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鹿沢温泉 紅葉館 日帰り入浴レビュー|源泉2本の掛け流し

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※料金・営業情報は2026年7月時点。日帰り入浴の受付時間や定休は変則的なので、訪問前に電話(紅葉館 0279-98-0421)で確認するのが確実です。

群馬の西の端、嬬恋村。地蔵峠を群馬側へ下りきった山あいに、鹿沢温泉(かざわおんせん)の一軒宿「紅葉館(こうようかん)」がある。日本秘湯を守る会の宿として知られるが、今回は宿泊ではなく日帰り入浴で立ち寄った。

先に結論を言ってしまうと、この湯のいちばんの見どころは源泉が2本あること。メインの湯船と、うたせ湯とで、注がれている源泉そのものが違う。しかもどちらも加水・加温・循環なしの完全かけ流し。山の一軒宿でこれをやっているのだから、湯好きが放っておくわけがない。

紅葉館とはどんな宿か

鹿沢温泉は、湯治場としての歴史を持つ古い温泉地だ。紅葉館はその中心にある木造の一軒宿で、道路沿いには「日帰り温泉」と「温泉♨そばセット」ののぼりが立っている。建物の一角が、後で触れる手打ちそば処「上州喜庵 雨過山坊(うかさんぼう)」になっている。

道路沿いに立つ紅葉館の外観。「温泉♨そばセット」と「日帰り温泉」ののぼり
道路沿いに立つ紅葉館の外観。「温泉♨そばセット」と「日帰り温泉」ののぼり
  • 日帰り入浴料金:入浴のみ ¥500(現金・実際に支払い確認済み)/入浴+もりそば(またはかけそば)の「温泉蕎麦セット」¥1,400(掲示より・2026年時点)
  • 入浴時間:10:00〜16:00(※開店直後は日帰り入口が開いておらず、本館で受け付ける場合あり=後述)
  • アクセス:嬬恋村・地蔵峠の群馬側の麓。JR吾妻線 万座・鹿沢口駅から車で山を上がる
  • 電話:0279-98-0421

受付を抜けて浴室へ向かうと、脱衣所の壁に手書きの札が2枚。「湯船 雲井の湯」「うたせ湯 竜宮の湯」。ここで初めて、この宿が2つの源泉を使い分けていることに気づく。

源泉①:湯船「雲井の湯」──熱い源泉をぬるい源泉で割る

メインの浴室に入ると、正方形に近い浴槽が一つ。縁は木で組まれ、その木すら赤茶の析出物でごつごつと覆われている。長い年月、成分の濃い湯が流れ続けた証拠だ。奥の岩の湯口からは、絶えず湯が注ぎ込まれている。

湯はうっすらと青みがかった灰色に濁っていた。掲示の分析書では源泉は「無色透明」とあるので、浴槽に溜まって空気に触れるうちに色づくタイプだろう。

湯船(雲井の湯)。青みがかった灰色に濁り、木の縁は析出でごつごつ
湯船(雲井の湯)。青みがかった灰色に濁り、木の縁は析出でごつごつ

面白いのはここからだ。湯口の岩から注がれるのは熱い雲井の湯。そして浴槽の右側に伸びたホースからは、ぬるめの湯が足されていた。見たかぎり、もう一本の源泉(うたせ湯に使う竜宮の湯)を合わせて、湯船を体感45℃ほどに落としている。掲示の浴槽温度44.8℃とほぼ一致する。

岩の湯口。析出をまとった岩のあいだから雲井の湯が注ぐ
岩の湯口。析出をまとった岩のあいだから雲井の湯が注ぐ

熱い源泉を、真水ではなくもう一本の源泉で割る。だから温泉利用証の「加水なし」と矛盾しない。源泉を2本持つ宿は珍しくないが、島根や大分と各地の湯を巡ってきたなかでも、2本を混ぜて湯加減を作る宿は数えるほどだった。ここは書く価値のある一点だ。

湯船の主源泉「雲井の湯」は、群馬県が持つ県有泉。じつは同じ鹿沢のとべの湯(戸部旅館)も、この雲井の湯を引いていて、飲み比べならぬ入り比べができる。数字で見るとこうなる。

雲井の湯(湯船)
泉温48.0℃(高温泉/浴槽44.8℃)
泉質マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩温泉(低張性中性高温泉)
pH6.7
メタけい酸240 mg/kg
炭酸水素イオン(HCO₃⁻)846 mg/kg
遊離二酸化炭素178 mg/kg
溶存物質(療養泉判定の分母)1.40 g/kg
成分総計1.58 g/kg

炭酸水素塩泉、いわゆる重曹系の湯だ。重曹泉は「美人の湯」と呼ばれることもあるが、pHは中性。かつて通った島根・美又のアルカリ単純泉のようなヌルヌルとは別物で、つるつる感の強い湯ではない。メタけい酸240mgと合わせ、肌あたりの柔らかさで語られやすい成分ではある。

源泉②:うたせ湯「竜宮の湯」──鉄をまとった、ぬるめの湯

湯船とは別に、うたせ湯がある。木の桶に、竹樋のような湯口から湯がとぷとぷと落ちてくる、素朴なつくりだ。こちらに使われているのが第2の源泉「竜宮の湯」。

入って最初に来たのは、鉄の味と香りだった。分析書にもはっきり「鉄味を有す」と書かれていて、体感と掲示がぴたりと合う。泉温は39.2℃と、湯船よりだいぶぬるい。

うたせ湯(竜宮の湯)。竹樋から湯が落ちる素朴なつくり
うたせ湯(竜宮の湯)。竹樋から湯が落ちる素朴なつくり
竜宮の湯(うたせ湯)
泉温39.2℃(ぬる湯)
泉質マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉(低張性中性温泉)
pH6.8
メタけい酸214.5 mg/kg
炭酸水素イオン(HCO₃⁻)696.9 mg/kg
遊離二酸化炭素229.5 mg/kg
溶存物質(療養泉判定の分母)1.164 g/kg
成分総計1.393 g/kg

分析上は炭酸味も持つ湯で、遊離二酸化炭素は湯船より多い。カルシウムが加わるぶん、湯船の雲井の湯とは口当たりも少し違う。同じ「炭酸水素塩泉」でも、2本並べると個性が分かれるのが分かる。

竜宮の湯(うたせ湯)の温泉分析書。「微濁を呈し、炭酸味・鉄味を有す」と記される
竜宮の湯(うたせ湯)の温泉分析書。「微濁を呈し、炭酸味・鉄味を有す」と記される

余談だが、この鉄の匂いと炭酸の気配は、以前に入った大分・九重の筌の口(うけのくち)温泉「新清館」を思い出させた。あちらは無色透明の源泉が空気に触れると金茶色に濁る、炭酸をたっぷり含んだ炭酸水素塩・硫酸塩の湯。成分の濃さも色も同じではない(新清館のほうがずっと濃くて熱い)けれど、「鉄と炭酸をまとった湯」という骨格は、遠く離れた九州の一軒宿と、この鹿沢とで、どこか通じるものがあった。

2つの源泉を入り比べる

この宿の楽しみ方は、はっきりしている。熱い湯船(雲井の湯)とぬるいうたせ湯(竜宮の湯)を行き来することだ。

  • 湯船(雲井の湯・約45℃):しっかり温まる主役の湯。析出だらけの縁と濁りで、見るからに手ごわい。
  • うたせ湯(竜宮の湯・39℃台):鉄を感じるぬるめの湯。のぼせを冷ましながら、肩に落とし湯を当てる。

熱→ぬる→熱と往復できるので、一軒宿の小さな浴室ながら、体感の変化に飽きがこない。湯船は45℃と熱めなので、熱いのが得意でない人は、うたせ湯で体を慣らしてから入るといい。この日は運よく貸切。人けのない山の湯を独り占めする時間は、それだけで贅沢だ。(群馬で独り占めできた日帰り温泉のまとめ にも通じる一湯)

成分と適応症(正しく書ける範囲で)

どちらの源泉も溶存物質が1kgあたり1gを超える(雲井の湯1.40g、竜宮の湯1.16g)。群馬のほかのかけ流しと数字で見比べるなら、泉質比較データにpH・メタけい酸・溶存をまとめてある。療養泉に該当する濃さで、温泉法にもとづく掲示(分析書別表)にも適応症が次のように明記されている。

  • 泉質別適応症:きりきず・末梢循環障害・冷え性・皮膚乾燥症
  • 一般的適応症:筋肉や関節の慢性的な痛み、冷え性、疲労回復、健康増進など(浴用の一般的適応症)

重曹系+メタけい酸という組み合わせから「美肌の湯」と語られがちだが、化粧品的な効果を約束できるものではない。書けるのは、あくまで掲示に基づく適応症までだ。泉質の詳しい話は温泉の効果・効能を成分から読み解く記事にまとめてある。

群馬で紅葉館に近い湯は?

紅葉館の湯は、pH6.7〜6.8の中性で、陰イオンの9割以上(mval比で93%前後)が炭酸水素イオン。つまり混じりけの少ない重曹系だ。そこに鉄と淡い炭酸、多めのメタけい酸が乗る。この組み合わせ、じつは群馬ではあまり出会わない。手持ちの群馬の湯から「近い親戚」を挙げると、こうなる。

  • 性格がいちばん近い:下仁田温泉 清流荘下仁田温泉 清流荘の記事)。炭酸・鉄・重曹・析出という骨格がそっくりで、しかもこちらも貸切で独り占めできた。ただし清流荘は13.7℃の冷鉱泉で、炭酸は紅葉館よりずっと強い(正式な二酸化炭素泉)。「温かい紅葉館/冷たい清流荘」でちょうど対になる。
  • 見た目が近い:伊香保温泉 黄金の湯伊香保・黄金の湯の記事)。鉄で金茶色に濁り、湯口に析出が育つ姿は紅葉館と同じ系統。溶け込んだ炭酸の量もほぼ同じだ。ただし硫酸塩や塩化物が混じるぶん、黄金の湯のほうがどっしりとした金茶になる。
  • 重曹の濃さが近い:安中・砦乃湯上増田温泉 砦乃湯の記事)。炭酸水素イオンは紅葉館より濃いくらい。ただしpH8のアルカリ性で、ツルツルすべる肌ざわり系。同じ重曹でも表情はかなり違う。

裏を返せば、清流荘の炭酸鉄、伊香保の金茶、砦乃湯の重曹を、中性のまま少しずつ束ねたのが紅葉館、とも言える。群馬ではありそうでない組み合わせだ。

そば処「上州喜庵 雨過山坊」は次回の宿題

紅葉館といえば、併設の手打ちそば処「上州喜庵 雨過山坊」。大阪・堂島の名店からの暖簾分けという二八そばだ。掲示の料金看板によると、日帰り入浴+もりそば(またはかけそば)の「温泉蕎麦セット」が¥1,400、もりそば単品が¥1,000、天ぷら盛り合わせが¥1,000(2026年時点)。湯に浸かってから手打ちそば、という組み合わせができる。

……のだが、この日は入浴のみ。そばはまた次の機会に、ちゃんと食べてから書くことにする。ひとつ注意したいのは、このそば処、定休が読みにくいこと。火曜のほか木曜も休むという情報や、冬場は平日を休むという話もある。そば目当てで行くなら、事前に電話で営業日を確かめてから向かうのが確実だ。

立ち寄りの実際

  • 訪問:日曜の朝、10時の開店に合わせて。ただし日帰り入口はまだ開いておらず、電話で聞くと「この時間は本館で受け付けます」とのこと。宿の本館で¥500(現金)を払って入った。開店直後を狙うなら、入口が閉まっていても慌てず本館へ、が正解
  • 撮影:浴室は他のお客さんがいないタイミングで。宿の湯なので、ひと声かけてから撮るのが安心
  • 冬季:鹿沢は地蔵峠の麓。12〜4月は積雪・凍結があり、スタッドレスは必須。峠の通行状況も事前確認を
  • 料金・時間:入浴¥500/温泉蕎麦セット¥1,400・10〜16時は2026年7月時点の目安。現地掲示で最新を確認

よくある質問(FAQ)

Q. 紅葉館は日帰り入浴できますか? A. できます。入浴のみ¥500(現金)、入浴+もりそばの温泉蕎麦セット¥1,400が目安(2026年7月時点)。受付時間はおおむね10:00〜16:00。ただし開店直後などは日帰り入口が開いておらず、本館(宿)で受け付ける場合があります。行って開いていなければ、館内表示か0279-98-0421に一声かけると確実です。

Q. 源泉かけ流しですか? A. はい。温泉利用証で、加水・加温・循環・消毒すべて「なし」の完全放流式と掲示されています。湯船は熱い源泉にぬるめの源泉を合わせて約45℃に調整しています。

Q. どんな泉質ですか? A. 湯船は「雲井の湯」(マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩温泉・48.0℃)、うたせ湯は「竜宮の湯」(マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉・39.2℃)。どちらも重曹系で、メタけい酸を多く含みます。

Q. 湯船とうたせ湯で源泉が違うのですか? A. はい。湯船は主に「雲井の湯」(48℃)、うたせ湯は「竜宮の湯」(39.2℃)を使っています。湯船は熱い雲井の湯にぬるい竜宮の湯を合わせ、水を足さずに湯加減を作っています。

Q. そばは食べられますか? A. 併設の「上州喜庵 雨過山坊」で手打ちそばがいただけます。ただし定休が変則的(火・木や冬季平日休の情報)なので、そば目当ては事前に電話で営業日を確認してください。

Q. アクセスと冬の道路は? A. 嬬恋村・鹿沢、地蔵峠の群馬側の麓です。冬季は積雪・凍結があるためスタッドレス必須。峠道の通行規制の有無も確認して向かってください。

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まとめ

鹿沢温泉 紅葉館は、2つの源泉を1軒で味わえる完全かけ流しの一軒宿だった。厚い析出、うっすらとした濁り、うたせ湯の鉄。わざわざ峠を越えるだけの価値はある。派手さはないが、湯の芯が強い。

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