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幡谷温泉ささの湯|片品村の純温泉A・ぬる湯を日帰りで

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日曜の朝7時、片品村の幡谷。開店と同時に露天の湯船に体を沈めたら、まだ湯が縁まで溜まりきっていなかった。かけ流しの湯が、これから満ちていく途中だったのだ。

そのぶん湯はぬるい。体感で37℃くらいだろうか。あとで触れるが、この湯がぬるいのには、この温泉の一番の売りがそのまま効いている。ただ、この日ここに一時間居座ることになるとは、入った時点では思っていなかった。

ささの湯の露天風呂。屋根付きの岩風呂で、正面に恵比寿・大黒らしき石像。竹垣に囲まれ緑が濃い
ささの湯の露天風呂。屋根付きの岩風呂で、正面に恵比寿・大黒らしき石像。竹垣に囲まれ緑が濃い

幡谷温泉ささの湯とは|片品村・尾瀬のふもとの一軒宿

ささの湯は片品村幡谷にある一軒宿の温泉だ。1997年開業で、日帰り入浴・宿泊・キャンプまでこなす。尾瀬の玄関口にあたる片品村は、このブログでこれまで空白だったエリアで、ここが初めての一本になる。

外観は赤い瓦屋根の落ち着いた構え。朝7時の駐車場はまだ数台で、広い砂利敷きにぽつんと車が停まっているだけだった。ちなみにこの湯、数年前に一度、本当に止まってしまったことがある——その話は最後にする。

ささの湯の外観。赤瓦屋根の二階建て、広い駐車場。朝で人影はまばら
ささの湯の外観。赤瓦屋根の二階建て、広い駐車場。朝で人影はまばら

純温泉A|「源泉を100%そのまま」、いちばん条件の厳しいタイプ

ささの湯の一番の看板は、玄関に掲げられた「純温泉A」の認定だ。

純温泉協会という団体が、温泉の使い方をA〜Eの5つのタイプに分類している。そのうちAは「完全放流式・加水なし・加温なし・循環ろ過なし・消毒なし・添加なし」をすべて満たす、最も手を加えないタイプだ。ささの湯は2021年10月に認定を受け、館内には認定書も掲示されている。認定書には男湯・女湯の内湯と露天、4つの浴槽すべてが純温泉Aだと明記されていた。

「ささの湯は純温泉協会認可の純温泉」のポスター。完全放流式・加水なし・加温なしなど7つのアイコン
「ささの湯は純温泉協会認可の純温泉」のポスター。完全放流式・加水なし・加温なしなど7つのアイコン

掲示のポスターにはこうある。「『100%源泉かけ流し』と全国でよく見かけますが、良くも悪くも明確な定義がないため、塩素が入っている温泉がほとんどで『源泉かけ流し』であっても天然のままの温泉とは限りません」。だから第三者機関の認定を取った、という理屈だ。言われてみればもっともで、「源泉かけ流し」という言葉は本来かなり幅がある。

脱衣所にも念押しの貼り紙があった。「当温泉は源泉そのものです。循環しておりません。豊富な湯量ですのでゆっくりおくつろぎ下さい」。

泉質|アルカリ性単純温泉・pH8.7・毎分265リットル

館内の温泉分析書を読んでみる。

  • 源泉名:ささの湯(自家源泉)
  • 泉質:アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)
  • 源泉温度:42.1℃
  • pH:8.7
  • 湧出量:毎分265リットル(動力揚湯)
純温泉A認定書。加水なし・加温なし・消毒なし・循環ろ過なしの一覧、源泉名ささの湯、pH8.7、湧出量265L/分
純温泉A認定書。加水なし・加温なし・消毒なし・循環ろ過なしの一覧、源泉名ささの湯、pH8.7、湧出量265L/分

湧き出しは42.1℃だが、豊富な湯量をそのまま4つの浴槽に流すので、浴槽に届くころにはぬるくなる。施設側もそれを隠さない。浴室の入口には堂々と「ささの湯は温湯(ぬるゆ)です!」「熱湯好きな方、、、ごめんなさい」と貼ってあり、内風呂の温度は39〜40℃と書かれていた。「30分以上じっくり入ると体の芯まで温まりますよ」とも。

pH8.7のアルカリ性で、湯には若干のとろみがある。実際に入ると、肌をなでたときにほんの少しぬるっとした。かつて通った島根の美又温泉(pH9.9)や山口の俵山温泉(pH9.8)——どちらも同じアルカリ性単純温泉だが——あの強烈なヌルすべには及ばない。ここのは控えめで上品なとろみだ。なお施設側は「美肌の湯」とも掲げているが、これはあくまで呼び名であって、肌への効果を保証するものではない。pHの高さと肌触りの気持ちよさは事実だが、そこは分けて受け取っておく。

温泉分析書の別表には、環境省基準の適応症も載っている。アルカリ性単純温泉としての泉質別適応症は「自律神経不安定症、不眠症、うつ状態」とされ、一般的適応症には筋肉や関節の慢性的な痛み、冷え性、疲労回復などが並ぶ。禁忌症の泉質別欄は「該当項目なし」だった。効能を保証するものではないが、ぬる湯で長く入る湯の性格とは相性が良さそうだ。

内湯|白いタイルの明るい浴室

内湯は白いタイル貼りの明るい浴室で、大きな窓から緑が見える。岩を組んだ湯口から、絶えず湯が注がれていた。

ささの湯の内湯。白タイルの浴室、緑が見える窓、床一面が湯であふれている
ささの湯の内湯。白タイルの浴室、緑が見える窓、床一面が湯であふれている

床を見ると、浴槽から溢れた湯が一面を流れている。これがオーバーフロー、つまり湯船が満杯になって縁からこぼれ続けている状態で、かけ流しの何よりの証拠だ。循環している湯船ではこうはならない。

内湯の岩の湯口。岩の間から湯が注ぎ込み、縁に温泉成分が付着している
内湯の岩の湯口。岩の間から湯が注ぎ込み、縁に温泉成分が付着している

ぬる湯だから見えてくるもの

ぬる湯というのは、正直に言えば最初は物足りない。パッと温まってスッキリしたい人には向かない。掲示が「熱湯好きな方、ごめんなさい」と謝っているのは正しい。

けれど、体温に近い37℃の露天では、熱い湯にはない時間が流れる。のぼせないから、体がのぼせを察知して「もう出ろ」と急かしてこない。だからいつまででもいられる。縁の石を枕にして体を預けると、ほとんど無重力になった。目を閉じれば、聞こえるのは鳥の囀りだけ。温泉に入りに来たのか、瞑想しに来たのか分からなくなる。気づけば1時間、露天から動いていなかった。

こういう温度帯には名前がついている。「不感温度」——だいたい34〜37℃の、体温に近くて熱いとも冷たいとも感じにくい範囲のことだ。この帯の湯にゆっくり浸かる入り方を不感温浴と呼ぶ。体温を大きく上げ下げしないぶん心臓や血管への負担も小さいとされ、のぼせにくいので長く入っていられる。施設の掲示にも「30分以上じっくり入ると体の芯まで温まりますよ」とあり、短時間の熱い湯とは温まり方が違う。ぬるい湯に身を委ねると気持ちがほどけていくのは、体が緊張をゆるめる側(副交感神経)に傾くからだと言われている。

この日は朝一番でも先客が2人いて、独り占めとはいかなかった。出るころには顔ぶれが入れ替わって、やはり2人。7時開店でも地元の常連が浸かっている、そういう湯だ。

クラウドファンディングで守られた湯

フロントに、白い石が飾ってあった。湯の花が固まったような塊で、その後ろに賽銭箱が置いてある。「ささの湯 復旧支援」と書かれていた。

実はささの湯は、2024年の2月に温泉をくみ上げるポンプが故障して、湯そのものが止まり、営業を休んでいる。その復旧のためにクラウドファンディングが立ち上がった。目標は250万円。だが集まったのは60万8,000円、支援したのは62人。目標の4分の1にも届いていない。それでも湯は戻ってきた。故障から一か月足らず、3月には営業を再開している。そして今も、フロントには支援の賽銭箱が残っている。

動力揚湯、つまりポンプで地下からくみ上げている温泉だから、ポンプが止まれば湯も止まる。当たり前のようにそこにある湯が、実は綱渡りで守られていることを、この賽銭箱は静かに伝えている。

料金・営業時間

日帰り入浴は大人750円、子ども(3才以上)550円。片品村・利根町の住民なら、地元手形の提示で大人400円まで下がる。ちなみに誕生日は入浴料が無料になるそうだ(要証明)。

支払いは現金のほか、クレジットカード・交通系IC・PayPayなどのキャッシュレスに幅広く対応していた。片品村の地域通貨「おぜだっぺイ」も使える。受付の英語表示には「Tattoos allowed」とあり、タトゥーがあっても入浴できる。

サウナと水風呂はない。あくまで、ぬる湯にじっくり浸かるための温泉だ。

ひとつ嬉しかったのが、備え付けの石けん・シャンプーが完全無添加の「シャボン玉石けん」だったこと。化学物質を使っていない石けんで、日帰り温泉でここまで気を配っている施設は多くない。加水も加温も消毒もしない湯に、無添加の石けん。肌に触れるものを余計にいじらない、という一本の筋が通っている。

▼ ささの湯の日帰り入浴チケット・クーポンを予約する

▶ じゃらんで「ささの湯」の日帰り入浴チケット・クーポンを見る

※料金・在庫は各予約サイトの最新表示をご確認ください。

まとめ|熱い湯に疲れたら、片品のぬる湯へ

草津や万座のような、キリッと熱くて個性の濃い湯が群馬の看板だ。でも、ずっとそればかりだと疲れることもある。

ささの湯は、その対極にある。ぬるくて、静かで、いつまでも入っていられる。第三者機関のお墨付き(純温泉A)まで付いた、混じりけのない源泉を、ただ流しっぱなしにしているだけ。派手さはないが、朝の露天で1時間空っぽになれる温泉は、そう多くない。

尾瀬に向かう朝、あるいは片品まで足を延ばした日の締めに、寄ってみてほしい一軒だ。

ぬる湯つながりでは、群馬のぬる湯だけを集めた群馬のぬる湯 日帰り11選も参考に。ささの湯のpH8.7・42.1℃という数字が県内の他の湯とどう並ぶかは、群馬の源泉かけ流し 泉質比較データ(37湯のpH・メタけい酸・湯使いを一覧)で見比べられる。

基本データ

項目内容
施設名幡谷温泉 ささの湯
住所群馬県利根郡片品村幡谷535
電話0278-58-3630
泉質アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)
源泉名ささの湯(自家源泉)
源泉温度 / pH42.1℃ / 8.7
湧出量毎分265リットル(動力揚湯)
湯使い完全放流式(加水・加温・循環・消毒・添加なし/純温泉A認定)
日帰り入浴料大人750円・子ども550円(片品村/利根町の地元手形提示で大人400円)
サウナなし
支払い現金・クレジット・交通系IC・QR決済・おぜだっぺイ
駐車場あり(無料・約20台)

※料金・営業情報は2026年7月時点。営業時間は曜日で異なり、臨時休業もあるため、訪問前に公式情報の確認をおすすめします。

よくある質問

Q. ささの湯のお湯はぬるいと聞きましたが本当ですか? A. 本当です。源泉42.1℃を加温せずそのまま流しているため、内湯は39〜40℃、露天はさらにぬるめです。施設側も「温湯(ぬるゆ)です」と掲示しています。30分〜1時間かけてじっくり浸かる湯で、熱い湯が好きな方には物足りないかもしれません。

Q. 「純温泉A」とは何ですか? A. 純温泉協会が温泉の使い方をA〜Eの5つのタイプに分類する認定で、Aは「完全放流式・加水なし・加温なし・循環ろ過なし・消毒なし・添加なし」をすべて満たす、最も手を加えないタイプです。ささの湯は男女の内湯・露天4浴槽すべてが純温泉Aに認定されています。

Q. タトゥーがあっても入れますか? A. 入れます。受付に「Tattoos allowed」の表示があります。群馬のほかのタトゥーOKの温泉・サウナはこちらのまとめにもあります。

Q. サウナや水風呂はありますか? A. ありません。ぬる湯の源泉かけ流しにじっくり浸かるための温泉です。

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