冒頭リード
群馬県みなかみ町、月夜野温泉郷の上牧(かみもく)温泉に建つ月がほほえむ宿 大峰館(おおみねかん)。1階の帳場にはこんな張り紙が立てかけてあります。
当館にはかぎつきロッカーなどはございません。 皆様でだいじにだいじに、大切に使っていただきたいので…
日帰り入浴は11時から、90分1000円。前日に電話で予約も会員登録もいらない、ふらりと立ち寄れる山あいの旅館の風呂です。けれど浴室の壁に額装されているのは、群馬県知事印付きの「成分に影響を与える項目の掲示事項(浴用)」。加水・加温・循環装置・入浴剤・消毒処理の5項目すべてに、肉筆で「行っていません」と書かれた完全かけ流しでした。
そして浴室入口にもう一枚、館主直筆の木製説明板が立っています。
一、この温泉は当館敷地内から湧出した43.3℃の天然です 一、この温泉は加熱はしていません 一、この温泉は薄めていません 一、湯量が多いので循環はしていません 自然の恵みです 館主
公的な掲示と、館主の手書き。この2枚の文言が同じ方向を向いて重なる温泉宿は、率直に少ない。しかも11時開店の直後に到着すれば、月見大浴場を実質貸切で使える可能性が高い。温泉マニアで「染まってない一軒」を探している方への記録です(取材は2026年5月時点)。
基本データ


| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名 | 月がほほえむ宿 大峰館(つきがほほえむやど おおみねかん) |
| 館主 | 石坂 欣也(分析書申請者名) |
| 所在地 | 群馬県利根郡みなかみ町石倉229 |
| アクセス | 関越自動車道 水上IC(みなかみ町水上)から車で約3分(最寄り、公式表記)/月夜野IC からも車で約10分/JR上越線 上牧(かみもく)駅から徒歩約12分/上越新幹線 上毛高原駅から車で約10分 |
| 駐車場 | 無料・約20台 |
| Googleマップ | 月がほほえむ宿 大峰館を開く ↗ |
| 日帰り入浴料 | 大人 1,000円(90分目安) |
| 営業時間 | 11:00〜18:00頃(現地看板「11じから18じすぎ」表記。日本温泉協会データでは11:00〜19:00、ニフティ温泉では11:00〜17:00(閉館18:00)と情報源により表記揺れ、訪問前に電話で要確認) |
| 定休日 | 不定休(電話で要確認) |
| 電話 | 0278-72-3329 |
| 公式 | https://www.oominekan.jp/ |
| 湯使い | 完全源泉かけ流し(加水・加温・循環装置・入浴剤・消毒処理の5項目すべて公式掲示「行っていません」) |
| 源泉名 | 大峰の湯(上牧温泉) |
| 泉質分類 | ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉(療養泉区分:低張性・弱アルカリ性・高温泉) |
| 湧出温度(館主直筆木板・本文) | 43.3℃ |
| 採取地での温度(分析書) | 42℃(気温9.0℃時測定) |
| 浴槽到達温度(館主直筆木板・右上小書き/公式/ニフティ) | 43.3〜43.5℃帯で一致 |
| pH | 7.72(弱アルカリ性) |
| 溶存物質 | 1,559 mg/kg / 成分総計 1,561 mg/kg |
| 浴槽 | 月見大浴場(男女別固定)。掛け湯+内湯(緑タイル石床+木枠浴槽4〜6人サイズ・洗い場4席)+露天(石組み・石灯篭の箱庭風)/貸切風呂なし |
| サウナ | なし |
| 飲泉 | 可(複数の宿泊レポートで確認) |
| ロッカー | 鍵付きロッカーなし(貴重品は自己管理) |
| 脱衣所トイレ | あり(脱衣所内に完備、入浴中の出入りが楽) |
| 訪問日 | 2026年5月17日(日)11:00ごろ 日帰り入浴 |
1. 館主直筆の木板と、群馬県知事印の公的掲示が一致する


大峰館を語るうえで最初に持ってきたい2枚が、上の写真の組み合わせです。
左:浴室入口の木板に、館主の石坂さん直筆で「当館敷地内から湧出した43.3℃の天然」「加熱していません」「薄めていません」「湯量が多いので循環はしていません 自然の恵み」と4行。書き手は最後に「館主」と一行。さらに板の右上隅にも「43.3℃」と小さく追記されていて、本文の数字とぴったり一致します。これは湧出温度=浴槽到達温度がほぼ同じ43.3℃であることを、館主が同じ板の中で念入りに明示している証です。
右:浴室内に額装された、群馬県の登録分析機関が発行した「成分に影響を与える項目の掲示事項(浴用)」。報告書No. A2115844-001、2022年4月6日付。加水・加温・循環装置の使用・入浴剤の使用・消毒処理の有無、5項目すべての「該当の有無」欄に肉筆で「行っていません」と書かれています。
館主の手書きと、第三者機関の公式掲示。たいていの源泉かけ流し宿は、公式掲示はあっても館主直筆の説明板までは出していないし、館主の言葉があっても公的掲示は古いまま、ということが多い。大峰館はどちらも揃って、しかも文言がほぼ完全に一致しています。
公式サイトでも明記されています。「循環しないのはもちろんのこと、加温も加水もすることなく『天然温泉』そのままを掛け流しにしております」(大峰館公式 より引用)。
ここまで揃って1000円。温泉の成分の数値・湯使いの掲示・湯口の析出物を見るのが好きな人にとって、入る前から満足が始まる入口です。
2. 「人に会う率が少ない」一軒 — 11時開店アタックという選択肢


大峰館は、湯船に長く沈黙したい日、湯の風情を静かに味わいたい日に通いたくなる宿です。水上ICから車で3分というアクセスの良さのわりに、団体動線や観光ガイド系メディアにあまり乗っていないため、他客と鉢合わせしにくい。
日帰り入浴は11時から18時、90分1000円。回数券は14回1万円(地元の方のみ、と帳場に明記)。1時間1000円台が相場の日帰り温泉の中では平均的な値付けです。
この日は11時の開店直後に到着、脱衣カゴはすべて空、湯面はまったく揺れていない静止状態でした。日曜の11時はチェックアウトが済んで宿泊客の朝風呂利用も終わるタイミングで、看板が地味な大峰館は団体動線にも乗っていない——という条件が揃った日です。
リピーター10回以上のデータ:独湯率約7割
ただし、これは「狙い目の時間に当てた一回の結果」であって、いつでも独湯になるわけではありません。リピーターとしての過去10回以上の訪問データをざっくり並べると:
| 項目 | データ |
|---|---|
| 訪問回数 | 10回以上(過去数年で累積) |
| 独湯だった回 | 約7割(10回中およそ7回) |
| 他客(1〜2人)と居合わせた回 | 約3割(10回中およそ3回) |
| 独湯確率がさらに高い動線 | 11時開店即アタック+90分以内に出る |
| 鉢合わせが起きやすい時間帯 | 開店11時を過ぎたあたり、日曜の昼時、平日でも夕方近く |
n=10+ の累積データで「独湯率約7割」——これが、大峰館を「人に会う率が少ない一軒」と呼べる物的根拠です。日帰り温泉施設で独湯率7割という数字は群馬県内でも飛び抜けて高く、水上IC3分・上牧駅徒歩12分というアクセスの良さを考えると驚くべき希少さ。
確率は時間帯と曜日で上下するので、「期待値高め、外れることもある」前提で訪問するのが現実的。それでも10回行って7回は他客と鉢合わせない——これが、湯船に長く沈黙したり、湯の風情を静かに味わいたい日にこの宿を選び続ける理由です。
帳場の張り紙にはこう書かれています。
当館にはかぎつきロッカーなどはございません。皆様でだいじにだいじに、大切に使っていただきたいので…
鍵付きロッカーがないのが、昔ながらの旅館で設備更新を控えてきた結果か、客層を絞った設計の結果かは断定できません。ただ結果として、信頼ベースで運用されている宿の空気は脱衣所の佇まいに滲んでいます。観光地的な装飾は一切なく、写真のとおりの簡素な前室です。
地味だがありがたい:脱衣所内にトイレ完備
地味だがありがたいのが、脱衣所内にトイレがあること。90分の入浴時間、湯あたりや長湯のあとに、わざわざ服を着て脱衣所の外に出る必要がない動線は、想像以上に快適です。古い旅館では脱衣所外(廊下や受付近く)にしかトイレがない宿も多いので、この一点だけで90分の体感が変わります。
余談:日曜の昼に旦那が湯船に入ってくることがある
90分の利用時間のうち、内湯と露天をゆっくり巡って湯口の析出物を眺めていたら、しばらく経って旦那さん(おそらく館主)が脱衣所に入ってきました。日帰り客とすれ違うタイミングで自分も入りに来た、という風情。挨拶を交わして、お互い別の浴槽に静かに浸かる。鍵付きロッカーがない宿の運営感が、こういう瞬間に立体化します。
他客と鉢合わせる代わりに、館主と湯船で並ぶ。日曜の昼にこの宿に通うときの確率分布の一つです。
3. 月見大浴場 — 掛け湯・内湯・石灯篭の露天

月見大浴場は男女別固定。今回入った側の浴室の構成は、入口の掛け湯 → 内湯(洗い場4席+大きな浴槽) → 石灯篭の露天という流れです。
浴室に入って最初に目に入るのが、入口の掛け湯(写真)。木造の小さな湯桶に温泉が満たされ、上に手桶が置かれて、シャワーチェアと並んでいます。本格的な内湯に入る前に、ここで体を流して湯温に身体を慣らすのが大峰館流。かけ湯専用に新鮮な源泉を満たしている贅沢な造りで、湯口の木にも白い析出物が薄く付き始めているのが分かります。

内湯本体は、緑のタイルを敷き詰めた石床に、木枠の浴槽。左手に洗い場が4席ほど並び、右手の大きな窓越しにそのまま露天が見える開放的な造り。浴槽は4〜6人サイズで、内湯と露天が視覚的に繋がる設計が「月見大浴場」の名に相応しい広がりを生んでいます。
湯面は無色透明、湯口に顔を近づけると分析書記載のとおり硫化水素系のかすかな卵臭を感じます。pH 7.72の弱アルカリ性ですが、pH 9超のアルカリ性単純泉(島根・美又温泉pH 9.9などが代表)ほどの強いぬるすべ感はなく、ぬるすべに寄与する炭酸水素イオン(HCO₃⁻、湯のなめらかさを作るアルカリ系成分)も38.5 mg/kgと少なめ。代わりに塩化物・硫酸塩主体の「軟らかいけれど引き締まる」湯触りで、温まりに芯のあるタイプです。


露天は石組みの浴槽で、石灯篭と竹垣と植栽が組まれた箱庭風の造り。屋根がしっかりかかっていて、雨の日でも問題なく入れます。湯船の縁は岩組、底は石板。新緑の季節は青葉が屋根の隙間から落ちてきて、湯面に小さな影を作ります。
「月見」を名乗るだけあって、設計のキーは借景と空の抜け。屋根の切り欠きが上向きに開いていて、夜に入れば実際に月が見える角度です(口コミでも「塀で囲われており景色は見えないが、夜には月がよく見える」と複数ソースで確認)。
湯口には館主直筆の木板が立てかけられていて、「湯量が多いので循環はしていません 自然の恵みです」の文言を、湯気と湯音の中で読みながら浸かれるのが、この浴室体験の核心です。
座り仕事で凝り固まった腰には、43℃前後の硫酸塩泉が驚くほど効きます。取材日(5月17日)は外気30℃という暑い一日、露天で外気にあたって汗を引かせてから再度内湯に戻る温冷交代を2セット回すと、湯上がりの軽さがまったく違います。
4. 湯口の白い析出物 — 何年もかけ流してきた時間の刻み


源泉かけ流しの物的証拠を、湯口の周辺から拾います。
上の写真:内湯の湯口。木枠と支えの石に、真っ白な結晶が厚く付着しています。湯口から1cmほどの厚みで、層状に成長した跡が見えます。分析書のCa²⁺ 222.9 mg/kg・SO₄²⁻ 613 mg/kgが主成分であり、対するHCO₃⁻は38.5 mg/kgと少ないため、析出物の主体は硫酸カルシウム系(CaSO₄、いわゆる石膏類)と読めます。HCO₃⁻濃度から見て炭酸カルシウム(CaCO₃)は副次的、主成分はCaSO₄系で間違いありません。
下の写真:湯口の縦構図、寄りのカット。湯が勢いよく落ちて、着水点に白い湯の華が円形に広がる瞬間。継続的にこの量の湯が落ち続けているからこそ、湯口周辺にカルシウム系の析出物が層状に育つ——時間が刻んだ造形を読み取れます。
掲示の数値で言うとこうです(分析書 2022年3月測定):
- 溶存物質(ガス成分のものを除く)1,559 mg/kg
- Ca²⁺ 222.9 mg/kg
- SO₄²⁻ 613 mg/kg
- Cl⁻ 312.2 mg/kg
- Na⁺ 288 mg/kg
- HCO₃⁻ 38.5 mg/kg
- メタけい酸 49.2 mg/kg
溶存物質1.5g/kg台、硫酸イオン613mg/kg台というのは、「派手ではないけれど確実に成分が濃い」湯の典型値。湯口の析出物の厚みが、この数値の累積を可視化しています。
参考までに、過去に訪ねた島根の温泉津(ゆのつ)薬師湯(ナトリウム-カルシウム-塩化物泉、世界遺産・石見銀山の歴史湯)と並べると以下のような対比になります:
| 項目 | 大峰館(みなかみ) | 温泉津 薬師湯(島根) |
|---|---|---|
| 源泉温度 | 42℃(採取地) | 45.3℃ |
| pH | 7.72(弱アルカリ性) | 6.4(中性) |
| Na⁺ | 288 mg/kg | 2,100 mg/kg(約7倍) |
| Ca²⁺ | 222.9 mg/kg | 529 mg/kg(約2.4倍) |
| SO₄²⁻ | 613 mg/kg | (硫酸塩あり、薬師湯側数値非公開) |
| 溶存物質/総成分 | 1.559 g/kg | 8.1 g/kg(約5倍の濃度) |
温泉津は同じ「ナトリウム-カルシウム-塩化物泉」ファミリーだが、塩化物濃度が大峰館の数倍以上で、湯口の析出が世界遺産級の塊状に育っている桁違いの濃い湯。中国・九州系の濃い湯に慣れた身からすると、大峰館は「温泉津の約1/5の濃度で、塩化物の塩気は穏やか、硫酸塩の温まりが主役」という穏やかなキャラクター。それでも群馬の山間としては成分が濃いめで、湯口の析出が立体的に育っている一軒として印象に残ります。
5. 源泉データ — 大峰の湯(上牧温泉)の正体

浴室の壁に額装された温泉分析書(報告書 No. A2115844-001、2022年4月6日付)から、データを整理します。この分析書本体(1.源泉名及び湧出地 → 源泉名「大峰の湯(上牧温泉)」と明記)が、本記事で使う源泉名の出典です。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 源泉名 | 大峰の湯(上牧温泉) |
| 申請者 | 石坂 欣也(大峰館 館主) |
| 湧出地 | 群馬県利根郡みなかみ町石倉229(宿と同所) |
| 採取年月日 | 2022年3月8日 |
| 採取地での温度 | 42℃(気温9.0℃時) |
| 湧出量 | 分析書記載なし |
| 知覚的試験 | 無色澄明、微硫化水素臭 |
| pH | 7.72 |
| 電気伝導率 | 96.4 mS/m |
| 溶存物質 | 1,559 mg/kg / 成分総計 1,561 mg/kg |
| 泉質分類 | ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉(療養泉区分:低張性・弱アルカリ性・高温泉) |
| 利用許可 | 平成9年(1997年)11月28日 第60号 群馬県知事 |
分析書記載の温泉利用許可(平成9年=1997年・第60号 群馬県知事)から、この許可取得から約29年。湯口の析出物が層状に成長している年代物感も、この年数で腑に落ちます(許可番号は分析書下部に記載)。
温泉法上の温度区分で「高温泉」(源泉温度42℃以上)に分類される湯ですが、体感では40℃台前半で長湯しやすい温度。湯口直下と浴槽中央で温度差があるので、好みの位置を選べます。
温度データのソース別整合
館主直筆の木板(本文)「43.3℃の天然」、板右上の小書き「43.3℃」、分析書の「採取地42℃(気温9.0℃時)」、公式サイトの「約43℃」、ニフティ温泉の「源泉43.3〜43.5℃」。すべてが42〜43.5℃の範囲に収まる、見事に整合した温度プロファイルです。
- 公式サイト:「約43℃の天然温泉」
- ニフティ温泉施設情報:「源泉43.3〜43.5℃」
- 現地分析書本体:「採取地42℃(気温9.0℃時)」
- 館主直筆木板(本文):「43.3℃」
- 館主直筆木板(右上小書き):「43.3℃」
湧出時から浴槽到達まで42〜43.5℃で一貫。源泉が宿のすぐ敷地内で湧出するため、配管経路が短く温度がほぼ落ちないのが特徴です。加水・加温なしでこの温度に着地するため、温泉本来のキャラクターが浴槽でそのまま体験できます。
ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉は群馬県内では比較的少ないタイプで、伊香保(炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物の混合)や草津(酸性硫黄)とは明確に違うキャラクター。「軟らかさと温まりの両立」が硫酸塩・塩化物系の持ち味で、湯上がりに肌がしっとりとして、芯の冷えが取れる感覚が長く続きます。
6. 適応症・禁忌症と入浴方法(分析書別表より)
浴室の壁に額装された温泉分析書別表(浴用)(同じく報告書No. A2115844-001、2022年4月6日付)には、環境省自然環境局長通知(平成26年7月1日 環自総発第1407012号)に基づく適応症・禁忌症と入浴上の注意が明記されています。以下は原文ベースの転記です。
浴用の適応症
一般的適応症(療養泉一般):
筋肉若しくは関節の慢性的な痛み又はこわばり(関節リウマチ・変形性関節症・腰痛症・神経痛・五十肩・打撲・捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽い高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進
泉質別適応症(ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉として):
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
座り仕事の腰痛・冷え性・末梢循環障害——いずれも自分の身体に直接効く適応症が並んでいます。湯上がりに「芯の冷えが取れる感覚が長く続く」体感は、泉質別適応症の「末梢循環障害」「冷え性」と整合的でした。
浴用の禁忌症
一般的禁忌症:病気の活動期(特に熱のあるとき)、活動性の結核、進行した悪性腫瘍又は高度の貧血など身体衰弱の著しい場合、少し動くと息苦しくなるような重い心臓又は肺の病気、むくみのある重い腎臓の病気、消化管出血、目に見える出血があるとき、慢性の病気の急性増悪期。
泉質別禁忌症:特になし(分析書原文ママ)。
入浴方法と注意
分析書別表より要約:
- 入浴温度:高齢者・心肺機能の低下している人は、全身浴より半身浴または部分浴が望ましい
- 入浴回数:1日あたり初めは1〜2回、慣れてきたら2〜3回まで
- 入浴時間:1回あたり3〜10分程度、慣れてきたら15〜20分まで延長してもよい
- 入浴前:食事直後・直後及び飲酒後の入浴は避ける、過度の疲労時は身体を休める、運動後30分程度は身体及び呼吸を休める
- 入浴後:温泉成分を保つため、温水で洗い流さず、タオルで水分を拭き取り保温と30分程度の安静をこころがけること(脱水症状の懸念があればコップ一杯程度の水分補給を)
「入浴後に温水で洗い流さない」のは硫酸塩・塩化物温泉の効能を肌に残すための定石で、43℃前後の温度ともよく整合します。日帰り90分1000円の枠内でも、これだけ守れば療養泉としての価値を取りこぼしません。
7. 料金・持ち物・飲泉所と自家製味噌
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日帰り入浴料 | 大人 1,000円(90分目安) |
| お手ぬぐい | 200円 |
| バスタオル | 1,500円 |
| 大バスタオル | 2,000円 |
| 回数券 | 14回 10,000円(地元の方のみと明記) |
| 食事 | 田舎風会席(要事前予約) |
| 物販 | 自家製味噌(300g 500円/500g 800円台・帳場で) |
タオル類は持参を推奨します。貴重品の扱いは前述のとおり自己責任。
帳場には自家製の味噌(300g 500円/500g 800円台)が並んでいて、宿泊客にも好評との張り紙が添えられています。地元の大豆を使った手作り味噌で、湯の物販ではない宿のもうひとつの顔。田舎風会席の夕食にも、この自家製味噌の味噌汁や味噌料理が組み込まれるようで、入浴帰りに1本買って帰ると、家での味噌汁に大峰館の余韻が残ります。
入口前の飲泉所

宿の入口前、屋根のついた一角に、手水鉢のような石の容器に湯口から細く源泉が落ちる飲泉所があります。借景に山、木製の柵、写真のとおり絵になる場所。大峰館の温泉は飲泉可で、湯あがり後に一口含むと土地の塩気と硫化水素系のかすかな卵臭が舌に残ります(口に含む量は控えめに、体調に応じて)。
8. アクセスと、上牧温泉の位置づけ
大峰館がある上牧温泉は、利根川沿いに点々と続く月夜野温泉郷のひとつで、関越道水上ICから車で約3分(公式表記、最寄りIC)。JR上越線上牧(かみもく)駅から徒歩約12分で、電車旅でも到達できる立地です。みなかみ町の中心部(水上駅周辺の温泉街)からは少し南、田園と山が同居するエリアにあります。
同じ上牧温泉エリアには他にも数軒の宿がありますが、大峰館の「敷地内から自噴」「館主直筆の説明板」「鍵付きロッカーなし」の組み合わせは、ここでしか味わえない佇まいです。
帰路は水上方面に北上すれば谷川岳と諏訪峡、南下すれば月夜野びーどろパーク・たくみの里などの観光動線にも繋がります。みなかみ観光の半日ルートに、「11時開店アタックで大峰館 → 12時半に上牧の蕎麦で〆る」という流れを組むのも現実的です(同日に取材した手打ち蕎麦の老舗 角弥 はこちらの記事で詳しくレポート)。
まとめ — 次に訪問するなら検証したいこと
大峰館の魅力は、データ・館主の言葉・湯口の物的証拠の3つが一直線に並ぶこと。そしてリピーター10回以上で独湯率約7割という、日帰り温泉施設としては群馬県内でも飛び抜けた静けさです。派手な看板も巨大な大浴場もサウナもありません。けれど、「染まってない一軒」「物的証拠で湯を選びたい」「鍵付きロッカーがない宿の静けさが分かる」タイプの温泉好きには、確実に刺さる宿でした。
次に訪問するなら検証したい3つ:
- 冬の月見露天 — 雪見と月見を同時に体験できる季節の湯触りはどう変わるか
- 田舎風会席の夕食付き宿泊 — 日帰りでは味わえない朝風呂と、自家製味噌を使った会席料理
- 館主との会話の機会 — 旦那(おそらく館主)が日曜の昼に湯船に入ってくる稀な瞬間、源泉や宿の運用についてもう少し聞いてみたい
日帰りで通うもよし、田舎風会席の夕食付きで一泊するもよし。水上IC3分・上牧駅徒歩12分という立地で、ここまで「本物」の濃度が高い湯はそう多くありません。
取材日: 2026年5月17日(日)11:00ごろ 日帰り入浴 支払: 1,000円(現金) 滞在時間: 約60分(90分以内)
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