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老神温泉 伍楼閣 日帰り入浴|硫黄が香らない混浴露天の理由

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湯面に浮かぶ白い湯の花。無色透明の湯にはっきり見える
湯面に浮かぶ白い湯の花。無色透明の湯にはっきり見える

老神温泉(おいがみおんせん)は、硫黄の温泉地だ。少なくとも私はそう思っていた。この連載で先に書いた石亭旅館も、ぎょうざの満洲 東明館も、どちらも掲示に「硫黄」の二文字が入っていた。

ところが木曜の昼、伍楼閣(ごろうかく)の混浴露天に肩まで浸かって、鼻から息を吸って、もう一度吸って、ようやく気づいた。匂いがしない。

湯上がりに脱衣所の掲示を読んだら、理由がはっきり書いてあった。しかも、その理由はすぐ近くの石亭旅館と同じ源泉を使っているのに、というおまけ付きだった。

  • 混浴露天は「岩鏡」と「赤城の湯」の2つ。どちらも加水なし・循環なし・消毒なしの源泉かけ流し(加温も気温の低い期間だけ=夏は非加温)
  • ただし内湯は通年加温+循環装置+紫外線消毒。同じ湯なのに、湯づかいだけが違う
  • 泉質は単純温泉。老神7号泉に、32℃の若の湯3号泉を混ぜた混合泉で、硫黄はほぼ消えている
  • 湯の体感は奥が42℃、手前が40℃くらい。さっぱりしていて、白い湯の花がはっきり浮く
  • 日帰りは正午〜15時、1時間1,000円・2時間2,000円で現金のみ

料金・営業情報は2026年8月時点(現地掲示・受付で確認)。

基本データ|料金・受付時間・支払い方法

項目内容
施設名老神温泉 伍楼閣(ごろうかく)
所在地群馬県沼田市利根町老神602番地丙
日帰り受付正午〜15:00
料金1時間 1,000円/2時間 2,000円
支払い現金のみ
湯あみ着レンタルあり(男性300円・女性400円)
泉質単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
源泉老神温泉(7号泉・若の湯3号の混合泉)
電話0278-56-2555
公式https://www.gorokaku.com/

宿の立ち寄り湯なので、受付時間は正午からきっちり。この日は12時前に着いてしまい、玄関で待っていたら少し早めに入れてくれた。おかげで湯船の写真が撮れている。この記事の写真がやたら無人なのは、そういう理由だ。12時半には男性のお客さんが2人来たので、貸切だったのは最初の30分だけだった。

伍楼閣の玄関。車寄せの上に水車が乗る
伍楼閣の玄関。車寄せの上に水車が乗る

五つの湯、日帰りで入れるのはどれか

館内の「五湯のご案内」を見ると、風呂の構成はこうなっている。

浴室種別男女の別
岩鏡(いわかがみ)混浴 露天風呂女性専用 6:30〜9:00/男性専用 19:00〜21:30
赤城の湯混浴 野天風呂女性専用 19:00〜21:30
もみぢ谷貸切露天風呂
ひうちの湯内湯(男女室内風呂)殿方風呂/19:00〜はご婦人風呂
しぶつの湯内湯ご婦人風呂/19:00〜は殿方風呂

内湯のひうちの湯としぶつの湯は、19時で男女が入れ替わる。混浴の2つも朝と夜に専用時間が設定されていて、「混浴が苦手なら時間で避けられる」設計になっている。ただし日帰りの正午〜15時は、露天2つとも混浴の時間帯にあたる。

今回入ったのは、内湯以外の2つ——岩鏡と赤城の湯だ。

館内の「五湯のご案内」。浴室名と専用時間が手書きで書き込まれている
館内の「五湯のご案内」。浴室名と専用時間が手書きで書き込まれている

湯づかい|露天は素通し、内湯は循環と紫外線

温泉法で掲示が義務づけられている「温泉利用状況」を、浴室ごとに読み比べると、この宿の性格がよく分かる。成分表の数値は全部同じ(同じ混合泉だから当然だ)。違うのは湯の扱い方だけだった。

露天(岩鏡・赤城の湯)内湯(ひうちの湯)
加水していませんしていません
加温気温の低い期間のみ入浴に適した温度を保つため加温
循環・ろ過循環していません温度を均一に保つため循環装置を使用
入浴剤使用していません使用していません
消毒剤使用していません温泉の性質により紫外線を使用

つまり8月に入った露天2つは、加水も加温も循環も消毒もない「素通し」の湯だった。源泉かけ流しと書けるのは、この2つの露天についてだけだ。内湯は通年で加温し、循環装置を通し、紫外線で消毒している。塩素ではなく紫外線、というのも掲示のままの表現である。

同じ蛇口から来た湯なのに、屋根の下と外とで扱いが違う。露天だけを目当てに行くのが、この宿の正しい入り方だと思う。

内湯「ひうちの湯」の温泉成分等掲示表。利用状況欄に循環装置と紫外線の記載
内湯「ひうちの湯」の温泉成分等掲示表。利用状況欄に循環装置と紫外線の記載

泉質データ|7号泉に、32℃の湯を混ぜた結果

掲示されている温泉分析書はこうだ(分析年月日 平成28年6月23日/登録分析機関 群馬県薬剤師会)。

項目数値
源泉名老神温泉(7号泉・若の湯3号の混合泉)
泉質単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
泉温48.2℃(利用施設 42.0℃)
pH8.1
溶存物質0.58 g/kg
主な陰イオン硫酸イオン 231mg/塩化物イオン 83.6mg/炭酸水素イオン 27.5mg
主な陽イオンナトリウムイオン 108mg/カルシウムイオン 63.6mg
メタけい酸49.2mg
遊離硫化水素0.1mg 未満

知覚的試験の欄には「無色透明、灰白色の浮遊物あり」とある。湯船で見た白い湯の花のことだ。

そして掲示の隅に、こんな参考欄が付いていた。

源泉泉温温泉水の起源
7号泉59.1℃21.8年
若の湯3号泉32.0℃45.7年

「温泉水の起源」が何年を指すのか、掲示に説明書きはない。一般に温泉水の年代は、地下に染み込んだ水が湧き出すまでにかかった時間の目安として使われる数値だ。それに従うなら、21.8年前の水と45.7年前の水が、いま同じ湯船で混ざっていることになる。こんな欄を掲示に載せている施設は、群馬でもそう多くない。群馬の各湯の数値は泉質比較データに一覧でまとめている。

混浴露天の温泉成分等掲示表。参考欄に「温泉水の起源」がある
混浴露天の温泉成分等掲示表。参考欄に「温泉水の起源」がある

なぜ硫黄が香らないのか|石亭と同じ7号泉なのに

ここからが本題だ。伍楼閣が使う7号泉は、この連載で先に書いた石亭旅館と同じ源泉である。ところが石亭の掲示を撮った写真を見返すと、泉質名がまるで違う。

石亭旅館(7号泉100%)伍楼閣(7号泉+若の湯3号)
泉質アルカリ性単純硫黄温泉単純温泉
pH8.58.1
泉温59.1℃48.2℃
硫化水素イオン3.2mg記載なし(遊離硫化水素0.1mg未満)
硫酸イオン144mg231mg
溶存物質0.52 g/kg0.58 g/kg

温泉の分類では、硫化水素イオンなどを合わせた硫黄の量が1kgあたり2mg以上あると「硫黄泉」と名乗れる。石亭の7号泉はその硫化水素イオンが3.2mgあるので、基準を超えている。ところが伍楼閣では、その硫黄が表から消えている。

消えた理由は、混ぜたからだ。32℃の若の湯3号泉を合わせた結果、硫黄は薄まって基準を割り、代わりに硫酸イオンが231mg、陰イオン全体の6割を占めるまで濃くなった。泉温も59.1℃から48.2℃に下がっている。

同じ源泉でも、何と混ぜるかで名前が変わる。老神という温泉地が、番号の違う源泉をいくつも持っていて、宿ごとに引き方が違うということでもある。硫黄を期待して入ると肩透かしを食うが、「さっぱりして、いつまでも入っていられる湯」としてはむしろこちらの方が好みだった、というのが正直な感想だ。

なお掲示によれば、この湯の泉質別の適応症は自律神経不安定症・不眠症・うつ状態、泉質別の禁忌症は「該当項目なし」とされている。

岩鏡(露天風呂)|奥が42℃、手前が40℃

混浴露天「岩鏡」。竹の柵と屋根に囲まれた岩風呂
混浴露天「岩鏡」。竹の柵と屋根に囲まれた岩風呂

最初に入ったのが岩鏡。屋根と竹の柵で囲まれていて、渓谷に開けている。湯船は奥と手前で温度が分かれていて、体感で奥が42℃、手前が40℃くらい。掲示の「利用施設 42.0℃」とちょうど符合する。

湯口からは、パイプを通ってきた湯が石の上を滑り落ちてくる。無色透明で、匂いはやはりしない。

湯口。パイプから落ちた湯が石を伝う
湯口。パイプから落ちた湯が石を伝う
岩鏡の湯船。奥と手前で湯温が分かれる
岩鏡の湯船。奥と手前で湯温が分かれる

赤城の湯(野天風呂)|屋根は養蚕の道具でできている

脱衣所から露天へ続く渡り廊下。天井は竹、棚の平たい籠は脱衣カゴ
脱衣所から露天へ続く渡り廊下。天井は竹、棚の平たい籠は脱衣カゴ

もう一つが赤城の湯。掲示の正式名は「野天風呂」で、こちらの方が開放的だ。

脱衣所から露天へ渡る廊下で、まず足が止まった。天井が竹なのだ。棚に積み重ねてある平たい竹の籠は、脱衣カゴとして使われている。屋根の竹編みと同じ籠なのかどうかまでは分からなかったが、とにかく館のあちこちが竹でできている。

そして湯船に出て天井を見上げ、今度はしばらく動けなくなった。屋根一面が、菱形に編まれた竹だった。隙間から落ちる光が湯面で揺れている。

脇の説明板にはこうある——屋根の竹編みは上州(群馬)篭(かご)、竹蚕箔(たけさんぱく)と言い、この地域で養蚕に使用したもの

群馬の養蚕で蚕を育てるのに使っていた道具が、そのまま風呂の屋根になっている。温泉と絹の県が、頭上で一枚につながっている。

「上州篭(竹蚕箔)」の説明板。左の柱に「この岩は斜長流紋岩です」の手書き
「上州篭(竹蚕箔)」の説明板。左の柱に「この岩は斜長流紋岩です」の手書き

岩には手書きでこう書かれていた。「この岩は斜長流紋岩です」。岩石の名前まで教えてくれる湯船は、そう多くない。

赤城の湯も湯船が2つに分かれている
赤城の湯も湯船が2つに分かれている

白い湯の花|掲示と分析書と、実際の湯船が一致する

湯に浸かってしばらくすると、白い粒がゆらゆらと漂っているのが見えてきた。

湯面に浮かぶ白い湯の花
湯面に浮かぶ白い湯の花

脱衣所の木札には、こう書いてある。「天然温泉の為、お湯の中に白、黒、褐色の湯花がまじって混っております(季節により変化)」。そして分析書の知覚的試験の欄が「無色透明、灰白色の浮遊物あり」。

掲示・分析書・実際の湯船の3つが、同じことを言っている。循環ろ過を通していない湯だから、湯の花がそのまま浮いてくる。かけ流しの物的証拠としては、これ以上ないくらい分かりやすい。

ちなみにこの木札の上には、昭和43年6月5日付の「温泉利用許可済証」が貼られたままになっている。1968年から続いている湯だ。

湯の花について書かれた木札と、昭和43年の温泉利用許可済証
湯の花について書かれた木札と、昭和43年の温泉利用許可済証

混浴、思ったより身構えなくていい

日帰りの正午〜15時は、岩鏡も赤城の湯も混浴の時間帯にあたる。ただ実際に行ってみると、心配していたほどの構えは要らなかった。

  • 湯あみ着のレンタルがある(男性300円・女性400円)。私は借りずに入ったが、抵抗があるなら受付で借りればいい
  • 朝と夜には専用時間がある。岩鏡は6:30〜9:00が女性専用・19:00〜21:30が男性専用、赤城の湯は19:00〜21:30が女性専用。泊まれば混浴を避けて入れる
  • 正午の開始直後は空いている。この日、12時半に来たのは男性2人だった

群馬のほかの混浴は混浴温泉 日帰りガイドにまとめているが、「混浴」の二文字で候補から外すには惜しい湯だと思う。少なくとも日帰りの時間帯に関して言えば、身構えるより先に、竹の天井を見上げることになる。

まとめ|硫黄を求めるなら別の宿、長湯したいならここ

老神で硫黄の匂いを浴びたいなら、石亭旅館か、ぎょうざの満洲 東明館に行った方がいい。どちらも掲示に硫黄泉と書いてある湯だ。

伍楼閣の混合泉は、その逆をいく。匂いがなく、さっぱりしていて、42℃と40℃を行き来しながらいつまでも入っていられる。硫黄泉の後に入ると、湯の主張が薄いぶん物足りなく感じる人もいるかもしれない。でも私は、竹編みの天井の下で白い湯の花を眺めながら、1時間の枠をきっちり使い切った。

日帰りで行くなら、正午前に着いて、露天2つに絞るのがいい。内湯は循環と紫外線を通しているので、素通しの湯を味わうという目的からは外れる。1時間1,000円で露天2つなら、時間としてもちょうどいい。

よくある質問

Q. 伍楼閣は日帰り入浴できますか? A. できます。受付は正午〜15:00、料金は1時間1,000円・2時間2,000円で現金のみです(2026年8月時点)。宿の立ち寄り湯で受付は3時間だけなので、遠方から向かうなら事前に電話(0278-56-2555)で当日の受け入れを確認しておくと確実です。

Q. 伍楼閣は源泉かけ流しですか? A. 混浴露天の「岩鏡」と「赤城の湯」は、掲示によれば加水なし・循環なし・消毒なしで、加温も気温の低い期間のみです。一方、内湯の「ひうちの湯」は通年加温・循環装置あり・紫外線消毒と掲示されています。かけ流しの湯に入りたい場合は露天を選んでください。

Q. 伍楼閣は硫黄泉ですか? A. いいえ、泉質は単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)です。同じ老神7号泉を使う石亭旅館は「アルカリ性単純硫黄温泉」ですが、伍楼閣は32℃の若の湯3号泉との混合泉のため硫黄が薄まり、硫黄泉には該当しません。実際に浸かっても硫黄の匂いはしませんでした。

Q. 混浴に抵抗があるのですが入れますか? A. 湯あみ着のレンタルがあります(男性300円・女性400円)。また岩鏡は6:30〜9:00が女性専用、19:00〜21:30が男性専用、赤城の湯は19:00〜21:30が女性専用と時間が分けられています。ただし日帰りの正午〜15時は、露天2つとも混浴の時間帯です。

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