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電気風呂は効くのか|研究はゼロ、安全な入り方と群馬6施設

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湯都里の玄関と暖簾。高崎の京ヶ島天然温泉で、私が電気風呂に入っている施設
湯都里(高崎)の玄関。私が電気風呂で腰を温めている施設のひとつ

銭湯やスーパー銭湯の隅に、ひっそりと置かれている電気風呂。筋肉が収縮して血行が促され、肩こりや筋肉痛の緩和が期待される、と業界の説明にはある。本当なのか気になって、国内外の論文データベース、業界団体とメーカーの資料、厚生労働省の通知まで当たってみた。結論から書くと、電気風呂の効果を測った研究は一本も見つからなかった。あるのは安全側の症例報告だけである。それでも私は入る。仕組み、安全な入り方、群馬で入れる場所まで、調べたことを全部書いておく。

※本記事は公開資料と研究論文の紹介であり、効果を保証するものでも医学的助言でもない。持病のある方、体内に医療機器を植え込んでいる方は、入る前に医師に相談してほしい。

結論の早見表|効果の研究はゼロ、安全側だけ報告がある

論点調べた結果
効果を測った研究国内外ともに見つからず(医中誌Web 3件・PubMedで効果研究0件)
安全側の報告症例報告のみ。横紋筋融解症1例(2019年)、ICD/S-ICD誤作動3例(2024〜2026年)
仕組み浴槽の両側に電極板。交流で、出力は最大10V・6〜60Hz程度(査読症例報告の記載)
法的な位置づけ医療機器ではない。電気用品安全法の特定電気用品+公衆浴場の衛生管理要領で管理
メーカー推奨1回3分以内・1日2〜3回
入ってはいけない人ペースメーカー・ICDなど植込み型医療機器のある人(メーカー・業界団体・症例報告が一致)
私の結論効果は期待しない。推奨内の3分以内で、気持ちいいから入る

電気風呂の仕組み|浴槽の両側に電極板、流れているのは最大10Vの交流

構造は拍子抜けするほど単純で、電源装置・電線・電極板の3つでできている(東京都浴場組合のコラム「電気風呂、ハマってみますか?」2024年)。浴槽の両側の壁に鋼板の電極が埋め込まれ、その間のお湯に電流を流す。入浴者は電極の間に体を置くので、体の中を微弱な電流が通る、という仕掛けだ。

電気の中身は、2024年に英語の査読誌に載った症例報告(後述するICD誤作動の1例目)が丁寧に書いている。交流で、出力電圧は最大10Vに制限され、周波数は6〜60Hz程度(メーカーの設定による)。東京都浴場組合のまとめ(銭湯のホームページ記載値を集めたもの)では「出力電圧は5〜10ボルト」「出力電流は1〜10ミリアンペア」がほとんどとされ、レンジは整合する。装置の入力側は家庭用のAC100Vで、メーカーの小西電機によると消費電力は「数ワット程度」。タイプは「ソフトタイプ・マッサージタイプ・たたきタイプ・マルチタイプ」の4種類がある。

ここで押さえておきたいのは、電気風呂は医療機器ではないということ。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開している医療機器の一般的名称一覧(JMDN・約4,000件)を全文検索しても、「電気浴」「電気風呂」に相当する名称は存在しない。電気浴器用の電源装置は電気用品安全法の特定電気用品(PSEマークの対象。所管は経済産業省)として扱われており、厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」が構造と管理の基準を定めている。要領の中身はこうだ。

  • 構造:電気浴器用電源装置は、電気用品安全法に基づき製造・輸入されたものであること
  • 管理:1か月に1回以上保守点検し、絶縁抵抗・接地抵抗等を定期的に検査して記録を作成、3年以上保存すること
  • 掲示:見やすい場所に入浴上の注意を掲示し、使用中は入浴者の安全に注意すること

つまり電気風呂は、薬機法(医薬品や医療機器の効能を規制する法律)の「効能効果」の枠にも、温泉法の「適応症」の枠にも属さない。お湯の設備として、電気製品の安全規格と浴場の衛生基準で管理されているものだ。「効く」という言葉の置き場所が、制度上どこにもない。

効果の研究を探した結果|「効く」の裏づけは見つからなかった

まず国内。2019年に聖路加国際病院のチームが日本温泉気候物理医学会雑誌に発表した症例報告(後述の横紋筋融解症の1例)に、こう書かれている。医学文献データベースの医中誌Webで「電気風呂」を検索しても、結果はわずか3件。英語文献は存在しない、と。2019年時点で、効果を調べた研究はほぼ無かったということになる。

次に海外。2026年9月に私がPubMed(米国国立医学図書館の論文データベース)を検索したところ、「denki buro」「electric bath AND Japan」で引っかかったのは計3件、いずれも2024〜2026年に発表された植込み型除細動器(ICD)の誤作動の症例報告だった。「electric bath」に「circulation」「muscle relaxation」「bathhouse」などを掛け合わせた検索は0件。鎮痛・血行促進・筋弛緩といった効果そのものを検証した研究は、PubMed上に一本も見つからなかった。

裏づけの無さは、業界側も認めている。東京都浴場組合のコラムは電気風呂の効果を「肩こり、関節痛、筋肉痛などの緩和が期待される、とされているのです」と伝聞形で書き、続けて「良きにつけ悪しきにつけ電気風呂に関する科学的な論及はほぼ皆無」と明言している。前述の2024年の英語症例報告も、電気風呂は筋肉を直接刺激して血行を改善するといわれている、と紹介したうえで「there is no evidence to confirm this(これを裏づける証拠はない)」と一文を添えた。装置を作っている小西電機のページに至っては、電気風呂を「入浴者にソフトな電気的刺激をお楽しみいただく装置」と説明している。メーカー自身が、効果でなく楽しみだと言っている。

似た名前の研究なら、無いわけではない。欧州には「スタンゲル浴(hydrogalvanic bath)」という物理療法があり、慢性の首の痛みや線維筋痛症で小規模なランダム化試験が行われている。ただしこれは体幹や四肢に複数の電極を配置し、1回20分、専門家の管理下で行う治療機器で、浴槽の両側の板に交流を流すだけの日本の電気風呂とは電極の配置も電流の波形もプロトコルも違う。皮膚に電極を貼るTENS(経皮的電気神経刺激)や、腹に巻くEMS(電気的筋肉刺激)も同様で、機器が別物である以上、それらの研究結果を電気風呂に外挿することはできない。ちなみにTENSの慢性痛に対するコクランレビュー(世界の医学研究を集めて評価する国際的な系統的レビュー。2019年の総括版)は「確信を持って結論づけることはできない」としており、隣の分野も証拠はまだ薄い。

筋肉は増えるのか、動きやすくなるのか

私自身が気になっていた疑問がふたつある。筋肉が勝手に収縮して翌日に筋肉痛が出るなら、修復の過程で筋肉が増えるのではないか。高齢の方が自分では動かしづらい部分を電気で動かせば、動きやすくなるのではないか。どちらも電気風呂で測った研究は見つからなかった。

隣の分野なら数字がある。電極を貼って筋肉を収縮させるNMES(神経筋電気刺激)は、入院中の成人を対象にしたランダム化比較試験42件(1,452名)のメタ解析で、筋量に中等度、筋力と歩行能力に小さな効果が確認されている(Alqurashi 2023、確実性は中程度)。健常な成人を対象にした10研究(174名)の系統的レビューでは、全研究で筋力の数値は上がったが、機能的な指標の改善は見られなかった(Mukherjee 2023)。ただしこれらは特定の筋肉を狙って電極を貼り、強度と時間を管理する機器の話で、浴槽の両側の板から全身に流す電気風呂とは電極の配置も目的も違う。数字をそのまま持ち込むことはできない。

もうひとつ、筋肉痛やCK(クレアチンキナーゼ。筋肉が壊れると血液中に増える酵素のこと)の上昇は「筋肉が壊れた」サインであって、「増えた」証拠ではない。90分入って筋肉が壊れた症例が次の章に出てくる。増えるかどうかは、誰も測っていない。

安全側でわかっていること|3分以内、ペースメーカーの人は入らない

効果の研究は無いが、安全側は出典つきで書ける。ここは断定していく。

メーカー推奨は「1回3分以内、1日2〜3回」。小西電機と神戸メディケアの製品ページに同じ文言で「1回の入浴は3分以内で、1日2、3回が目安です。(長風呂はさけてください)」とあり、聖路加の症例報告も「製造業者の推奨入浴法は『1回3分以内を1日2,3回』」と記している。

その症例報告が扱ったのが、長時間入浴による横紋筋融解症(筋肉の細胞が壊れて中身が血液中に漏れ出す状態のこと)だ。53歳の男性が、入院2日前に30分、前日に60分、合計90分も電気風呂に入り、筋肉の損傷を示す血清CK値が入院時13,631 IU/L、翌日29,836、ピークで42,355 IU/Lまで上がった。幸い腎機能障害は出ず、5日目に退院している。同じ報告は、健康な成人15名に3分以内の入浴をしてもらった別の研究を引用していて、15名中2名で入浴後に施設基準値を超えるCK上昇があったという。つまり推奨の3分以内でも、筋肉の負荷はゼロではない

もうひとつが、植込み型除細動器(ICD)の誤作動。2024年から2026年にかけて、独立した3つの医療機関から3例が英語誌に報告されている。80歳男性(ICD、2024年)、50歳男性(皮下植込み型のS-ICD、2026年)、73歳男性(S-ICD、2026年)。いずれも電気風呂の微弱な電流をICDが心室細動(致死性の不整脈)と誤って認識し、不要な電気ショックを作動させたという同じ現象だ。2例目の報告は、患者本人が事前にリスクを知っていても誤作動は起こりうるとして、患者だけでなく浴場の運営者にも周知すべきだと結んでいる。なお、聖路加の症例報告が引用する2008年の国内学会抄録に、電気風呂で誤作動したICDの先行例が載っている。

だからペースメーカーやICDの人は入らない。これは私の意見ではなく、関係者の見解が全部一致している。ペースメーカーメーカーのフクダ電子は「電気風呂(低周波電流が流れている風呂)は、ペースメーカーの動作に影響を与えるため、利用は避けて下さい」。東京都浴場組合は「ペースメーカー等の医療器具をつけている人は絶対に入ってはいけません」。伊勢崎のゆま〜るの公式サイトにも「ペースメーカー等利用の方はご利用をお控えください」と注記がある。組合のコラムはさらに「心臓疾患をお持ちの方や妊婦さん、乳児や体調の悪い方も避けたほうがいいといわれています」と続けており、この言い回しのまま受け取っておきたい。

数字だけ見れば、電気風呂の最大10Vは家庭用コンセントの100Vの10分の1以下だ。健康な人が推奨どおりに入る前提で、公衆浴場の設備として1930年代から使われてきたものでもある。一方で、微弱でも体内の機器にとっては別の話になる。独立した3つの施設が同じ現象を報告している以上、怖がる必要はないが、条件は守る。

私の入り方と体感|子供の頃は飛び出した

私が初めて電気風呂に入ったのは子供の頃で、湯に沈んだ瞬間に飛び出した。あれを気持ちいいと思う日が来るとは、当時の私は想像もしていない。

今は高崎の湯都里で、腰に当てている。感触を言葉にすると、筋肉が勝手に縮んだり、叩かれたり揉まれたりするような感じ。ビリビリと痛いのではなく、腰の奥が自分の意思と関係なく動く。座り仕事で固まった腰には、これがちょうどいい。出るのはメーカー推奨内の3分以内と決めていて、長居はしない。

翌日はどうか。何もない日が多いが、筋肉痛になることがある。それが電気風呂のせいなのか、その日のサウナや運動のせいなのかは、私にはわからない。ただ、上で書いた「3分以内でも15名中2名でCKが上がった」という報告を、隣に置いておくだけにする。

前橋の七福の湯の内湯には、電気風呂が「弱」「強」と、腰・ふくらはぎに当てる用の1種を合わせた3種類の設定で置かれていた。初めてなら「弱」から試せる並びになっている。伊勢崎のゆま〜るは公式サイトによると炭酸源泉の浴槽の中に電気風呂を設置していて、温泉と電気の組み合わせは群馬では珍しい(こちらは未訪問なので公式記載のみ)。

歴史は短く|1933年の認可第一号と、東京の銭湯の約3分の1

起源には米国のケロッグ博士(コーンフレークの人)が考案したという説と、19世紀の英国やドイツの病院で行われていた電気治療が元だという説があり、どちらも「説」の域を出ない。日本では1933年に京都の銭湯・船岡温泉が国の許可を得て設置したものが正式な第一号で、現存最古とされる(大正後半には関西で広まっていたともいう)。同じ1933年、日本の医科器械の学会誌はドイツの「スタンゲル式電気浴」を翻訳紹介しているが、こちらは20〜40Vで1A前後を流し、医師の管理下で15〜30分入るという、今の銭湯の電気風呂とは電流の桁も使い方も違う代物だった。

普及の度合いで数えられるのは東京だけで、東京都浴場組合のサイトで「電気風呂」タグの付く銭湯は147件、都内の営業銭湯は約430軒(令和6年11月時点)なので、およそ3分の1にあたる(タグ付けは全数調査ではないので目安)。他の地域は、出典つきで数えられる資料を見つけられなかった。

群馬で電気風呂に入れる施設|公式記載4+私が入った2

公式サイトに「電気風呂」の記載がある4施設と、私が訪問記で確認している2施設をまとめた。施設側の説明文は引用符で示す。休業・改装はあり得るので、行く前に公式で確認してほしい(2026年9月時点)。

施設公式記載私が入った備考
天然温泉ゆらぶ桐生店桐生市○「電気風呂」大浴場に「ナノ炭酸泉・日替わり風呂・電気風呂・座り湯・水風呂・高温サウナ」
伊勢崎ゆま〜る伊勢崎市○「電気風呂」「ゆま~る炭酸源泉内に設置」。「ペースメーカー等利用の方はご利用をお控えください」の注記あり
天然温泉 湯楽部 太田店太田市○「アクアレビュー(電気風呂)」施設の説明は「電極から微量な電流を流し、体内の異常を調整して筋肉を収縮させます」
沼田健康ランド沼田市○「電気風呂」24時間営業。ジェットバス・気泡風呂・バイブラも併設
京ヶ島天然温泉 湯都里高崎市-(公式ページで該当語を確認できず)内湯に電気風呂とスーパージェットバス。訪問記
七福の湯 前橋店前橋市-(公式サイトに接続できず未確認)3種の設定あり(本文参照)。訪問記

まとめ|効果は期待しない、それでも3分だけ入る

電気風呂の効果を測った研究は、国内外のデータベースを探しても見つからなかった。業界団体は「とされている」と伝聞形で書き、査読論文は「裏づける証拠はない」と書き、メーカーは「お楽しみいただく装置」と書く。三者の言い分は、よく読むと一致している。

代わりに、安全側の条件ははっきりしている。1回3分以内・1日2〜3回。ペースメーカーやICDの人は入らない。心疾患や妊娠中、体調の悪いときも避ける。長湯をすれば筋肉が壊れることがある。それだけ守れば、腰の筋肉が勝手に動く3分間は、私にとって十分に気持ちいい。効くから入るのではなく、気持ちいいから入る。温泉の効能について同じ物差しで考えた記事が温泉の効能はどこまで本当?。水風呂の論文を同じ型で読んだのが水風呂は心臓に悪い?。自宅で腰に電気を当てるならEMSで、そちらはSIXPADのレビューに書いた。同じ湯都里のスーパージェットバスについて、噴流あり・なしを比べた研究を読んだのがジェットバスは効くのか

よくある質問

Q. 電気風呂は肩こりや腰痛に効きますか?
A. 効果を検証した研究は、医中誌WebでもPubMedでも見つかりませんでした(2026年9月時点)。東京都浴場組合は、筋肉の収縮と温熱・水圧の相乗で肩こりや筋肉痛などの緩和が期待される「とされている」と伝聞形で説明しており、2024年の査読論文も「裏づける証拠はない」と書いています。効くかどうかは証明されていない、が現状の答えです。

Q. 電気風呂には何分まで入っていいですか?
A. メーカー(小西電機・神戸メディケア)の推奨は「1回3分以内、1日2〜3回」で、長風呂は避けるよう明記されています。2日間で合計90分入った男性が横紋筋融解症で入院した症例報告があり、3分以内でも血液中のCK値が上がった人がいたという報告もあります。

Q. ペースメーカーやICDが入っていても電気風呂に入れますか?
A. 入らないでください。ペースメーカーメーカーのフクダ電子は「利用は避けて下さい」、東京都浴場組合は「絶対に入ってはいけません」としており、2024〜2026年には電気風呂の電流でICDが誤作動して不要な電気ショックが起きた症例が3件報告されています。

Q. 子供は電気風呂に入れますか?
A. 東京都浴場組合は乳児や体調の悪い人は避けたほうがいいとしています。それ以上の年齢については各施設の注意掲示に従ってください。厚生労働省の管理要領で、電気浴器には入浴上の注意を掲示することが求められています。

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