平日の午前、猿ヶ京温泉の道沿いにある小さな農家民宿の引き戸を開けて、手前の売店で550円を払いました。「お風呂どうぞ」と通された浴室には、だれもいません。結局その日は、最後までひとりきり。白いタイルの浴室に、湯口からあふれる音だけが響いていました。
ここ「温泉農家民宿はしば」は、宿泊もできる農家民宿でありながら、日帰りでふらっと立ち寄れる一湯です。しかもただのかけ流しではありません。純温泉協会の「純温泉A」に認定された、加水も加温も循環もしていない正真正銘の源泉かけ流し。それを裏づけるのが、湯口にびっしり育った析出物(温泉成分が固まって結晶になったもの)でした。
この記事では、はしばがどんな温泉なのか――550円で独り占めできるかけ流し、湯口の析出物、そして「全部かけ流し」が本当かどうかまで、実際に立ち寄ってわかったことを正直に書いていきます。

先に結論:550円で入れる、本物のかけ流しを独り占め
長くなるので先に要点を。
- 加水・加温・循環ろ過・入浴剤・塩素消毒のどれも「なし」=完全な源泉かけ流し(法定掲示で確認)
- 純温泉協会の「純温泉A」認定=第三者の基準をクリアした、お墨付きのかけ流し
- 湯口には白い析出物がこんもり。手を加えていない“源泉そのもの”が出ているしるし
- 泉質はナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物温泉。無色透明・ほぼ無臭で、湯口は熱め
- 平日の午前は空いていることが多く、タイミング次第で貸切級
| 項目 | データ |
|---|---|
| 料金 | 大人550円(小人300円)※PayPay可 |
| 営業 | 8:00〜18:00が目安(※時間表記にゆれあり・後述) |
| 定休 | 不定休(行く前に電話確認が安心) |
| 泉質 | ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物温泉(弱アルカリ性・低張性・高温泉)/pH7.8 |
| 湯使い | 完全かけ流し(加水・加温・循環ろ過・入浴剤・消毒すべてなし) |
| 浴室 | 男女別の内湯のみ(露天なし)。シャンプー・リンス・ドライヤーあり |
| アクセス | 群馬県みなかみ町猿ヶ京温泉1093/電話 0278-66-0153 |
「猿ヶ京で、肩ひじ張らない場所のかけ流しを、できれば静かに」――そういう人にはかなり刺さる一湯だと思います。
温泉農家民宿はしばとは|売店で受付する、気取らない立ち寄り湯
はしばは、群馬県みなかみ町の猿ヶ京温泉にある農家民宿です。宿泊もやっていますが、日帰り入浴も受け付けていて、入浴料は大人550円。今どきうれしいことに、支払いはPayPayも使えました(現金のみではありません)。
受付は、玄関を入ってすぐの売店スペース。観光地の大きな日帰り施設のような券売機はなく、人に声をかけて払うスタイルです。リピーター向けにポイントカードもあって、5回入ると1回無料。地元の常連さんに愛されている雰囲気が伝わってきます。

浴室は、男女別の内湯がひとつずつ。露天風呂はありません。でも、はしばの主役は景色ではなく、湯そのものです。
「全部かけ流し」は本当か|法定掲示で確かめる
温泉ブログをやっていると、「源泉かけ流し」という言葉ほどアテにならないものはない、と感じる場面がよくあります。看板に大きく書いてあっても、実際は循環ろ過(同じお湯をろ過して使い回すこと)や塩素消毒をしている施設は珍しくありません。
そこで頼りになるのが、浴室に必ず掲示されている「温泉利用状況」です。法律で表示が義務づけられた、いわばお湯の成績表。はしばの男湯のものを書き写すと、こうでした。
- 加水:していません
- 加温:していません
- 循環ろ過装置:使用していません
- 入浴剤:入れていません
- 消毒:浴槽水を一日おきに完全に入れ替えて浴槽を清掃しているため、塩素系薬剤は使用していません

つまり、加水も加温も循環もなし。塩素消毒もしない代わりに、お湯を一日おきに全部抜いて浴槽を洗うという、手間のかかるやり方で清潔を保っています。湯に塩素のにおいがしないのは、そのためです。源泉に極力手を加えない――これは胸を張って「本物のかけ流し」と言っていい湯使いです。
「純温泉A」って何?|第三者が認めたかけ流し
はしばがすごいのは、これを自己申告で言っているだけではない点です。純温泉協会という団体の「純温泉A」に認定されています。
純温泉Aは、「加水なし・加温なし・循環ろ過なし・消毒なし・入浴剤なし」をすべて満たした温泉だけに与えられる、第三者のお墨付き。施設が自分で「かけ流しです」と言うのとは重みが違います。全国でも認定施設はそう多くありません。法定掲示の内容とも、ぴったり一致していました。
湯口の析出物が、何よりの証拠
かけ流しが本物かどうかは、言葉よりも湯口を見ればわかります。はしばの湯口には、さきほど触れた白い析出物が、こんもりと盛り上がっていました。

これは、新鮮な源泉が長いあいだ注がれ続けてきた証拠です。循環ろ過を繰り返す湯では成分が薄まり消耗していくため、これほどの析出物はなかなか育ちません。源泉が毎分まとまった量で湯船に直接注がれ、あふれた分は惜しげもなく流れ出ていく。その“かけ流しの時間”が、目に見えるかたちで固まっているわけです。

泉質はナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物温泉
浴室に掲示されていた温泉分析書から、泉質を読み解いてみます。
- 泉質:ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物温泉(弱アルカリ性・低張性・高温泉)
- 源泉:猿ヶ京源泉1号井戸と2号井戸の混合泉/源泉温度53.7℃・pH7.8
- 主な成分:ナトリウム・カルシウムと、硫酸イオン・塩化物イオンが主役(成分総計 約1.33g/kg)。メタけい酸も74.5mg含む
見た目は無色透明で、湯口に顔を近づけても匂いはほとんど感じませんでした。硫酸塩泉(硫酸イオンが主成分の温泉のこと)には、ナトリウム主体の芒硝(ぼうしょう)泉やカルシウム主体の石膏(せっこう)泉と呼ばれるタイプがあり、独特の香りを持つものもありますが、この日のはしばはクセがなく、すっきりした湯でした。
以前に大分で入った炭酸鉄の茶色いにごり湯とは正反対で、見た目に派手さはありません。それでも、メタけい酸は74.5mgと、目安とされる50mg/kgを上回る量。地味な見た目に反して、中身はしっかり詰まった湯です。
効能についても触れておきます。はしばの湯は温泉法でいう「療養泉」に当たるため、適応症(入浴による効果が期待されるとされる症状)を引用できます。環境省の基準では、こうした硫酸塩・塩化物泉の浴用適応症として、きりきず・やけど・慢性皮膚病・動脈硬化症などの泉質別の症状と、神経痛・筋肉痛・関節痛・疲労回復・健康増進などの一般的な症状が挙げられるとされます。ただし効果には個人差があり、適応症として挙げられているのは、あくまで一般論です。発熱しているときや体調がすぐれないとき、重い心臓・呼吸器・腎臓の病気がある場合などは入浴を避ける、という禁忌(避けたほうがよい状態)もセットで覚えておくと安心です。
【体験レビュー】42℃の浴槽、48℃の湯口|平日午前はほぼ貸切
湯船につかると、体感でだいたい42℃ほど。長湯しすぎず、それでいてしっかり温まる、ちょうどいい湯加減でした。ただし湯口から出てくる源泉は体感48℃くらいで、かなり熱め。源泉53.7℃が、湯口から浴槽へ届くあいだに少し下がる――加水で薄めていないからこその、自然な熱の伝わり方です。熱いのが苦手な人は、湯口から離れた場所につかるといいと思います。

驚いたのは、浴室全体がとても綺麗だったこと。脱衣所の脇には高圧洗浄機(ケルヒャー)が置いてあって、これでこまめに洗っているのだと納得しました。掲示にあった「一日おきの完全換水」が言葉だけでないことを、この機械が物語っています。受付まわりの素朴な雰囲気からは想像できないほど、手をかけて保たれた浴室でした。

平日の午前ということもあり、入っているあいだ、ほかのお客さんは来ませんでした。私はふだん露天で外気に当たってクールダウンするのが好きな質ですが、これだけ濃い湯なら内湯だけでも十分に満たされます。猿ヶ京の日帰り温泉のなかでも、源泉そのものをこれだけ静かに味わえる場所は、そう多くありません。550円とは思えない贅沢でした。
料金・アクセス・日帰り入浴の注意点【猿ヶ京・はしば】
- アクセス:群馬県みなかみ町猿ヶ京温泉1093。関越道・月夜野ICから車で約20〜25分。猿ヶ京温泉街のなかにあります。電話 0278-66-0153
- 料金:大人550円・小人300円(PayPay可)。タオルは持参が基本ですが、歯ブラシ付きタオルやバスタオルレンタルの用意もあります(設備の有無は上の表のとおり)
行く前に知っておくといいこと👇
- 営業時間は「8:00〜18:00」が目安ですが、案内サイトによって終了時刻の表記にゆれがあります(受付時間と料金は下のFAQも参照)
- 定休は不定休。農家民宿なので、訪問日に開いているかは事前に確かめておくと空振りがありません
- 標高のある猿ヶ京エリアは、冬はスタッドレスタイヤやチェーンが必須。大雪のときは国道17号・三国峠が夜間通行止めになることもあります
- 湯口の源泉は熱め。環境省の入浴指針でも、入浴前のかけ湯と、熱い湯で長湯をしすぎないことがすすめられています
湯上がりの一杯と一日プラン
はしばは猿ヶ京温泉街のなかにあるので、湯上がりは月夜野・たくみの里方面へ下りて食事をするのが気持ちのいい流れです。この日は月夜野の手打ち蕎麦店守藏(まもぐら)へ立ち寄りました。打ちたての蕎麦と、静かに楽しんだかけ流し。半日でも、しっかり“群馬の源泉と里の味”を満喫できる組み合わせです。
同じ猿ヶ京エリアには、野天をひとり占めできる長生館もあります。あわせて回れば、猿ヶ京のかけ流しを二湯はしごする一日もつくれます。
よくある質問(FAQ)
Q. はしばの日帰り入浴料は? A. 大人550円・小人300円です(PayPayも使えました)。一部の案内サイトでは500円と出ていることもあるので、念のため当日ご確認を。
Q. 予約は必要? A. 日帰り入浴は予約不要で立ち寄れます。ただし不定休なので、訪問日に営業しているかを事前に電話(0278-66-0153)で確かめると安心です。
Q. 日帰りの受付時間は? A. 8:00〜18:00が目安です。案内サイトによって終了時刻に幅があるため、閉店間際に行くなら電話で当日の受付時間を確認してから向かうのが確実です。
まとめ|550円で味わう、純温泉A認定のかけ流し
加水も加温も循環も消毒もしない、完全な源泉かけ流し。第三者の「純温泉A」認定と、湯口に育った析出物が、その確かさを示しています。はしばは、湯を一切いじらずに味わわせてくれる、静かな名湯でした。
露天や眺望を求める湯ではありません。でも、平日の午前に550円で源泉かけ流しを静かに味わいたいなら、まず筆頭に挙げたい一湯です。猿ヶ京で本物のかけ流しを探しているなら、候補に入れて損はありません。
▼ はしばのある みなかみ町・猿ヶ京 を、ふるさと納税で応援する
温泉農家民宿はしばがある みなかみ町(猿ヶ京エリア)は、ふるさと納税の返礼品や感謝券が充実しています。猿ヶ京・月夜野まわりの温泉宿や特産品もあり、寄付でみなかみ町を応援しながら、次の温泉ドライブにも活かせます。
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本記事は日帰りで立ち寄った一個人の記録です。泉質や効能は温泉分析書・掲示に基づきますが、効果には個人差があります。料金・営業・設備は変更されることがあるので、おでかけ前に電話などでご確認ください。



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