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万座温泉 豊国館 日帰り入浴|混浴露天の乳白色硫黄泉

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標高1,800m、雲の上に湧く万座温泉。硫黄の濃さで知られるこの高所温泉地の一角に、いかにも年季の入った木造の宿がある。「豊国館(ほうこくかん)」。万座で1、2を争う名湯と評する人もいる、知る人ぞ知る一軒だ。

その日帰り入浴は800円。深さ1mのプールのような混浴露天に、湯治場らしい内湯。乳白色の硫黄泉を心ゆくまで浴びられる。2026年6月、日曜の朝、開館直後に立ち寄ってきた。

霧に包まれた豊国館の木造の外観
霧に包まれた豊国館。山の上の朝は6月でも肌寒い

基本データ

施設名万座温泉 豊国館(ほうこくかん)
所在地〒377-1528 群馬県吾妻郡嬬恋村干俣2401(万座温泉)
電話0279-97-2525
日帰り料金大人 800円/子ども 600円ほど(2026年6月の訪問時。子ども料金はうろ覚え)。※貸しタオルは要確認。ネット掲載の「大人500円」は旧料金とみられる
営業時間外来入浴 8:30–16:30(受付は終了時刻前に締め切られる場合あり)
定休日不定休
泉質酸性・含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型)/低張性酸性高温泉。源泉名「苦湯(にがゆ/豊国館)」
湯使い源泉かけ流し(放流式・循環なし)。内湯は加水なし=源泉そのまま(熱ければ各自で加水)。露天は常時加水で温度調整(源泉74.5℃と高温のため)。加温・入浴剤・消毒はなし
お風呂内湯(男1・女1)+混浴露天1。内湯は6人ほど、露天は約30人サイズ・深さ約1m(露天サイズは口コミ等の二次情報)
駐車場約30台
訪問2026年6月7日(日)8時半ごろ(開館直後)

アクセス|標高1,800m、雲の上の湯治場

万座温泉は群馬県・嬬恋村の山の上、標高1,800mに湧く温泉地だ。万座ハイウェーなどの山岳路を上っていく必要があり、コンビニも食堂街もない。この日は朝から濃い霧に包まれ、6月だというのに羽織り物が欲しい肌寒さだった。山を上るほど空気が変わっていくのが、この温泉地に向かう道中の醍醐味でもある。

豊国館は万座温泉のなかでも、観光ホテル群とは少し離れた、昔ながらの湯治宿の佇まいを残す一軒。駐車場は約30台。真新しい施設ではない。口コミどおり、実際に年季が入っている。だがその素朴さこそが、ここの湯の濃さと釣り合っている。

苦湯(豊国館)|pH2.2、硫黄が香る酸性の湯

木の樋と湯口まわりにこびりついた白い析出物
木の樋の内側を覆う白い析出物。これは濁った湯ではなく、源泉が長年かけて残した結晶だ。湯口まわりの岩にもびっしり付く

豊国館の源泉は「苦湯(にがゆ)」。脱衣所の温泉分析書(令和6年8月の分析)を読むと、その濃さが数字で分かる。

  • pH 2.2:レモン果汁に近い酸性。肌にピリッとくる、万座らしい強い酸性泉
  • 湧出温度 74.5℃・自然湧出:ポンプで汲み上げず、地中から自然に湧き出る高温泉
  • 遊離硫化水素 49.7mg/kg:分析書にも「硫化水素臭あり」と明記。硫黄の香りの正体
  • メタけい酸 158.7mg/kg を含む(「美肌の湯」と呼ばれる成分。ただし経皮での美肌・保湿効果に確たる科学的裏付けはなく、ここでは含有量の事実として記す)
  • 溶存物質 1.20g/kg(成分総計は1.28g/kg):溶存物質が8g/kg未満のため「低張性」に分類される

正式な泉質名は「酸性・含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型)」。陰イオンでは硫酸イオンが最も多く、そこに遊離硫化水素・硫化水素イオンを含むため「含硫黄」を冠する。低いpHの酸性と、硫黄。この二つが万座らしさの正体だ。

環境省の基準では、酸性泉・硫黄泉はアトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・慢性湿疹などが浴用の適応症とされる(※「効く・治る」ではなく、公的に位置づけられた適応症の引用)。一方で同基準は、皮膚・粘膜が過敏な人や高齢者の皮膚乾燥症を禁忌に挙げている。pH2.2の強酸性に硫黄が濃いこの湯は、肌の弱い人は長湯を避け、上がりに真水のシャワーで流すなど、無理のない入り方がおすすめだ。

おもしろいのは、湯口から注がれる熱い源泉そのものは透明だったこと。内湯も露天も、注ぎ口から落ちる湯は澄んでいる。分析書の知覚試験も「無色透明、硫化水素臭あり」と記す。その透明な湯が、湯船に溜まって空気に触れ、冷めるうちに、溶けていた硫黄分が細かな粒になって乳白色へと濁っていく。湯船に張られた露天の湯は、やや緑がかった白濁に見えた。

湯口は木を削った樋。その内側は、流れる湯が残した白い析出物で分厚く覆われていた。湯口まわりの火山岩のように見える黒い岩にも、同じ結晶がびっしり。ろ過して使い回す湯ではなく、新鮮な源泉が絶えず流れ込んでは縁からあふれている——何よりの物的証拠だ。

湯口から乳白色の湯船へ注がれる透明な源泉
湯口から落ちる源泉は透明。それが乳白色の湯船に吸い込まれていく

湯使い|内湯は源泉そのまま、露天は加水で温度調整

当ブログでは湯の鮮度を判断するのに、脱衣所の湯使い掲示(加水・加温・循環・入浴剤・消毒の5項目)を必ず確認している。豊国館の掲示は、加温・循環・入浴剤・消毒が「なし」、加水のみ「湯が熱い時」と注記されていた。

ただし訪問時の露天は、常時加水されていた。源泉は74.5℃と高温。標高1,800mの広い露天をそのまま満たせば熱すぎるので、入浴できる温度まで水で割っているのだろう。つまり露天は「100%源泉そのまま」ではない。一方で内湯は加水なし。熱ければ入浴客が各自で水を足す方式で、掲示の「熱い時のみ加水」とはこの内湯の運用のことだ。どちらも循環ろ過で使い回す湯ではなく、新鮮な源泉を注いではあふれさせる放流式であることは、湯口に育った析出物が証明している。なお飲用は不可(強酸性のため)と掲示にあった。

深さ1mの混浴露天|“浸かる”より“立つ”湯

霧に包まれた豊国館の乳白色の混浴露天風呂
約30人サイズ・深さ1mの混浴露天。朝の霧で対岸がかすむ

豊国館の名物が、この混浴露天風呂だ。約30人サイズの木枠の浴槽で、特筆すべきは深さが約1mあること。腰を下ろして浸かるというより、立ったまま全身を沈めるプール状の造りになっている。緑がかった白濁の湯に首までどっぷり浸かると、立ちのぼる硫黄の香りと、肌を刺す酸性の感触が、いかにも万座らしい。この青白い濁り湯は、別府・明礬(みょうばん)温泉の白濁を思わせる。東の万座と西の別府、離れていても“濃い硫黄の濁り湯”という血筋は通じている。

体感の湯温は42℃ほどの適温。湯に温まったら縁に上がり、高所の冷たい霧に身をさらして涼む。火照った体に冷気がしみて、また湯へ戻る。この外気浴の往復が、露天のいちばんのごちそうだ。8時半の開館直後に滑り込むと、広い露天には誰もいなかった。霧の朝に万座の名湯をひとり占めできた。当ブログでいう「独湯率(他の客と居合わせず独り占めできる確率)」を狙うなら、日中は人が集まるので断然この開館一番手だ(混浴のため時間帯によっては他の客と居合わせる。気になる人は男女別の内湯もある)。

内湯もかけ流し|青みの強い乳白色

露天とは別に、男女それぞれの内湯もある。木造の浴室に6人ほど入れるサイズで、こちらは青みの強い乳白色の湯がかけ流し。粉のような白い湯の花が舞う。そして内湯は加水なし=源泉そのまま。熱ければ自分で水を足す方式だ。常時加水で温度を整えた露天に対し、苦湯の濃さをいちばん素直に味わえるのは、じつはこの内湯かもしれない。混浴に抵抗がある人にもおすすめだ。

こんな人におすすめ

  • 万座らしい濃い硫黄泉・強酸性泉を本気で味わいたい人
  • 深さ1mの個性的な混浴露天を体験してみたい人
  • 綺麗さより湯の鮮度(かけ流し)を優先する人
  • 雲の上の湯治場の雰囲気に浸りたい人

派手さはない。受付も浴室も昔ながらの湯治宿そのものだ。それでも、74.5℃で自噴する源泉を放流式で注ぐ乳白色の湯に、深さ1mの露天で霧に包まれて浸かる体験は、800円とは思えない濃さがある。万座まで上ってきたなら、ぜひ立ち寄ってほしい一軒だ。

同じ嬬恋エリアで、混浴露天に日帰り入浴できる湯なら半出来温泉 登喜和荘(こちらはワンコイン500円)もよく似た一軒。群馬の源泉を泉質で横断したい人は源泉かけ流し 泉質比較もどうぞ。

万座の湯あがりに、八ッ場ダムまで下りてランチにするならうどん専科 麦の香り(八ッ場店)もおすすめ。コシの強い極太うどんで温泉ドライブを締められる。うどんでなく洋食の気分なら、同じ八ッ場エリアのやまきぼしもある。

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