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群馬の硫黄泉 日帰り比較|草津・万座〜穏やか含硫黄まで

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群馬で一番濃い硫黄泉はどこか。そう聞かれたら、私は迷わず万座温泉「豊国館」を挙げる。緑がかった乳白色の湯に、遊離硫化水素49.7mg/kg。中国地方に住んでいた頃は別府・明礬の酸性硫黄にも通ったが、その経験から見ても、これは群馬で頭一つ抜けた濃さだ。同じ「白濁する酸性硫黄」でも、硫黄の出方は湯によってまるで違う。それを数値で並べて浴び比べられるのが、群馬で硫黄泉を巡る面白さだ。

そして群馬の硫黄泉は、この万座や草津のような「刺すような酸性強硫黄」だけではない。六合の応徳温泉や八ッ場の川原湯のように、pH7〜8の中性〜弱アルカリで、香りも穏やかな含硫黄泉もある。同じ「硫黄を含む湯」が、群馬という一県の中で両極端まで揃っている。

本記事は、実際に日帰りで入った群馬の硫黄泉を、「酸性強硫黄」と「穏やか含硫黄」の2タイプに分け、分析書の数値とともに読み解く。湯使いの掲示・析出物・湯の色まで、現地で確かめた範囲で書く。観光ガイドではなく、泉質で湯を選びたい人への記録だ。


そもそも「硫黄泉」とは|含硫黄・遊離H₂S・酸性の読み方

「硫黄泉」と一口に言うが、泉質の正式な世界では区分がある。療養泉として総硫黄(遊離硫化水素+硫化水素イオン+チオ硫酸イオン)が温泉1kg中に2mg以上含まれると「含硫黄泉」に区分される。分析書の泉質名に「含硫黄-」と付くのはこのためだ。

面白いのは、同じ硫黄でも湯のなかでの形が違う点だ。匂いと白濁の主役は遊離硫化水素(H₂Sガス)で、これが多い湯は「硫化水素型」と呼ばれ、卵のような匂いが強く立つ。硫黄が硫化水素イオン(HS⁻)の側に偏ると、遊離H₂Sが減って匂いは穏やかになる。

この比率を左右するのがpHだ。酸性の湯ほど硫黄は遊離H₂S(分子の形)に偏り、匂いも肌への刺激も強く出る。中性〜弱アルカリの湯ではHS⁻側に主体が移り、硫黄を含んでいても匂いは立ちにくい。例外は高温の源泉で、湧き出すときにH₂Sガスが抜けてしまい、酸性でも遊離H₂Sが少なくなることがある(このあと出てくる草津の万代鉱源泉がそれだ)。

白濁の正体も知っておくと景色が変わる。湯に溶けた硫化水素が空気で酸化してできる「硫黄コロイド」(ごく細かい硫黄の粒)が光を散らし、白く見える。だから白濁=いま遊離H₂Sが濃い、とは限らない。酸化が進めば白くなり、逆に硫黄が湯口の底へ沈めば、濃い硫黄泉でも湯は澄む。あとで触れる草津の源泉ごとの違いは、まさにこの差だ。

つまり「硫黄の形」と「pH」の組合せで、群馬の硫黄泉はキャラがくっきり分かれる。草津・万座のpH2台の強酸性硫黄は、白濁と肌にピリッと来る刺激が持ち味。応徳・川原湯のpH7〜8の中性〜弱アルカリ含硫黄は、硫黄を含みながら肌当たりがやわらかい。本記事はこの2タイプで章を分ける。

入る前に知っておきたい禁忌(特に酸性強硫黄)

硫黄泉、とりわけ草津・万座のような強酸性硫黄泉は刺激が強い。環境省の温泉の禁忌症(泉質別禁忌症)でも、酸性泉・硫黄泉は皮膚・粘膜の過敏な人、高齢者の皮膚乾燥症が禁忌に挙げられている。以下は安全に楽しむための一般的な留意点(効能効果を保証するものではなく、体調や肌質には個人差がある)。

  • 肌の弱い人・乾燥肌の人は、長湯を避け、上がり湯で湯を流すと刺激が残りにくい(上がり際に真水で流すのは環境省の入浴指針でも推奨されている)
  • 強酸性硫黄は金属を変色させる。指輪・アクセサリー・時計は外す。タオルも白っぽく退色することがある(各施設の掲示でも注意されている)
  • 硫化水素は高濃度では危険なガスで、過去には換気の悪い場所で事故も起きている。屋内浴室の換気は施設側が設備で確保するもの。入浴者として大事なのは、強い卵臭で頭痛・めまい・息苦しさを感じたら、我慢せず速やかに浴室を出ること(自分で閉め切った浴室にこもらない)
  • 体調が優れない日や、肌に傷・炎症がある日は無理をしない

※泉質ごとの「適応症」は、各施設の分析書に温泉法に基づいて掲示されている範囲を一次情報とする。本記事では特定の病気が治る等の断定はしない。


[A]酸性強硫黄|草津・万座の「刺す硫黄」

群馬の硫黄泉の代名詞。pH1台〜2台の強酸性で、白濁し、肌に刺激が来る。ここでは草津をエリア全体(複数の源泉)、万座を豊国館一軒の湯として扱う。同じ酸性強硫黄でも、源泉によって硫黄の出方が大きく変わるのがこの章の見どころだ。

草津温泉|源泉ごとに違う酸性硫黄(白旗は硫化水素型、万代鉱は純酸)

草津をひとくくりに「強酸性硫黄」と言いがちだが、実は源泉ごとに硫黄の出方が違う。湯畑広場のそばで無料で入れる白旗源泉はpH2.1・源泉50℃台で、草津のなかでも日常的にはっきり白濁しやすく、硫黄の香りも強い源泉だ。公開されている草津の源泉分析では、白旗の遊離硫化水素は7.7mg/kgとされ、れっきとした硫化水素型だ。白濁は、その溶けた硫化水素が空気で酸化してできる硫黄コロイドの色である。

一方、合わせ湯で名高い大滝乃湯が引く万代鉱源泉はpH1.7・源泉94.6℃。草津で最も酸性が強い系統の源泉だが、高温で湧くため湯口に届くまでに硫化水素が抜け、遊離H₂Sはほぼゼロ。硫黄をほとんど含まない、純粋な「酸」の湯だ(pHが1.5台まで下がるとされるのもこの万代鉱で、白旗ではない)。同じ大滝乃湯のもう一方、煮川源泉はpH2.1の硫化水素型で硫黄を含む。そして千代の湯が引く湯畑源泉は、硫黄が樋の底に沈んで黄色い湯の花になるため、湯そのものはほぼ透明だ。さらに地蔵の湯が引く地蔵源泉は、遊離硫化水素43.5mg/kgと草津で飛び抜けて濃い硫化水素型で、卵臭が強く立つ。草津は一つの温泉地のなかに、白濁する硫化水素型から透明な純酸まで揃っている。

無料で入れる共同浴場(白旗・地蔵・千代)と、合わせ湯で名高い大滝乃湯。源泉ごとの違いまで浴び比べたい人は、草津の日帰りを源泉軸で整理した個別ガイドが詳しい。

万座温泉 豊国館|pH2.2・遊離硫化水素49.7mg/kg=群馬最濃の硫化水素型

万座 豊国館の湯はpH2.2・泉温74.5℃の酸性・含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型/低張性酸性高温泉)。最大の数字が遊離硫化水素49.7mg/kg。掲示にも「硫化水素臭あり」と明記される、文字通りの硫化水素型で、メタけい酸も158.7mg/kgと高い。

緑がかった乳白色の湯に肩までつかると、黒い岩肌に白い析出結晶がびっしり付いているのが見える。混浴露天で、硫化水素の匂いが濃く立つ。同じ硫化水素型でも、白旗の遊離硫化水素7.7mg/kgとは桁が違う。草津で最も濃い地蔵源泉の43.5mg/kgと比べても、万座の49.7mg/kgがわずかに上回り、群馬最濃の座を保つ。冒頭で触れた別府・明礬の白濁酸性硫黄も、体感では万座ほど卵臭が立たなかった。析出結晶や濃い匂いという物的証拠で「硫黄の濃さ」を浴びたいなら、まず万座を選べばいい。

草津・万座の刺激を浴びたあと、肌を落ち着かせる「上がり湯」を探しているなら、次の[B]でまず応徳温泉を見てほしい。


[B]穏やか含硫黄|六合・八ッ場の「やさしい硫黄」

硫黄を含みながら、pH7〜8の中性〜弱アルカリで肌当たりがやわらかい湯。前述の通り、弱アルカリでは硫黄がHS⁻側に主体が移って遊離H₂Sが減るため、含硫黄でも匂いは穏やかになる。草津・万座の刺激が苦手な人や、強酸性のあとの「上がり湯」を探している人に向く。

応徳温泉 くつろぎの湯(六合)|pH8.1・遊離H₂S 0.5mgの「草津の上がり湯」

中之条町六合の応徳温泉は、pH8.1・泉温52.6℃の含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)。硫黄分は硫化水素イオン(HS⁻)5.1mgと遊離硫化水素0.5mg、それにチオ硫酸イオンを合わせた量で、療養泉の含硫黄基準(総硫黄2mg/kg)を上回る。ただし遊離H₂Sガスは0.5mgとごく少なく、大半は匂いの立ちにくいHS⁻の形で溶けているので、匂いの刺激は穏やか。弱アルカリで硫黄がHS⁻側に寄った湯の、典型的な出方だ。メタけい酸74.2mg/kgのしっとり感もある。

浴槽の底や縁には白い湯の花が沈み、かけ流しの物的証拠が見える。弱アルカリでやさしいぬる湯は、強酸性の草津・万座を浴びた帰りに肌を落ち着かせる「上がり湯」に向く。私はこの動線で締めに使うことが多い。日帰り入浴は町外大人500円・現金のみ(営業12:00〜20:00)。草津エリアからの動線に組み込みやすい。

川原湯温泉 王湯(八ッ場ダム湖畔)|pH7.41・油のような独特の硫黄香

八ッ場ダムで湖畔に移転再建された川原湯温泉の共同浴場「王湯」。pH7.41・泉温75.3℃の含硫黄-カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉で、メタけい酸88.3mg/kg。pH7.41はほぼ中性で、湯は緑がかって澄んでいる。

面白いのは硫黄の香り方で、卵臭というより油のような独特の香り。pHが中性に近いぶん、草津・万座のような刺す硫黄臭はなく、穏やかだ。湯自体はさらりとしているのに、上がると塩化物由来か、肌に薄い膜を張ったような感触がしばらく残る。かつて通った温泉津(島根)の元湯のような、濃い食塩泉の凶暴な熱さはないが、塩気のある湯らしい「あと残り」だ。八ッ場ダムで一度は沈むはずだった温泉街が、湯はそのままに高台で蘇った。その経緯まで含めて、含硫黄の中性湯としては記憶に残る一軒だ。日帰り入浴は大人500円(小学生以下300円・営業10:00〜18:00/最終受付17:30)。


群馬の硫黄泉 比較表|pH・硫黄の形・メタけい酸

施設(エリア)pH泉質(代表源泉)硫黄の形メタけい酸(mg/kg)日帰り料金
草津 無料共同浴場(白旗・地蔵・千代)約2.1(白旗)酸性・含硫黄-Al-硫酸塩・塩化物(白旗)白旗=硫化水素型 遊離H₂S 7.7/地蔵=43.5(草津最濃)/千代=湯畑源泉で透明約216(白旗)無料
草津 大滝乃湯(煮川・万代鉱)2.1/1.7酸性・含硫黄-Al-硫酸塩・塩化物 ほか煮川=硫化水素型/万代鉱=遊離H₂Sほぼ0(高温でガスが抜ける)煮川236.6/万代鉱227.4大人1,200円
万座 豊国館2.2酸性・含硫黄-Na-硫酸塩・塩化物(硫化水素型)遊離H₂S 49.7=群馬最濃158.7大人800円
応徳温泉(六合)8.1含硫黄-Na・Ca-硫酸塩・塩化物HS⁻5.1・遊離H₂S 0.5ほか(穏やか)74.2大人500円(町外・現金のみ)
川原湯 王湯(八ッ場)7.41含硫黄-Ca・Na-塩化物・硫酸塩中性の含硫黄(油様の香り)88.3大人500円
数値の出所:万座・応徳・川原湯・草津の煮川/万代鉱は現地分析書掲示の写真より。白旗源泉の遊離硫化水素7.7・メタけい酸216は草津温泉の公開源泉分析値、地蔵源泉の43.5は千代の湯の公開掲示分析より(出所が現地掲示と異なる場合がある)。源泉や測定時期で変動するため、最新は現地掲示を一次情報に。料金・営業時間は改定されるので訪問前に各施設で確認を(草津 大滝乃湯は2025年9月改定で大人1,200円)。この表は「硫黄の形」(遊離H₂S/HS⁻/コロイド)で硫黄泉だけを並べたもの。硫黄に限らず群馬全体を“湯使い(かけ流し)”や溶存物質で横断したい人は 群馬の源泉かけ流し 泉質比較データ へ。

まとめ|目的別・群馬の硫黄泉の選び方

群馬の硫黄泉は「酸性強硫黄」と「穏やか含硫黄」で別世界。目的別に整理しておく。

  • とにかく濃い硫黄を浴びたい → 万座 豊国館(遊離H₂S 49.7mgの硫化水素型・群馬最濃)
  • 強酸性の刺激と白濁を源泉ごとに浴び分けたい → 草津(白旗の白濁から万代鉱の純酸まで多彩・黄色い湯の花)
  • 硫黄は欲しいが刺激は穏やかがいい/初めての硫黄泉 → 応徳・川原湯(pH7〜8の中性含硫黄)
  • 強酸性のあとの上がり湯 → 応徳(草津エリアからの動線・やさしいぬる湯)
  • 析出物など物的証拠を眺めたい → 万座(黒い岩に白い結晶)・草津(湯畑の湯の花)

同じ「硫黄を含む湯」でも、pHと硫黄の形でここまで体感が変わる。数値を頭に入れて入ると、白濁の理由も、匂いの強弱も、肌の刺激も腑に落ちる。pH2台と8台の硫黄泉が車で2時間ほどの圏内に並ぶ県は、全国でも多くない。それを日帰りで移動して浴び比べられるのが群馬の実力だ。

本記事で取り上げたのは現時点で取材済みの硫黄泉で、群馬にはほかにも硫黄を含む湯がある。訪れるたびに、この比較表へ追記していく。まず一湯選ぶなら、強酸性側は草津の源泉別ガイド、穏やか側は応徳温泉が入口になる。


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