
土曜の昼前、東吾妻町の高台にある「根古屋乃湯(根古屋城温泉)」に行ってきた。先に結論を書く。
- 営業は土・日・祝だけ。平日は開いていない
- 内湯も露天も100%源泉かけ流し(加水なし・加温あり)と受付前に掲示されている
- 入浴料は400円。しかも11時〜18時は時間無制限
- 源泉名は「姫子の湯」。34.2℃のぬるめ源泉を加温して使っている
週末しか開かない、知名度も高くない。でも掲示を読めば読むほど「これで400円でいいのか」と心配になる類いの湯だった。
受付|開店前に着いたら、お茶が出てきた
11時の開店より少し早く着いてしまった。普通なら車で待つところだが、声をかけると中で待たせてもらえて、お茶まで出してくれた。この時点でだいたいこの施設の人柄は伝わると思う。


建物は瓦屋根の平屋で、玄関までの通路には緑のカーペット。流木や巨石のオブジェが並ぶ庭は、どこを見ても手作りの気配がする。受付では地元・東吾妻町産のコシヒカリ(5kg 4,000円)や「根古屋タオル」(400円)まで売っていた。
支払いは現金のみ(2026年8月時点)。券売機はなく、受付で直接払う方式だった。
湯づかい|「内風呂・露天風呂とも100%源泉かけ流し」の掲示

館内の掲示にはこう書かれている。
◎当温泉は、一切加水していません。 ◎当温泉は、入浴に適した温度を保つため加温しています。 ◎当温泉は、内風呂・露天風呂とも100%源泉かけ流しです。 ◎当温泉は、入浴剤等は使用していません。

加水なし・加温あり・全浴槽かけ流し。源泉が34.2℃のぬる湯なので、入浴に適した温度まで加温して使うタイプの湯だ。薄めずに温める。ぬる湯源泉の使い方としては一番誠実な選択だと思う。
泉質データ(浴室掲示の分析書より)

浴室前の掲示(分析年月日:平成6年1月18日・群馬県衛生環境研究所)から転記する。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 源泉名 | 新あづま根古屋城温泉(姫子の湯) |
| 泉質 | ナトリウム-塩化物温泉(弱アルカリ性低張性温泉) |
| 泉温 | 34.2℃(分析時) |
| pH | 8.1 |
| 成分総計 | 1.54g/kg |
| 主な成分 | ナトリウムイオン497mg・塩素イオン729mg・メタけい酸121.8mg(1kg中) |
溶存ガスがゼロの湯なので、溶存物質は成分総計と同じ1.54g/kg。療養泉の基準(溶存物質1g/kg)をはっきり上回る、れっきとした塩化物泉だ。掲示では、きりきず・やけど・慢性皮膚病などがこの温泉固有の適応症(入浴による効果が期待される症状のこと)として、群馬県の決定(平成9年4月22日)つきで示されている。
内湯|木枠の湯船と、窓いっぱいの山

内湯は木枠×石張りの大きな湯船がひとつと、円形タイルの小さな湯船。湯は無色透明で、底の石がくっきり見える。体感は適温。加温された湯が岩の湯口からとぎれず注がれ、縁からあふれていく。

大きな窓の外には露天エリアと山並み。内湯に浸かったままでも眺望がある造りだ。
ひとつ正直に書いておくと、洗い場のシャワーの出は控えめで、勢いを期待しない方がいい。浴室の備え付けは固形石鹸のみなので、シャンプー類は持参を。設備の快適さで勝負する施設ではなく、湯そのものを400円で守っている場所だと理解して行くのが正しい。
露天|白い傘の下、ぬるめの湯で長湯する

露天は岩組の湯船の中央に白い傘が立つ、少し不思議な景色。こちらは内湯よりぬるめの体感37℃前後で、源泉34.2℃の「ぬる湯の血筋」を感じる温度だった。しばらく浸かっていると、肌にほんの少しだけ泡が付いた。ささやかな泡付きだけれど、ぬるめの湯にじっと浸かっている人へのご褒美みたいなものだと思う。傘の下で山を眺めながらの長湯が、この施設の一番おいしい時間だ。なお、ぬるめの湯でも長湯は汗をかく。水分補給をこまめに、立ちくらみを感じたら無理せず湯から上がってほしい。
同じ30℃台のぬる湯源泉でも、中之条の大塚温泉 金井旅館(源泉32.8℃)が源泉そのままの浴槽を残す方式なのに対し、こちら(34.2℃)は全槽を加温して入りやすい温度に寄せる方式。どちらが上という話ではなく、「源泉を薄めない」という一線さえ守られていれば、あとは湯守の考え方の違いだと私は思っている。
土曜の昼という時間帯で、浴室には常に数人の先客がいた。「無名だからガラガラ」を期待して行くと当てが外れる程度には、週末の地元客に愛されている。
営業時間の掲示に、この湯の歴史が書いてある

受付の料金表をよく見ると、営業時間の「PM10:00」に線が引かれ、手書きで「8:00」と直されている。かつては夜10時、さらには夜11時まで開いていた時期もあったという温泉だ。それが今は土日祝のみ・夜8時まで。
料金表も味わい深い。
- 大人400円・子供250円(4才以上小学生まで)
- 11:00〜18:00はフリータイム(時間無制限)
- 18:00以降は3時間制・延長は1時間ごとに大人200円・子供120円
- 身障者手帳の提示で割引あり
- 回数券は11回分で4,000円(無期限)
回数券の「無期限」という言葉のやさしさと、土日祝しか開いていないという現実。通い切れるかどうかは、こちらの週末次第だ。
なお2025年1月には、ケーブルテレビ番組「名湯の条件」の名湯認定証(名湯No.0190)も受けている。源泉かけ流し浴槽があること、歴史的背景があること——現地の掲示群と符合する認定内容だった。
「根古屋」は城の麓という意味
短くなっていくのは営業の歴史。一方で、この土地自体の歴史はずっと古い。
施設の住所は東吾妻町岡崎の「根古屋」。ここには中世の山城「岡崎根古屋城跡」が実在する。「根古屋(根小屋)」はもともと、山城の麓に人が住んだ集落を指す言葉で、施設名はこの土地の歴史をそのまま背負っている。源泉の掘削は平成6年(1994年)、施設の温泉利用の決定書は平成9年(1997年)付で掲示されていた。
食堂の支那そばは「無化調」の看板つき(実食は別記事で)

館内の食堂には「当店自慢の支那そばスープは化学調味料は一切使用しておりません」という木看板が掛かっている。温泉400円+支那そば600円でちょうど1,000円という構図が、この施設のもうひとつの名物だ。実食レポートは根古屋乃湯の支那そば|無化調600円の食堂ランチに書いた。
まとめ|「土日祝だけ」は弱点ではなく、行く理由
平日に開いていない温泉は、予定が合わせにくい。でも逆に言えば、土日祝なら原則開いていて、400円で内湯も露天もかけ流し、昼間は時間無制限。週末の昼に「どこかいい湯はないか」と考えたとき、これほど分かりやすい答えは多くない。
営業時間の掲示が手書きで短くなっていく類の温泉は、「いつか行く」が通用しないことを私は経験で知っている。行くなら、開いている週末のうちに。
よくある質問
Q. 根古屋乃湯(根古屋城温泉)の営業日と営業時間は? A. 営業は土・日・祝のみです。訪問時の掲示では11:00〜夜8時まででした(変動の可能性があるため最新は電話 0279-59-3361 で確認してください)。
Q. 入浴料はいくら?時間制限はある? A. 大人400円・子供250円です。11:00〜18:00は時間無制限(フリータイム)、18:00以降は3時間制で延長は1時間ごとに大人200円です(2026年8月時点の掲示)。
Q. シャンプーやアメニティはある? A. 浴室にあるのは石鹸のみです。シャンプー類は持参をおすすめします。支払いは現金のみでした。
Q. 源泉かけ流しですか? A. 現地掲示に「内風呂・露天風呂とも100%源泉かけ流し」「一切加水していません」「入浴に適した温度を保つため加温しています」と明示されています。源泉は34.2℃のぬるめの湯(姫子の湯)です。
基本データ表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 根古屋乃湯(根古屋城温泉センター) |
| 所在地 | 群馬県吾妻郡東吾妻町岡崎根古屋309-1 |
| 電話 | 0279-59-3361 |
| 営業日 | 土・日・祝のみ |
| 営業時間 | 11:00〜夜8:00(訪問時の掲示。最新は要電話確認) |
| 料金 | 大人400円・子供250円(11:00〜18:00フリータイム/18:00以降3時間制・延長1時間毎に大人200円・子供120円/身障者手帳提示で割引・2026年8月時点) |
| 支払い | 現金のみ |
| 泉質 | ナトリウム-塩化物温泉(弱アルカリ性低張性温泉)・pH8.1・泉温34.2℃ |
| 源泉 | 新あづま根古屋城温泉(姫子の湯)・内湯露天とも100%源泉かけ流し(加水なし・加温あり) |
| アメニティ | 石鹸のみ(シャンプー持参推奨)・貴重品ロッカーキー貸出あり |
| 食堂 | あり(支那そば・無化調表示。営業は施設営業日に準ずる) |
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