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みなかみ 三峰の湯|pH9ヌルすべの源泉かけ流し【日帰り】

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正直に書くと、この湯は「行かないつもり」の候補だった。

みなかみの日帰り湯を洗い出していたとき、月夜野温泉「三峰(みつみね)の湯」には、こんなメモを付けていた。「レジオネラで塩素導入、かけ流しの核心は失われたっぽい。優先度は低い」。ネットの断片情報だけで、勝手にそう決めつけていた。

ところが小雨の日、別の湯の帰りにふらっと寄ってみて、その決めつけを引っ込めることになる。湯口からはドバドバと源泉が溢れ、肌はしっかりヌルつく。塩素を使っているはずなのに、匂いはまるで気にならなかった。中国地方に住んでいた頃に通った、広島・安芸太田町の月ヶ瀬温泉のあのヌルヌルを、久しぶりに思い出した。

先に結論だけ言っておく。塩素は入っても、「加水なし・加温なし・循環ろ過なし」というかけ流しの核心は、ちゃんと生きていた。 見送らなくてよかった湯だ。

みなかみ町営温泉センター「三峰の湯」の外観。飾り気ゼロの、いかにも町営という佇まい
みなかみ町営温泉センター「三峰の湯」の外観。飾り気ゼロの、いかにも町営という佇まい

場所・営業・料金(2026年7月時点)

まず実務情報から。行く前に知りたいところをまとめておく。

項目内容
施設名みなかみ町営温泉センター 三峰の湯
源泉名月夜野温泉 三峰の湯
所在地群馬県利根郡みなかみ町後閑2265
アクセス関越自動車道・月夜野ICから車で約13分(約4km)
営業時間10:00〜19:30
定休日毎月第3水曜・1月1日
電話0278-62-1022
入浴料みなかみ町民 400円/町外 600円(2026年7月値上げ。改定前は町民300円・町外400円)

料金は注意書きを添えておく。この施設は2026年7月に入浴料が値上げされた。改定前は町民300円・町外400円だったが、現在は町民400円・町外600円だ。旅行サイトに残る「一律400円」は、改定前の町外料金のまま止まっている可能性が高い。来館前に、みなかみ町公式か電話(0278-62-1022)で最新料金を確認するのが確実だ。

(※料金・営業情報は取材時点のもの。数字は変わりうるので、公式の最新情報を優先してください。)

豪華設備ゼロ、湯だけで勝負する町営温泉

建物は、良い意味でまったく期待を煽ってこない。プレハブ然とした平屋に「ゆ」ののれん。旧月夜野町の後閑地区で、山あいの地下から動力で汲み上げている源泉を使う、みなかみ18湯のひとつだ。

観光地の立派な日帰り施設とは真逆の、地元の人が回数券でふらっと来るタイプの公営温泉。露天も食事処も豪華ではない。だからこそ湯そのもので勝負している感じがして、こういう構えは個人的に好きだ。

この日は先客が数人いて、浴室内の撮影は控えた。なので浴室と湯口の様子は、雰囲気だけでも伝わるように、AIで描いたイメージイラスト(水彩)を添えておく。実在の浴室を写したものではない、という前提で眺めてほしい。

露天のヌルすべと、溢れ続ける湯

内湯と露天があって、良かったのは露天だ。

湯に入った瞬間の第一印象が「ヌルっ」。指の間を、湯が滑っていく。泉質はアルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)、pH9.0。いわゆる「ヌルすべ」「ツルツル」の浴感だ(※肌ざわりの話で、美肌効果を保証するものではありません。なぜヌルつくのかは後ほど詳しく)。口コミサイトを覗いても「にゅるにゅる」「県内屈指のツルスベ」といった声が並んでいて、体感は私の勘違いではないらしい。

※AIで描いたイメージイラスト(水彩)。混雑で浴室内を撮れなかったため、湯口から源泉がドバドバ溢れる雰囲気を表したもの。実在の浴室を写したものではありません
※AIで描いたイメージイラスト(水彩)。混雑で浴室内を撮れなかったため、湯口から源泉がドバドバ溢れる雰囲気を表したもの。実在の浴室を写したものではありません

そして特筆したいのが湯量。湯口から源泉が惜しげもなく注がれ、浴槽の縁からはザーザーと溢れていく。掲示されている温泉分析書によれば、源泉温度49.5℃、湧出量は毎分157リットル(動力揚湯)。この熱い源泉を、水で薄めず・沸かさず・循環させずに、そのまま流し込んでいる。だから縁のオーバーフローが途切れない。かけ流しの「新鮮さ」は、この溢れっぷりに出る。

温度は、内湯がやや熱め。館内の掲示にも「内風呂は約44.5℃以内、露天風呂は約42.5℃以内に設定します」とあった。熱い湯による健康被害(ヒートショック)に配慮して温度を抑えている、という趣旨だ。内湯はキリッと熱く、じっくり浸かるなら少しぬるい露天のほうが向いている。小雨の日は外気がひんやりして、42.5℃の露天がちょうどよく、気づけば長湯していた。露天で外気に当たりながらのクールダウンが好きな身には、この温度設定はありがたい。

余談だが、源泉湧出量の都合で各浴槽のシャワーは1つずつしかない(観光協会の案内より)。混む時間は洗い場待ちが出るかもしれない。豪華設備を求める場所ではない、と割り切って行くのが正解。

※AIで描いたイメージイラスト(水彩)。石組みの浴槽と窓の外の緑という、内湯の雰囲気を表したもの。実在の浴室を写したものではありません
※AIで描いたイメージイラスト(水彩)。石組みの浴槽と窓の外の緑という、内湯の雰囲気を表したもの。実在の浴室を写したものではありません

広島・月ヶ瀬温泉を思い出した

このヌルつきで、ふと思い出したのが広島県安芸太田町(加計)の月ヶ瀬温泉だった。中国地方に住んでいた頃に浸かった、「広島では珍しいヌルヌルする湯」として知られる一湯だ。分析値で並べてみると、群馬と広島で離れているのに、よく似た兄弟のような関係にある。

三峰の湯(群馬・みなかみ)月ヶ瀬温泉(広島・安芸太田町)
泉質アルカリ性単純温泉アルカリ性単純温泉
pH9.09.75
源泉温度49.5℃(高温泉)25.5℃(低温泉)
一般的適応症(療養泉共通)自律神経不安定症・不眠症・うつ状態同左

泉質はもちろん、掲示されている適応症(自律神経不安定症・不眠症・うつ状態)まで同じだった。ただしこの3つは環境省基準で療養泉すべてに共通して挙げられる「一般的適応症」なので、この2湯だけの共通点というわけではない。決定的に違うのは源泉温度だ。月ヶ瀬は25.5℃の低温泉だから沸かして使う。三峰は49.5℃で湧くから、沸かさず・薄めず、そのまま掛け流せる。 ヌルつきの強さならpHの高い月ヶ瀬、湯の鮮度(そのままかけ流し)なら三峰。似た者どうしでも、そこははっきり住み分けている。肌が「あの湯に近い」と反応したのは、たぶん間違っていなかった。

(※同じ「月ヶ瀬温泉」でも、奈良の梅の名所にある「梅の郷 月ヶ瀬温泉」はpH7.9の別施設。ここで言っているのは広島・安芸太田町のほうです。)

レジオネラ休館と塩素、それでもかけ流しは生きていた

さて、当初の私が引いていた理由、レジオネラと塩素の話を、事実だけ正直に書く。

三峰の湯は、レジオネラ属菌が基準値を超えて確認されたため2025年に臨時休館し、衛生管理対策を終えて2025年6月に営業を再開した(みなかみ町観光協会の告知による)。再開にあたっては「衛生管理のため塩素系薬剤を使用しております」と案内されている。地元の常連さんの口コミにも「以前は石の投入口から源泉をそのまま入れていた。今は少し塩素を入れている」という趣旨の声があった。

ここで大事なのは、「塩素を入れた=かけ流しをやめた」ではないということ。掲示の分析書には、はっきりこう書いてある。

  • 加水:していません
  • 加温:していません
  • 循環・ろ過装置:使用していません
  • 消毒:衛生管理のため塩素系薬剤を使用しています

つまり、水で薄めることも、沸かすことも、湯を回して使い回すこともせず、新しい源泉を流し続けたうえで、衛生管理として塩素を足している、という運用だ。私自身、塩素臭はまったく気にならなかった。あれだけ湯口から入れて縁から溢れさせていれば、新しい湯が絶えず入れ替わるぶん、匂いはこもりにくいのだろう。「塩素臭はなく良い湯」という口コミも複数あった。

もちろん、無消毒の頃を知る人にとっては物足りなさもあるだろう。そこは好みが分かれる。ただ、「核心が失われた」と切って捨てるのは行き過ぎだった、というのが実際に浸かってみた私の訂正だ。衛生管理と源泉の鮮度を両立させようとした結果の塩素であって、湯そのものの気持ちよさは十分に残っていた。

浴室に掲示された温泉成分分析書。「加水なし・加温なし・循環ろ過なし」がかけ流しの物的証拠。消毒欄に塩素系薬剤の使用が明記されている
浴室に掲示された温泉成分分析書。「加水なし・加温なし・循環ろ過なし」がかけ流しの物的証拠。消毒欄に塩素系薬剤の使用が明記されている
「入浴温度について」の掲示。内風呂約44.5℃/露天約42.5℃以内に設定、とある
「入浴温度について」の掲示。内風呂約44.5℃/露天約42.5℃以内に設定、とある

施設には「名湯認定証」なるものも飾ってあった。これは長野の民間ケーブルテレビ番組(伊那ケーブルテレビ「名湯の条件」)によるもので、公的な格付けではないので念のため。ただ、その”条件”のうち「100%の源泉掛け流し浴槽がある」「非加水・非加熱の源泉が注がれている」にチェックが入っているのは、掲示の分析書の内容とも符合していた。

施設に飾られていた「名湯認定証」。民間テレビ番組による非公式なもので、公的な格付けではない
施設に飾られていた「名湯認定証」。民間テレビ番組による非公式なもので、公的な格付けではない

成分メモ(pH9.0・単純温泉の”薄いのにヌル濃い”)

数字が好きな人向けに、掲示分析書(令和4年=2022年分析)から要点を。

  • 泉質:アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)
  • pH:9.0/源泉温度:49.5℃/湧出量:157L/分(動力揚湯)
  • 成分総計:0.36g/kg(=溶存物質は少なめの”単純温泉”)
  • 主なイオン:ナトリウム104.9mg/塩化物イオン90.3mg/炭酸水素イオン84.0mg/硫酸イオン18.0mg/炭酸イオン13.5mg
  • メタけい酸:38.6mg/メタほう酸:4.7mg

「単純温泉」というと味気なく聞こえるが、これは溶け込んだ成分の総量が1g/kgに満たないだけの話で、薄い=ぬるい・弱い、ではない。炭酸イオン(13.5mg)が検出されるのは、湯がしっかりアルカリ側(高pH)に寄っている表れ。そして、これだけ薄い湯がしっかりヌルつく理由は、次のセクションで。

なお、単純温泉も泉温が高ければ療養泉に分類され、掲示の分析書では一般的適応症(療養泉に共通)として自律神経不安定症・不眠症・うつ状態が挙げられている(※環境省基準による一般的な記載で、効果を保証するものではありません)。療養泉に共通の一般的禁忌(急性疾患・活動性の結核・重い心臓病などの活動期)は他の温泉と同じく当てはまるので、体調の優れないときは無理をしないこと。

ヌルヌルの正体は「成分」ではなく「アルカリ性」

ついでに、この湯がなぜヌルつくのかを整理しておく。意外だが、ヌルヌルは特定の”ヌル成分”が肌をコーティングして滑るわけではない。正体は、pHの高いアルカリ性の湯が、肌の皮脂と角質にわずかに働く「石けん様作用(鹸化:けんか)」だ。アルカリが皮脂と反応してごく薄い石けん状のぬめりを生む。つまり指を滑らせているのは、その一端が自分の皮脂の少し石けん化したもの、と思えばいい。だからヌルつきの強さを決めるのは、溶けている成分の”濃さ”ではなく”pHの高さ”だ。溶存0.36g/kgと薄い三峰がしっかりヌルつくのも、pH9.0のアルカリ性で説明がつく。よく”美肌成分”と呼ばれるメタけい酸や、炭酸水素イオン(重曹の成分)が主役ではない、というのがポイントになる。

ただし、このヌルつきは「角質が少しゆるんだ感触」であって、肌質が良くなった証拠ではない。健康な肌は弱酸性なので、強アルカリの湯で長湯すると皮脂を落としすぎて乾燥することもある。乾燥肌の人は長湯を控えめに、上がりは真水でさっと流すと安心だ(三峰はpH9.0とほどほどなので、そこまで神経質になる必要はないが)。

隣の「温泉スタンド」で持ち帰りもできる

うれしい発見がもう一つ。三峰の湯のすぐ隣には、同じ月夜野温泉 三峰の湯の源泉を持ち帰れる「温泉スタンド」がある。100リットル100円で、加水も加温もしていない源泉そのものを分けてもらえる(浴用)。家の風呂に足せば、あのpH9.0のヌルつきをもう一度楽しめる。もともと気に入った湯を持ち帰る”ブレンド入浴”をやる質なので、これは見逃せなかった。

使い方や持ち帰りの注意、群馬のほかの温泉スタンドは、南郷温泉しゃくなげの湯の温泉スタンド完全ガイドにまとめた。

こんな人におすすめ

  • ヌルすべ・ツルツルの湯が好きな人(pH9.0のアルカリ性単純温泉)
  • かけ流しの”溢れっぷり””新鮮さ”を重視する人(加水加温循環なし・毎分157L)
  • 観光地価格でなく、気軽に地元の湯に浸かりたい人(町営・日帰り)
  • 気に入った湯を家に持ち帰りたい人(隣の温泉スタンドで100L100円・浴用)
  • 逆に、豪華な露天や食事処、無消毒の完全ピュア湯を求める人には、たぶん物足りない

見送るつもりの湯に、こうして一本書いているのだから、決めつけはやめたほうがいい。ネットのメモより、自分の肌のほうがよほど正直だった。

よくある質問(FAQ)

Q. 三峰の湯は源泉かけ流しですか?
A. はい。掲示の温泉分析書に「加水なし・加温なし・循環ろ過なし」と明記されており、49.5℃の源泉を毎分157リットルでそのまま浴槽に流しています。ただし衛生管理のため塩素系薬剤を使用している旨も掲示されています。

Q. レジオネラの件は大丈夫ですか?
A. レジオネラ属菌が基準値を超えて確認されたため2025年に臨時休館し、衛生管理対策を終えて2025年6月に営業を再開しました(みなかみ町観光協会の告知による)。再開後は衛生管理のため塩素系薬剤を使用しています。

Q. お湯はヌルヌルしますか?
A. します。pH9.0のアルカリ性単純温泉で、肌の上を湯が滑るような「ヌルすべ」の浴感です。口コミでも「にゅるにゅる」「ツルスベ」という声が多く見られます。

Q. 塩素の匂いは気になりますか?
A. 筆者が入った限りでは、塩素臭はほとんど気になりませんでした。湯量が多く常に新しい源泉が溢れているため匂いがこもりにくいようです(感じ方には個人差があります)。

Q. 温泉を家に持ち帰れますか?
A. はい。三峰の湯のすぐ隣に「温泉スタンド」があり、同じ源泉を持ち帰れます(100リットル100円、12:00〜17:00、100円硬貨のみ、毎月第3水曜は休館)。利用目的は「公共の浴用」=家庭のお風呂用で、飲用ではありません。汲んだら早めに使い切ってください。

Q. 営業時間・料金・アクセスは?
A. 営業10:00〜19:30、定休は毎月第3水曜と1月1日。関越道・月夜野ICから車で約13分。入浴料は2026年7月の値上げで町民400円・町外600円(改定前は町民300円・町外400円)。旅行サイトに旧料金が残っている場合があるため、来館前に電話(0278-62-1022)で確認を。

群馬のほかの源泉かけ流しと pH・メタけい酸・湯使いを見比べたい人は、泉質比較データ(36湯)へどうぞ。三峰の湯の pH9.0 は、表の中でも上位のアルカリ湯だ。

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