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大塚温泉 金井旅館 日帰りレビュー|32.8℃の自噴ぬる湯

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日曜の朝、中之条町の大塚地区。浴場入口の脇に、黒い歌碑が立っている。

「ぬるくとも 効能あつき 湯の徳は」――側書きに「大塚温泉を称えて古人の詠める歌」とある、平成十一年春建立の碑だ。下の句も彫られているのだが、達筆な崩し字で、二度読んで諦めた。湯より先に教養が試される宿である。

先に結論を書く。ここの源泉槽は、32.8℃の掘削自噴泉(ポンプで汲み上げず、井戸から自力で湧き上がる温泉)を、加水なし・加温なし・循環なし・消毒なし・入浴剤なしで張っている。料金は大人400円。気づけば1時間半、湯から出られなくなっていた。

大塚温泉 金井旅館の受付棟。雨上がりの山裾に立つ
大塚温泉 金井旅館の受付棟。雨上がりの山裾に立つ

基本データ

項目内容
施設名大塚温泉 金井旅館(一軒宿・日帰り歓迎の湯治宿)
所在地群馬県吾妻郡中之条町大塚803
日帰り入浴午前9時〜午後8時(時間厳守・現地掲示より)
料金大人400円・小人200円(2時間以内)/延長1時間ごと100円/土・日は入浴3時間まで(夏季掲示)
支払い現金のみ(無人受付の料金箱に前払い。おつりが必要な場合は本館へ)
駐車場あり
浴場新館=男女別内湯(源泉槽+加温の上がり湯)と露天/旧館=混浴風呂
泉質アルカリ性単純温泉(アルカリ性低張性低温泉)
源泉温湯2号(掘削自噴・泉温32.8℃)
宿泊1泊2食付き 大人8,000円ほど・子供は少し安め(2026年7月・現地聞き取り)。電話予約のみ TEL 0279-75-3073
公式公式サイトなし(SNSも実質未運用。情報は現地掲示が一次)

料金・時間は2026年7月時点の現地掲示に基づく。公式サイトが存在しない宿なので、この掲示転記がそのまま最新情報になる。

浴場入口の歌碑。「ぬるくとも 効能あつき 湯の徳は」
浴場入口の歌碑。「ぬるくとも 効能あつき 湯の徳は」

受付は無人。料金箱と「館長」の張り紙

受付には誰もいない。机の上に木の料金箱、脇に手書きの木札。「受付 大人400えん 小人200えん 2時間以内 延長1時間ごと100円」。私は400円を箱に入れて浴場へ向かった。

無人の受付。手書きの木札と「日帰りのお客様へ」の貼り紙
無人の受付。手書きの木札と「日帰りのお客様へ」の貼り紙

机と周辺の掲示を並べると、この宿の運用がぜんぶ分かる。

  • 入浴料・お湯汲み料は前払い(署名は「館長」)
  • 温泉水は、有料です。10リットルまで100円(10リットル未満でも100円)
  • 日帰りは午後8時までに時間厳守で退館
  • 土・日は混雑する為、入浴時間は三時間まで(夏季営業時間の貼り紙)
  • 入浴料でおつりが必要なお客様は、金井旅館本館まで
机上の掲示群と料金箱。「2時間まで400円」
机上の掲示群と料金箱。「2時間まで400円」

命令形の掲示がずらりと並んでいた高崎の天神の湯とは対照的に、こちらは前払いのお願いにも営業時間の知らせにも「館長」の署名が入った依頼形。細かいルールも、400円で湯治場を維持するための線引きと読めば筋は通っている。

湯づかい|「何もしない」が掲示で裏付けられている

脱衣所の「温泉利用状況」の掲示を、そのまま転記する。

項目掲示の記載
加水の状況無し
加温の状況源泉が低温のため上がり湯を適度に加温しています
循環・ろ過状況無し
入浴剤の有無無し
消毒処理の状況無し
脱衣所の温泉利用状況掲示。「無し」が並ぶ
脱衣所の温泉利用状況掲示。「無し」が並ぶ

手を加えているのは上がり湯(湯から出る前に温まるための加温槽)だけ。源泉槽には、湧いたままの湯がそのまま張られている(露天も後述のとおり、体感は同じだった)。

湧出量については、Webで「毎分700L」「800L」といった数字を見かけるが、現行の分析書の記載は「測定せず(掘削自噴)」。一次資料で裏が取れないので、この記事では数字を書かない。書けるのは、源泉投入口から湯が絶えず注がれ、縁から溢れ続けていたという目視の事実だけだ。

泉質データ(平成16年1月分析・源泉「温湯2号」)

項目数値
泉質アルカリ性単純温泉(アルカリ性低張性低温泉)
pH8.6(採水地点)
泉温32.8℃(調査時気温4.0℃)
湧出量測定せず(掘削自噴)
溶存物質0.50g/kg
主要成分Na⁺ 107.0/Ca²⁺ 53.7/Cl⁻ 170.0/SO₄²⁻ 108.0(mg/kg)
メタけい酸42.6mg/kg
脱衣所に掲示された温泉分析書と保健所の決定書
脱衣所に掲示された温泉分析書と保健所の決定書

単純温泉というのは「薄くて物足りない湯」という意味ではなく、溶存物質が1g/kg未満という区分のこと。療養泉の判定には泉温25℃以上という温度条件もあり、32.8℃の本泉は温度基準で療養泉に該当する。

脱衣所には中之条保健所の「温泉の禁忌症、適応症及び入浴上の注意決定書」(平成16年・平成20年)も額装されていて、浴用の適応症として神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進が挙げられている。一方、急性疾患(特に熱のある場合)や重い心臓病などは浴用の禁忌症だ。適応症は保健所の決定書に基づく浴用の目安で、効果を保証する数字ではない。

源泉槽で1時間半|32.8℃の湯で泡が肌に付く

新館の男湯へ。内湯は2槽あって、大きい方が源泉槽、小さい方が加温の上がり湯だ。

新館男湯の内湯。手前の大浴槽が源泉槽、奥の小さい槽が加温の上がり湯
新館男湯の内湯。手前の大浴槽が源泉槽、奥の小さい槽が加温の上がり湯

源泉槽の投入口には「源泉の前に座らないで下さい」の貼り紙。いちばん湯が若い特等席は独り占め禁止、という運用だ。投入口の下では湯が絶えず湧き出して、水面が静かに盛り上がっている。

源泉投入口。「源泉の前に座らないで下さい」の貼り紙と、絶えず注がれる無色透明の湯
源泉投入口。「源泉の前に座らないで下さい」の貼り紙と、絶えず注がれる無色透明の湯

32.8℃は体温より少し低い。入った瞬間は「ぬるっ」と声が出るが、30秒で体が慣れて、あとは入っているのか浮かんでいるのか分からない感覚が続く。しばらく浸かっていると、腕や脚に細かい泡がびっしりと付いた。手で払っても、また付く。無色透明でクセがなく、匂いもほとんど感じない。ただただ、静かな湯だ。島根の温泉津で凶暴に熱い元湯に通っていた身としては、真逆の武器で客を長居させる湯治場が新鮮だった。

日曜の朝9時前に着いたときは宿泊客が2組と日帰り客が3人ほど。9時半ごろに浴室が私ひとりになった(この記事の浴室写真はその時間帯のもの)。源泉槽に浸かったまま、時計を見たら1時間半が経っていた。42℃の湯なら私は10分で限界だが、32℃台は体への負荷が軽く、時間の感覚が溶ける。ただし、ぬる湯でも長湯は汗をかく。こまめな水分補給と、立ちくらみを感じたら無理せず湯から出ることは忘れずに。

長湯で体が冷えてきたら、小さい方の上がり湯へ。ここだけ加温されていて、仕上げに温まってから出る設計だ。ぬる湯→上がり湯の順路が、湯冷め対策としてよくできている。

私の1時間半など、この宿では序の口らしい。湯で一緒になった常連いわく、毎週1回通って泊まる人も、毎月1回の人もいるという(2026年7月・現地での聞き取り)。1泊2食付きで大人8,000円ほど(子供は少し安い)、そのご飯も美味しいのだそうだ。長く浸かれるぬる湯だからこその通い方だと思う。古い口コミで見かける「エアコンがない」は過去の話で、昨年ごろからクーラーが入ったと聞いた。泊まりで湯治する人には朗報だろう。宿泊は電話予約のみだが、金井旅館は中之条町ふるさと納税「感謝券」(寄付額30%相当)の取扱事業所なので、寄付でもらった感謝券を支払いに充てる手もある——詳しくは記事末尾のふるさと納税欄へ。

露天も、体感は源泉のまま

露天風呂も、浸かった体感は源泉槽と同じぬるさだった。掲示の加温対象は上がり湯だけなので、ここも湧いたままの湯と見ていい。明るい緑のタイルに巨石の石垣、屋根付き。縁にハエたたきが常備されているのは山あいの夏の露天の現実だが、湯は文句なしに澄んでいた。

男湯の露天風呂。緑のタイルと巨石の石垣、屋根付き
男湯の露天風呂。緑のタイルと巨石の石垣、屋根付き
露天の湯口。黒岩の間から源泉が注がれ続ける
露天の湯口。黒岩の間から源泉が注がれ続ける

旧館には混浴風呂(この日は常に先客)

旧館には混浴の風呂もある。この日は朝から常に先客がいたので、浴室の撮影はしていない。雰囲気だけ、イラストで補っておく。

旧館混浴風呂のイメージイラスト(AI生成。実際の浴室・配置とは異なります)
旧館混浴風呂のイメージイラスト(AI生成。実際の浴室・配置とは異なります)

新館の内湯と露天が男女別なので、混浴を避けたい人は新館だけで完結する。混浴側の細かい運用は今回確認できていないので、気になる人は現地で聞いてほしい。群馬の混浴の入り方や心構えは混浴日帰りガイドにまとめている。

歌碑と歴史|「慶長の薬湯」は伝承、いまの湯は1974年から

大塚温泉は「慶長の薬湯」と呼ばれるが、これは言い伝えの領域だ。文献ベースで言えるのは、現在の旅館としての営業が1917年(大正6年)に始まり、いまの豊富な自噴湯が1974年(昭和49年)9月のボーリングで得られたということ。開湯何百年の看板ではなく、半世紀余り前に掘った井戸が今日もポンプなしで湧き続けている――そちらの方が、よほど信用できる資産だと思う。

中庭の池と浴室棟。分析書の採水地点は「浴室棟から池の上部に出ている配管」と記されている
中庭の池と浴室棟。分析書の採水地点は「浴室棟から池の上部に出ている配管」と記されている

ちなみに分析書の採水地点欄には「浴室棟から池の上部に出ている配管」とある。中庭の池の上を、源泉の配管が横切っている構図だ。

まとめ|ぬるくとも、の続きは現地で

向いているのは、こんな人だ。

  • ぬる湯で1時間単位の長湯がしたい人(夏は特に天国)
  • 消毒や循環を経ていない、湧いたままの湯に浸かりたい人
  • 無人受付・料金箱・館長の張り紙という湯治場の空気ごと味わいたい人

逆に、熱い湯でさっと温まりたい人(源泉槽は32℃台)、新しい設備や手厚い接客を求める人、キャッシュレス派には向かない。

400円を料金箱に入れて、32.8℃の源泉槽に沈む。歌碑の上の句に、この宿のすべてが書いてある。ぬるくとも、効能あつき。下の句は、次に行ったときの宿題にする。

湯上がりの昼は、中之条駅前の丼専門店よるべで丼にした。32.8℃で長湯した体に、とろとろの軟骨ソーキがよく染みた。

同じ「ぬるさが主役」の群馬の湯はぬる湯日帰り11選で横断比較している。ぬる湯で長湯する感覚は、みなかみの釈迦の霊泉ともまた違う(あちらは22℃の冷鉱泉を41℃前後に加温して使う)ので、飲み比べならぬ浸かり比べも面白い。pH・溶存物質などの数値をほかの群馬の湯と並べて見たい人は、群馬の源泉かけ流し 泉質比較データへどうぞ。

※訪問は日曜の朝。料金・営業時間は2026年7月時点の現地掲示に基づく。

よくある質問

Q. 大塚温泉 金井旅館の日帰り入浴の営業時間と料金は? A. 午前9時〜午後8時(時間厳守・現地掲示より)。料金は大人400円・小人200円で2時間以内、延長は1時間ごとに100円。土・日は混雑のため入浴3時間までとする掲示がある(夏季掲示)。いずれも2026年7月時点。

Q. 大塚温泉は源泉かけ流し? A. 脱衣所の温泉利用状況掲示では、加水・循環ろ過・入浴剤・消毒処理がすべて「無し」。加温は「源泉が低温のため上がり湯を適度に加温」のみで、源泉槽には湧いたままの湯が張られている(露天も体感は源泉槽と同じぬるさだった)。

Q. お湯はどのくらいぬるい? A. 源泉温度は32.8℃(平成16年1月の温泉分析書)。体温より少し低く、入った瞬間はぬるく感じるが、長く浸かるほど心地よくなるタイプ。上がる前に加温された上がり湯で温まれる。

Q. 混浴はある?苦手でも大丈夫? A. 旧館に混浴の風呂があり、新館の内湯・露天は男女別。混浴を避けたい場合は新館だけで完結する。混浴側の細かい運用は現地で確認を。

Q. 支払いにクレジットカードやPayPayは使える? A. 使えない。受付は無人で、料金箱に現金を前払いで入れる方式。おつりが必要な場合は金井旅館本館へ、との掲示がある。

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大塚温泉 金井旅館は、中之条町ふるさと寄附の感謝券が使える取扱事業所です(令和8年4月時点・町公式の取扱実績一覧より)。寄附の感謝券でこの湯治場の湯を楽しむこともできます。

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