくる煮干しの強さと、当店自慢の出汁のコク」とあった。10食限定なので、出会えたら運がいい。
九条ねぎは京都府産・産地直送だ。卓上の木札に「株式会社 京都知七」とある。群馬の郊外に京都の薬味を産地直送。店名の地元色と良い対比になっている。
注文:肉出汁中華そば ¥850 + 槻ノ木ライス ¥250

着丼。スープは澄んだ琥珀色の 清湯(ちんたん=濁りのない透き通ったスープのこと。白濁した「白湯(ぱいたん)」の対)。チャーシュー、メンマ、そして京都産九条ねぎが青々と山盛りで、表面に背脂が浮く。「肉汁中華そば」の名前から白濁した濃厚系を想像していたので、この見た目で少し意表を突かれた。

一口すすって印象が決まった。あっさり上品。肉の旨みはぐっと下支えに回り、前に立つのは九条ねぎの清涼感と甘み。背脂が乗っているのに後味は重くならず、すっと引いていく。これは雑味を抜き切った清湯ならではの飲み口で、濃く見せる足し算ではなく、要らないものを削る引き算で旨さを出している。店の作りも油を取り除いてあっさりに振っている。納得がいった。
麺は中太でやや縮れのある手打ち麺、もちもちした食感。軽い清湯をしっかり持ち上げ、するすると入っていく。びっしり乗ったチャーシューと青い九条ねぎを巻き込みながら手繰ると、飲み口は軽いのに食べ応えはきちんと残る。
ただ、この店は「あっさりで終わらせない」のが面白い。まずはそのまま味わい、途中で卓上の背脂を混ぜてコクを足すと、軽やかな清湯が厚みのある一杯に化ける。さらにニンニクを入れれば、上品路線から一転してパンチの効いた肉ガツン系へ振り切れる。最初の繊細な一口と、味変後の力強さ。一杯で二度おいしい のが槻ノ木の妙だ。卓上には九条ねぎ・背脂・ニンニク・酢・粗挽きのカラシ・辛味・山椒系の薬味がずらりと並び、卵かけご飯(TKG)の食べ方POPまである。土台はあっさり、振り幅は自分で決める設計になっている。

サイドの槻ノ木ライス(背脂ライス)¥250は、白飯に背脂・ほぐしチャーシュー・九条ねぎ・黒胡椒を乗せた小丼。これ単体でも完成しているが、漬物でさっぱり感と食感を足し、卓上の辛味調味料を効かせると、甘い小丼が一気に箸の止まらない味に変わる。¥250でこの満足度と遊びの幅は強い。半出来温泉の前に腹を満たしたい日には迷わず付けたい。次に来るなら京風白出汁か、出会えれば限定の「にぼし薫る」を狙いたい。
温泉ブログで吾妻のラーメンを書く意味
源泉かけ流しに惹かれる理由は、結局「足し算で盛らず、要らないものを引いて素材を立てる潔さ」にある。加水・加温・循環で誤魔化さず源泉のまま出す湯と、雑味を抜き切ってあっさり仕上げた槻ノ木の清湯は、同じ引き算の手触りだ。かつて島根の美又温泉や温泉津で「飾らない湯ほど後を引く」と体に刻まれた感覚が、群馬の郊外の一杯でも同じように立ち上がってきた。
そして立地。槻ノ木のある東吾妻町は、岩櫃城や吾妻渓谷を抱える、群馬の温泉地への入口のような町だ。ここから国道145号を西へ、長野原で144号に乗り継いで車40分ほど走れば、嬬恋村の半出来温泉にたどり着く。同じ町ではないが、東吾妻から嬬恋へ吾妻を横断するドライブの、ちょうど腹ごしらえの一軒。「午前に1湯、昼に槻ノ木、午後に半出来温泉」——そんな一日に組み込める道中の地の利こそ、群馬の温泉ブロガーとして書く価値だと思う。
半出来温泉そのもののレポートは 半出来温泉 登喜和荘(嬬恋)— 成分総計5g/kgの濃い塩化物泉を混浴露天で源泉かけ流し で詳しく書いています。
まとめ|「肉汁」の看板に身構えず、上品な清湯を
「肉汁」の三文字に身構えず、暖簾をくぐってほしい。出てくるのは見た目より軽やかな肉の清湯で、卓上の背脂とニンニクを足せば濃いめまで自分で振り切れる。京都の九条ねぎが青々と乗った一杯を、群馬・東吾妻でどうぞ。次に来たら、まだ頼んでいない京風白出汁を試したい。あっさりから自分でガツンまで持っていける一杯は、そうそうない。



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