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大島鉱泉(富岡)|群馬で希少な“温泉銭湯”を日帰りレポ

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青いトタン屋根と「金鳥・キンチョール」のホーロー看板が残る、大島鉱泉の昭和な建物外観
青いトタン屋根と「金鳥・キンチョール」のホーロー看板が残る、大島鉱泉の昭和な建物外観

群馬県富岡市の外れ、田んぼと竹やぶのあいだの細い道に、その湯はある。緑の縦看板に白抜きで「大島鉱泉」、その下に電話番号がひとつ。ナビが「目的地周辺です」と言い残して黙り込んだとき、正直、民家の勝手口に間違えて突っ込んだのかと思った。

結論から言うと、ここは群馬でも数えるほどしかない「銭湯価格で入れる天然温泉の公衆浴場」だ。大人450円。ピカピカのスパでもなければ、雑誌に載る秘湯でもない。富士山のタイル絵、ピンクのタイル、番台に虎のつづれ織り。昭和の銭湯がそのまま時を止めたような一軒で、月曜の午後はまるごと貸切だった。

ただし先に正直なところを書いておくと、この湯は「源泉かけ流し」ではない。冷たい鉱泉を沸かし、量が足りない分は水を足して張った“沸かし湯”だ。それでも書きたくなる何かがある一湯だったので、湯づかいの実態も、料金も、アクセスも、隠さずまとめる。

※本記事は単独で立ち寄った日帰り入浴の記録です。料金・営業時間などは訪問時点(2026年7月時点)のもの。不定休なので、訪問前の電話確認が確実な湯です。最新情報は必ず電話でご確認ください。

大島鉱泉ってどんなところ?

大島鉱泉があるのは、群馬県富岡市の大島(おおしま)。世界遺産・富岡製糸場のある市街から少し外れた、西上州ののどかな一帯だ。上信越道・富岡ICから車で5分ほど、無料の駐車場もあり、同じ富岡・甘楽エリアには甘楽町のこんにゃくパークもある。富岡・下仁田方面の温泉ドライブに、素直に組み込める立地だ。

この湯の何よりの個性は、旅館でもスパでもなく「公衆浴場」=いわゆる銭湯として登録されていること。だから料金は群馬県が告示で定める銭湯価格そのもので、大人(中学生以上)450円、中人(小学生)200円、小人(乳幼児)100円(令和5年8月改定・群馬県公衆浴場業生活衛生同業組合)。番台の上にその料金表が、堂々と貼り出されている。

道路脇の緑の縦看板「大島鉱泉 TEL62-1490」。ここを目印に脇道へ入る
道路脇の緑の縦看板「大島鉱泉 TEL62-1490」。ここを目印に脇道へ入る

聞けば、この湯の歴史は古い。大正のころ、村人が共同で井戸を掘ったら、ゆで卵のようなにおいのする水が湧いた。それがこの鉱泉の起こりだという。戦後に初代が源泉を買い取って銭湯として開き、かつては宿も兼ねて宴会や合宿でにぎわった。いまは宿泊をやめ、日帰りの公衆浴場一本。建物も増改築を重ねながら、長く使い継がれてきた。

群馬には名だたる温泉地が山ほどあるが、その多くは旅館の内湯か、入浴料500〜1,000円クラスの日帰り施設だ。実際、富岡市の観光サイトなどは大島鉱泉を「群馬県内で唯一の温泉銭湯」と紹介している。真偽を言い切ることはしないが、少なくとも物価統制の銭湯価格で、正真正銘の天然温泉に入れる公衆浴場となると、県内でも数えるほど。大島鉱泉は、その希少な一軒である。

昭和がそのまま残っている番台と待合

引き戸を開けて中へ入ると、まず出迎えてくれるのが、この待合の“情報量”だ。

「男湯」の巴紋の暖簾、渓流魚の剥製、木彫りの七福神、壁一面の虎のつづれ織り。昭和レトロな番台まわり
「男湯」の巴紋の暖簾、渓流魚の剥製、木彫りの七福神、壁一面の虎のつづれ織り。昭和レトロな番台まわり

「男湯」と染め抜いた巴紋の暖簾。壁には渓流魚の剥製に、木彫りの七福神、そして一枚布の虎のつづれ織り。天井から下がる古い扇風機に、飴色になった木の階段。狙って作った“レトロ風”ではなく、使い続けた時間がそのまま残っている本物の昭和だ。建物の外壁には、いまではめったに見ない「金鳥」「キンチョール」のホーロー看板まで現役で残っている。

番台では店主が迎えてくれた。ぽつぽつと話を聞くと、「最近は県外から来てくれるお客さんが増えた」のだという。地元の常連さんに支えられてきた小さな公衆浴場に、わざわざ遠くから湯を目当てに人が来る。その静かな手応えを、うれしそうに話してくれた。

湯づかい|“かけ流し”ではない、正直な沸かし湯

ここが、この記事でいちばん丁寧に書いておきたいところだ。

大島鉱泉の源泉は冷鉱泉(れいこうせん=源泉の温度が25℃に満たない、冷たい温泉のこと)。地中から湧く時点では14.5℃しかなく、そのままでは入れない。だから浴場では加温して42℃前後に温めている。さらに湧く量が入浴に足りないため、不足分は水を足して(加水して)湯船を張っている。

浴室には、温泉法で義務づけられた「温泉成分等掲示表」がきちんと掲げられていて、利用状況がこう明記されている。

浴室に掲げられた温泉成分等掲示表。加水・加温「あり」、循環ろ過・消毒剤「なし」と明記されている
浴室に掲げられた温泉成分等掲示表。加水・加温「あり」、循環ろ過・消毒剤「なし」と明記されている
項目掲示の内容
加水あり(供給量の不足を補うため)
加温あり(入浴に適した温度を保つため)
循環・ろ過なし(循環ろ過装置は使用していない)
入浴剤なし
消毒なし(消毒剤は使用していない)

つまり大島鉱泉の湯は、「源泉かけ流し」でも「自噴かけ流し」でもない。冷たい鉱泉を沸かし、水で足して張った“沸かし湯(溜め湯)”だ。ここを「かけ流し」と書いてしまうのは、この湯に対しても読者に対しても不誠実なので、はっきり書いておく。

とはいえ、この沸かし方がまた手仕事だ。3代目のご主人が毎日、薪をくべて湯を沸かしているのだという(薪は解体した家の廃材を再利用しているそうだ)。そして循環もろ過もしておらず、塩素などの消毒剤も使っていない。これは今どき、日帰り施設でもなかなかない“素”の湯づかいだ。沸かしてはいるけれど、ぐるぐる回した消毒臭い湯ではない。そこは、はっきり良さとして書ける。

泉質データ(源泉「榊の湯」・令和元年分析)

浴室と待合には温泉分析書も掲示されている。数値は令和元年(2019年)9月の分析から。源泉名は「榊の湯(さかきのゆ)」という。

項目
源泉名榊の湯(大島鉱泉)
泉温14.5℃(冷鉱泉)
pH9.0(アルカリ性)
知覚淡い黄色・わずかに硫化水素臭・黄土色の沈殿物
溶存物質約0.80 g/kg
判定温泉法上の「温泉」に該当(メタほう酸・炭酸水素ナトリウムの項による)/療養泉には非該当のため、泉質名はなし

少しかみ砕くと、大島鉱泉は「温泉法でいう“温泉”ではあるけれど、泉質名を名乗れるほど成分が濃くはない」湯だ。温泉として認められる決め手になったのは、メタほう酸(ほう素の化合物。温泉法が“温泉”と認める成分のひとつ)と炭酸水素ナトリウム(いわゆる重曹)。ただし、泉質名や泉質ごとの効能を名乗れる「療養泉」の基準には届いていないので、この湯には正式な泉質名がない。だから当ブログでも「◯◯泉」「美人の湯」といった呼び名は付けない。事実として書けるのは、pH9のアルカリ性で、淡い黄色をした、ほのかに硫黄っけのある湯。そこまでだ。

浴室体験|富士山のタイル絵と、黄土色に染まった湯

暖簾をくぐった浴室は、壁も床も一面のピンクのタイル。そして湯船の正面には、堂々たる富士山と滝のタイル絵。銭湯の背景画といえば富士山——関東の銭湯文化ではおなじみの意匠が、この西上州の小さな一軒にもちゃんとある。床は豆砂利を埋め込んだ研ぎ出しで、足の裏に昔の共同湯の感触が返ってくる。

富士山と滝のタイル絵の下、黄土色に色づいた湯をたたえる浴槽。ピンクタイルの浴室
富士山と滝のタイル絵の下、黄土色に色づいた湯をたたえる浴槽。ピンクタイルの浴室

そして肝心の湯船。ひと目でわかるくらい、湯が黄土色に色づいている。分析書には「淡い黄色」の水に「黄土色の沈殿物」とあったが、その沈殿が溶け込んで、湯全体が濃い黄土色に見える。透明ピカピカの湯に慣れた目には、この“濁り”がむしろごちそうに見える。

肩まで沈む。湯温はちょうどよく、41〜42℃くらいで長く入っていられる。pH9のアルカリ性と聞くと、つい“ぬるぬる”を期待してしまう。ところが大島鉱泉の湯ざわりは意外なほどさっぱり。ぬめりは弱く、くせのない、やわらかい肌あたりだった。おもしろいもので、下仁田の八千代温泉 芹の湯は中性(pH6.5)なのにぬるぬる、こちらはpH9でもさっぱり。液性の数字だけでは、肌ざわりは読めない。派手さで殴ってくる湯ではないが、ピンクタイルの浴室に一人きり、富士山を眺めながら黄土色の湯にぼんやり浸かる時間は、値段が450円であることを何度か忘れさせてくれる。

ピンクタイルと豆砂利の床、洗い場と鏡。誰もいない男湯の全景
ピンクタイルと豆砂利の床、洗い場と鏡。誰もいない男湯の全景

この日は月曜の午後、入っているあいだ、ずっと自分ひとりだった。広くはない浴室を独り占めして、湯面が動く音と、外の蝉の声しか聞こえない。混雑した日帰り施設では絶対に買えない静けさが、ここには450円で置いてある。

適応症と注意(掲示より)

療養泉ではないため泉質ごとの効能は掲げられていないが、掲示の別表には、療養泉に該当しない温泉の一般的な適応症として次のように記されている(環境省の通知に基づく浴用の一般的なもの)。

  • 浴用の一般的適応症:病後回復期、疲労回復、健康増進(※病後回復期については温泉療法医の指導に基づくこと、と付記)
  • 一般的禁忌症:病気の活動期(特に発熱があるとき)、活動性の結核、進行した悪性腫瘍、重い心臓・腎臓の病気、消化管出血、目に見える出血があるときなど

要するに、特定の病気に効く“薬湯”ではなく、体を温めて疲れをほぐす、ふつうの入浴の気持ちよさを楽しむ湯だと思っておけばいい。入浴前後の水分補給と、のぼせないよう無理をしないのは、どの湯でも同じだ。

周辺|富岡ドライブに素直に組み込める

大島鉱泉のいいところは、観光の“ついで”に寄りやすい立地でもある。

  • 富岡製糸場……世界遺産。市街から近く、見学とセットにしやすい。
  • こんにゃくパーク(甘楽町)……無料のこんにゃくバイキングと足湯。この日も、湯の前の腹ごしらえに寄った。
  • 湯をハシゴするなら、下仁田方面の下仁田温泉 清流荘や、中性なのにぬるぬるの冷鉱泉八千代温泉 芹の湯へ。
  • 50分の完全貸切でこもるなら、吉井の湯端温泉。同じく冷鉱泉を沸かす湯だが、溶存物質は桁違いに濃い。
  • 湯上がりの一杯なら、『孤独のグルメ』の聖地餃子タンメン一番(下仁田)も同エリア。

まとめ|“ごちそう”ではないが、また来たくなる湯

正直に言えば、大島鉱泉は「湯の力で殴ってくる」タイプの温泉ではない。かけ流しでもないし、泉質名すらない、沸かした冷鉱泉だ。成分の濃さで語れば、群馬にはもっと強烈な湯がいくらでもある。

それでも、富士山のタイル絵、黄土色の湯、昭和のまま止まった番台、そして月曜の午後の完全な独り占め。このぜんぶが450円で手に入るとなると、話は変わる。島根や大分でかけ流しに開眼して以来、群馬の湯を巡ってきたが、“濃さ”だけが温泉の値打ちではないと、この450円の銭湯にあらためて教わった。県外からわざわざ来る人が増えている、という店主の言葉が、入ってみるとよくわかる。「濃い湯」ではなく「いい時間」を買いに行く一軒だ。西上州をドライブするなら、電話を一本入れて、寄ってみてほしい。

よくある質問

Q. 大島鉱泉は源泉かけ流しですか?
A. いいえ。源泉は14.5℃の冷鉱泉のため加温しており、湧出量が足りない分は加水もしています(掲示より)。ただし循環ろ過はしておらず、消毒剤も使っていない“沸かし湯(溜め湯)”です。

Q. 料金はいくらですか?
A. 群馬県の公衆浴場(銭湯)料金で、大人(中学生以上)450円、中人(小学生)200円、小人(乳幼児)100円です(2026年7月時点)。支払いは現金のみ。

Q. 予約や電話は必要ですか?
A. 不定休で、営業していない日もあります。訪問前に電話(0274-62-1490)で当日の営業を確認してください。

Q. どんな湯ざわりですか?
A. pH9のアルカリ性ですが、ぬめりは弱く、さっぱりした肌あたりでした。湯は黄土色に色づいており、湯温は41〜42℃ほどで長湯しやすい体感です。

基本データ表

項目内容
施設名大島鉱泉(おおしまこうせん)
所在地群馬県富岡市大島
アクセス上信越自動車道 富岡ICから車約5分/富岡製糸場から車約16分。駐車場あり(無料・約10台)
営業時間13:00〜19:00(不定休・宿泊なしの日帰り専門。訪問前に電話確認を)
料金大人450円/中人(小学生)200円/小人(乳幼児)100円(2026年7月時点)
支払い現金のみ
泉質泉質名なし(療養泉に非該当。温泉法上の「温泉」=メタほう酸・炭酸水素ナトリウムの項により該当)
源泉榊の湯(泉温14.5℃・pH9.0/令和元年分析)
湯づかい加温あり・加水あり・循環ろ過なし・消毒なし・入浴剤なし(掲示より)
電話0274-62-1490

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