※料金・営業情報は2026年7月時点。日帰り入浴の時間や定休は変わることがあるので、訪問前に電話(0279-98-0280)で確認するのが確実です。
嬬恋村・鹿沢温泉。紅葉館のある一角から少し下ったところに、「とべの湯」がある。鹿沢温泉の日帰り入浴施設だ(掲示の施設名は「戸部旅館」だが、宿泊ではなく立ち寄り湯の営業)。道路沿いの赤い看板には「日帰り温泉/貸切風呂/源泉掛け流し」と大きく出ている。

先に言ってしまうと、この湯の面白さは2つ。ひとつは、使っている源泉が紅葉館とまったく同じ「雲井の湯」だということ。もうひとつは、この日たまたま出会えた、台風のあとの濃い露天だ。
とべの湯とはどんな施設か
こぢんまりとした建物が、まるごと日帰りの湯になっている。玄関を入って料金を払い、内湯と露天のある浴室へ。貸切風呂の看板も出ていて、家族やグループでも使える構えだ。建物はもともと戸部旅館で、2015年に日帰り温泉としてリニューアル。今のご主人が引き継いだのは2023年で、その後も浴室に手を入れてきたという。
- 日帰り入浴料金:大人 ¥600/子ども ¥400(3歳以下無料。2026年7月時点)。11枚綴りの回数券5,000円もある
- 営業時間:11:00〜おおむね19:00(土曜・休前日は19:30、夏期は延長)。固定の定休はなく不定休(点検・清掃休あり)。時期で変わるので電話(0279-98-0280)で確認を
- アクセス:嬬恋村・鹿沢温泉。JR吾妻線 万座・鹿沢口駅から車で山を上がる
- 電話:0279-98-0280
内湯──石底が透ける澄んだ湯、奥と手前で温度が違う
浴室に入ってまず目を引くのが、内湯だ。石を組んだ底が湯を通してはっきり見えるほど澄んでいる。それでいて、その澄んだ湯に茶色い湯の花がびっしりと舞っていた。主人曰く、この日は普段より多いそうだ。

面白いのは温度だ。掲示の利用施設温度は45℃だが、実際は湯口に近い奥が44℃ほど、手前の浴槽が41℃ほどと、源泉から離れるほど少しずつ下がっていく。ひとつながりの浴槽のなかに、しっかり温まりたい奥と、のんびり長湯できる手前がある。熱いのが得意でなければ手前、芯まで温めたければ奥、と自分で選べる。奥は44℃と熱め。入る前にかけ湯で体を慣らし、長湯は避けてのぼせる前に上がりたい。

湯口のまわりには成分の析出がこびりつき、長くかけ流されてきた湯であることを物語る。

露天──台風のあとの、濃い一日
この日の露天は、いつもと違った。
茶褐色に濁り、湯の花がたくさん舞っていた。受付の方に聞くと、台風の影響でこの日は湯の花がとくに多く出ているという。露天の湯もいつもより量が少なく、ぬるめだった。岩を組んだ露天は、石底まで透けて見えた内湯とはまるで表情が違う。

温泉は生きものだ。天候や湧きで濁りも量も温度も動くから、この濃い露天は狙って出会えるものではない。それだけに、湯の花の舞うぬるめの湯にゆっくり浸かれたのは得がたかった。

ちなみに露天は、冬になると閉じる。加温しない方針なので、寒い時期は源泉の温度が下がって露天まで熱を保てないからだという。ぬるくしてまで開けず、潔く休む。ここにも完全かけ流しの筋が通っている。内湯は通年入れる。
源泉は、紅葉館と同じ「雲井の湯」
掲示を見て気づいたのが、とべの湯の源泉が鹿沢温泉 紅葉館とまったく同じ「雲井の湯」だということ。群馬県が持つ県有泉で、鹿沢温泉の施設が分け合って使っている。
| 雲井の湯(とべの湯 掲示表より) | 値 |
|---|---|
| 泉温 | 源泉47.5℃/利用施設45℃ |
| 泉質 | マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩温泉(中性低張性高温泉) |
| pH | 6.73 |
| メタけい酸 | 238 mg/kg |
| 炭酸水素イオン(HCO₃⁻) | 828 mg/kg |
| 遊離二酸化炭素 | 98.8 mg/kg |
| 成分総計 | 1.48 g/kg |
この数字はとべの湯の掲示(平成19年の分析)によるもの。紅葉館の記事に載せた値(平成29年の分析)と少しだけ違うのは、同じ源泉を別の年に調べたためで、中身は同じ雲井の湯だ。
紅葉館は熱い雲井の湯を、もう一本のぬるい源泉で割って湯加減を作っていた。とべの湯は、奥と手前で温度差のある内湯と、天候で表情を変える露天。同じ源泉でも、器と使い方が違えば湯の顔つきは変わる。鹿沢に雲井の湯を引く施設が複数あるのは、その違いを確かめられるという面白さでもある。
そして掲示には、加水・加温・循環ろ過・入浴剤・消毒のすべてが「なし」と記されている。正真正銘の完全かけ流しだ。

成分と、掲示に載る適応症
雲井の湯は、溶存物質が1.40g/kg(同じ源泉の平成29年分析書による)で、療養泉の基準1g/kgを上回る。上の成分表は施設掲示の平成19年分析値なので、溶存の数字だけは新しい分析書のほうから引いた。療養泉なら、環境省の基準で泉質に応じた適応症が示される。炭酸水素塩泉の雲井の湯なら、こんな具合だ。
- 泉質別適応症:きりきず・末梢循環障害・冷え性・皮膚乾燥症
- 一般的適応症:筋肉や関節の慢性的な痛み、冷え性、疲労回復、健康増進など(浴用の一般的適応症)
炭酸水素塩泉(重曹系)で、メタけい酸も多い。ただしpHは中性なので、かつて島根で通った美又のようなアルカリ性のヌルすべ湯とは別もの。つるつるで押すのではなく、肌あたりのやわらかさで語られる系統だ。もちろん化粧品のような効果を約束するものではなく、書けるのは環境省の基準で示された適応症までだ。群馬のほかの源泉かけ流しと数字で並べて見たいなら、泉質比較データにpH・メタけい酸・溶存をまとめてある。
立ち寄りの実際
- 訪問:日曜、開店の11時ちょうどに。それでもほどなく人が増え、浴室はにぎわっていた
- 貸切風呂:時間貸切の個室風呂がある(60分2,800円・5名まで・電話予約制。0279-98-0280)。2〜3室で、テラスの開いた半露天のような造り
- 冬季:鹿沢は地蔵峠の麓。12〜4月は積雪・凍結でスタッドレス必須。露天は冬期閉鎖だが内湯は通年
よくある質問(FAQ)
Q. とべの湯は日帰り入浴できますか? A. できます。鹿沢温泉の日帰り入浴施設で、大人¥600・子ども¥400(3歳以下無料。2026年7月時点)。営業は11:00〜おおむね19:00(土曜・休前日は19:30、夏期は延長)。固定の定休はなく不定休で、時間も変わることがあるので0279-98-0280で確認を。
Q. 源泉かけ流しですか? A. はい。掲示で加水・加温・循環ろ過・入浴剤・消毒のすべてが「なし」の完全かけ流しと示されています。
Q. どんな泉質ですか? A. 源泉は鹿沢温泉の県有泉「雲井の湯」(マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩温泉)。紅葉館と同じ源泉です。
Q. 露天はいつも濁っていますか? A. いいえ。取材日は台風のあとで湯の花が多く、露天が茶褐色に濁ってぬるめでしたが、これはその日の状態です。天候や湧きの具合で表情が変わります。
Q. 貸切風呂はありますか? A. あります。時間貸切の個室風呂で、60分2,800円・5名まで・電話予約制です(0279-98-0280)。空きがあれば当日でも入れることがあります。
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とべの湯のある鹿沢温泉(嬬恋村)は、出荷量日本一の高原キャベツや感謝券などふるさと納税の返礼品が充実しています。寄付で嬬恋村を応援しながら、高原の味を楽しめます。
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まとめ
とべの湯は、紅葉館と同じ県有泉「雲井の湯」を、加水も加温もせずに使う完全かけ流しの日帰り湯だった。石底が透ける澄んだ内湯は、奥44℃・手前41℃で温度を選べる。そしてこの日の露天は、台風のあとの湯の花で濃く濁っていた。
同じ源泉を、紅葉館ととべの湯で入り比べる。鹿沢まで来たなら、両方の湯をはしごしたい。



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