
月曜の午前、老神温泉の湯元華亭で日帰り入浴してきた。
- 老神温泉で唯一の日帰り専用施設。旅館の空き時間を待たなくていい
- 開館の11時に入って、浴室に1人だったのは最初の10分ほど。上がる頃には10人ほど
- 奥の露天は川音・蝉・湯口の三層。狙うなら開館直後の10分
- 泉質は単純硫黄温泉。総硫黄2.2mg/kgで、硫黄泉の基準2.0mgを0.2mgだけ上回る
- ただし循環ろ過・塩素消毒あり=源泉かけ流しではない
- 大人1,000円・現金のみ。水・木・金は休館(祝日は営業)
料金・営業情報は2026年8月時点(現地掲示・公式サイトより)。
この記事に「かけ流し」とは書けない
湯元華亭は公式サイトの効能ページで、はっきりこう書いている。
衛生管理のため、循環ろ過機を使用しています。 衛生管理のため、塩素消毒を実施しています。 源泉減少時は、浴槽内の衛生・循環の為、加温加水します。
私はこのブログを「源泉かけ流し日記」としてやっている。だから看板の軸からは外れる湯だ。それでも書くことにしたのは、奥の露天に浸かっていた時間がとてもよかったからだ。数字のほうは、正面から見れば弱い。それも含めて書く。
1人だったのは、最初の10分だけだった
月曜。開館時刻の11時に入って、脱衣所には私だけだった。浴室に出ても誰もいない。
その状態が続いたのは、体感で最初の10分ほどだ。湯から上がって脱衣所で着替えているときには、もう10人ほどになっていた。この日は開店から一気に立ち上がった。貸切を狙うなら、11時ちょうどに入って最初の10分。それ以上を期待して行くと、たぶん当てが外れる。
老神で唯一の「日帰り専用」
老神温泉の宿はどこも泊まりが本業で、日帰り入浴は宿が決めた枠に合わせて入ることになる。湯元華亭だけが違う。日帰り入浴のためだけに建っている。
1996年開業なので、2026年でちょうど30周年になる。公式サイトのお知らせによると、10月3日(土)4日(日)の11時〜15時に30周年感謝祭があり、入館料が30%OFFになると告知されている。
玄関の脇には「夫婦手湯」という札の下に、大小ふたつの石の鉢が並んでいて、そこに湯が注いでいる。中に入る前に、まず手で湯を確かめられるようになっている。

浴槽は3つ(男女入替なので、次に行く人が同じ湯とは限らない)
玄関に「本日の日替り湯」という掲示がある。男女で浴室が入れ替わる方式だ。

訪問日の男湯は「谷の湯」。掲示には「内風呂・露天風呂・鏡湯・気泡湯」と4つの名前が並ぶが、公式サイトを見ると鏡の湯は露天のことだと書かれている。浴槽の数としては内風呂1つと露天2つの、あわせて3つだ。
- 奥の露天(泡なし)
- 手前の露天(ぶくぶく泡が出る)
- 円形の内風呂
3つとも41℃くらい。長湯できる温度で揃っている。
女湯は「滝の湯」で、こちらは内風呂・露天・岩風呂・うたせ湯・寝湯という構成が掲示されていた。入替制なので、この記事の湯船の話がそのまま次の人に当てはまるとは限らない。行く前に玄関の掲示を見てほしい。
奥の露天で、耳が幸せだった

手前の露天は泡が出る。悪くはないのだが、私は奥に移った。

奥の露天は泡が出ない。屋根と丸太の柱があって、正面は緑で塞がっている。ここでゆっくり浸かっていたら、耳が幸せになった。
近くを流れる川の音がザーザーと途切れずに聞こえる。その上に蝉がミンミンと重なる。さらに湯口からジャバジャバと湯が落ちる音が足される。音が三層になっていて、目を閉じているとどれを聴いているのか分からなくなる。41℃だから、いつまでも出られない。
写真では絶対に伝わらない部分だ。
内風呂と、湯口に残っていたもの

内風呂は円形で、真ん中に柱が立っている。公式サイトによると浴室の柱は京都の乾燥檜、天井の木組みは高崎の宮大工の仕事だという。露天のほうも「日本庭園にある池がもしも露天風呂だったら」というテーマで、京都の庭師が設計したと書かれている。

意外だったのは湯口だ。内風呂も露天も、湯口には茶色と白の析出物が付いていた。石を伝う湯の通り道に沿って、色が残っている。
念のため付け加えると、これは「やっぱりかけ流しだった」という話ではない。公式サイトが循環ろ過と塩素消毒を明記している事実は動かない。ただ、湯口という一点には、成分が石に残るだけの湯が来ている。それだけの観察だ。
老神の他の2軒と並べると、色が見事に違う。東秀館の湯口は黄色い析出が厚く育っていた。石亭は白い析出にびっしり覆われていた。そして華亭は茶色と白。3館とも源泉が違い、湯づかいも違う。どちらがどれだけ効いているのかは私には分からないが、湯口に残った色は三者三様だった。
ほんのり卵臭がした理由も、分析書に書いてあった
湯に入ってすぐ、ほんのり卵臭がした。強い硫黄臭ではない。鼻を近づけて「あ、するな」という程度。
館内に掲示されている温泉分析書を読んで、その「ほんのり」の出どころが分かった。

分析書の数字(平成25年9月11日 調査)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 源泉名 | 老神温泉 2号泉 |
| 泉質 | 単純硫黄温泉(低張性弱アルカリ性温泉) |
| 泉温 | 41.5℃ |
| pH | 8.4(現地)/8.48(試験室) |
| 利用量 | 140L/分(動力揚湯) |
| 溶存物質 | 0.44g/kg |
| 硫化水素イオン(HS⁻) | 2.1mg/kg |
| 遊離硫化水素(H₂S) | 0.1mg/kg |
ここから2つのことが読める。
ひとつ。この湯は、温度でも硫黄でも療養泉の条件を満たしている。 療養泉は「25℃以上」「溶存物質1,000mg/kg以上」「特定の成分が規定量以上」のどれかを満たせばいい。泉温41.5℃は25℃の線を超えているし、総硫黄2.2mg/kgは特定成分の基準2.0mg/kgも超えている。二つの入口から入っている湯だ。届いていないのは溶存物質だけで、0.44g/kgは基準1.0g/kgの半分にも満たない。泉質名の頭に付く「単純」は、その足りない部分を指している。
ふたつ。「硫黄」を名乗れるかどうかは、0.2mgの差で決まっていた。 総硫黄は2.2mg/kg。硫化水素イオン2.1mgと遊離硫化水素0.1mgを足した値で、硫黄泉として認められる基準の2.0mg/kgを0.2mgだけ上回っている。これが2.0mgを下回っていたら、この湯の名前から硫黄の二文字は消えて、ただの「単純温泉」になっていた。
香りをつくっているのは、総量ではなく0.1mgのほう
知覚的試験の欄には「僅かに白濁し、浮遊物あり、硫化水素臭あり」と記録されている。源泉の段階で、この湯は確かに匂う湯だ。
ただし香りをつくるのは硫黄の総量ではない。鼻に届くのは遊離した硫化水素(H₂S)のほうで、こちらは0.1mg。硫黄の大半にあたる2.1mgはHS⁻というイオンの形で溶けていて、これは匂わない。pH8.4の弱アルカリでは硫黄はイオンの側に寄る。つまり「ほんのり」は、硫黄が少ないからというより、硫黄の存在の仕方から来ている。
公式サイトは「塩素消毒を実施しています」と明記している。入っていないということはありえない。そのうえで書くと、私の鼻に塩素は届かなかった。管理が効いていたというだけの話だが、循環と塩素の湯だと身構えて入った鼻が拾ったのは、卵のほうだった。
なお入浴そのものの注意として、消費者庁は湯温41℃以下・10分程度を目安に挙げている。環境省の入浴指針は、入浴前のかけ湯と、飲酒後の入浴を避けることを挙げている。この湯はちょうど41℃前後なので、いくらでも長く入れてしまう。腰を据えるつもりなら、途中で出て休むほうがいい。
群馬のほかの硫黄泉と並べた比較は群馬の硫黄泉 日帰り比較にまとめてある。同じ「硫黄」でも、遊離硫化水素で強く香る湯と、イオンの形で溶けていて香らない湯がある。華亭は後者に近い。ただし遊離硫化水素が0.0でほぼ無臭の石亭とは違って、0.1mgだけ分子の形で残っている。鼻に届いたのは、たぶんその0.1mgだ。
この分析書について(平成25年・公式サイトとの食い違い)
調査年月日は平成25年(2013年)9月11日、分析が終わったのが同年9月27日。分析機関は群馬県薬剤師会(登録番号 群馬県薬第2号)。
ひとつ補足しておくと、公式サイトは源泉名を「老神温泉2号線」、湧出量を「毎分180リットル」と書いている。掲示されている分析書は「2号泉」で、利用量は140L/分だ。掲示のほうが一次資料なので、この記事は分析書に従った。
分析書の別表には、療養泉の分類に基づく適応症と禁忌症も記載されている。ただしこれは2014年の指針改訂より前の書式なので、掲示にそう書かれているという以上のことは書かない。気になる人は現地で読んでほしい。
黒っぽい浮遊物と、手書きの貼り紙
湯に浸かって水面をよく見ると、黒っぽい浮遊物が漂っていた。油なのか繊維なのか、私には判別がつかなかった。
内風呂には手書きの貼り紙が掲げてある。要約すると「お湯の中の浮遊物は湯花であって、お湯のよごれではありません」という内容だ。「お客様各位」宛てで、差出人は「支配人」とある。
面白いことに、分析書の知覚的試験の欄にも「僅かに白濁し、浮遊物あり」と記録されている。2013年の採水時点で、すでに浮遊物は確認されていたわけだ。
私が見た黒っぽいものが貼り紙の言う湯花と同じものかどうかは、分からない。ただ、2013年の源泉にも浮遊物は記録されている。それは事実だ。
食事処|ごまだれは「追加」ではなく「変更」だった
館内に食事処がある。入口の掲示によると、食事も飲み物もラストオーダーは15時。風呂上がりにゆっくりしてから、では間に合わないことがある。

メニューは蕎麦とうどんが中心で、そこに定食とカレー、一品ものが並ぶ。舞茸を使った品が目立つのが土地柄だ。

私が頼んだのは舞茸天ざるそば(1,100円)。そしてメニューの隅にあった「ゴマだれつゆ +50円で変更できます」という一行に惹かれて、50円を足した。


運ばれてきたトレーを見て、少し固まった。ごまだれの椀しかない。
メニューをもう一度読んだら、ちゃんと「変更できます」と書いてあった。変更である。追加ではない。私は勝手に「普通のつゆも来て、ごまだれが増えるのだろう」と思い込んでいた。
ちなみに伝票を見ると、「ゴマだれつゆ 50円」は独立した1行として立っている。数えるところが1行増えているので、私の思い込みにも一分の理はあった、ということにしておきたい。
そばとごまだれは普通だった。まずいわけではない。温泉施設の食事処として過不足のない一杯で、けなす理由も持ち上げる理由も見当たらない。
当たりは舞茸の天ぷらだった。別皿で来るので、そばを待たせずに先に食べられるのもいい。舞茸は華亭のメニュー全体を貫いている食材で、天ぷら単品(600円)でもバター焼き(600円)でも頼める。そば目当てで来るより、舞茸目当てで来るほうが正しい店なのかもしれない。
もう一品、みそ田楽(1人前 380円)を頼んだ。

メニューの写真では串に刺さって板に乗っているのだが、出てきたのは串なしで白い皿に盛られたものだった。メニューの隅には「※お料理や食器などは写真と異なる場合がございます。」と断り書きがある。断り書きは正しく機能していた。
味は普通だった。こんにゃくに味噌だれ、以上でも以下でもない。380円という値段を思えば文句を言う筋合いはないし、風呂上がりに何かつまみたいときの一皿としては役目を果たしている。
この日の会計は、舞茸天ざるそば1,100円+ゴマだれつゆ50円+みそ田楽380円で合計1,530円(税込)だった。入館料1,000円と合わせても2,530円で、開館直後の誰もいない露天を思えば安い。
実用メモ
- 水・木・金は休館(祝日は営業)。しかも館内メンテナンスの最中で臨時休館が出ることがあるので、行く前に公式サイトのお知らせ欄かInstagramを見ておく(TEL 0278-56-4126)
- 勝負は開館から10分。11時に入って1人だったのは最初の10分ほどで、上がる頃には10人ほどになっていた。露天を独り占めしたいなら11時ちょうどに入る
- 食事のラストオーダーは15時。最終入館は18時なので、遅く入ると食事は諦めることになる
- 男女入替制。玄関の「本日の日替り湯」を見てから服を脱ぐ
- 公式によると、女性用の露天では5月1日〜11月30日の土日祝にバラ風呂がある。月曜に行った私は見ていない
- 有料個室がある。8畳が2時間2,000円、10畳が2時間3,000円(延長は1時間ごとに1,000円/1,500円)。家族連れや長居したい人向け
- ごまだれは変更であって追加ではない。普通のつゆは付いてこない
- 支払いは現金のみ。館内にそう表示がある。カードもQRも使えない
- 100円玉を用意していく。靴のロッカーも貴重品のロッカーも100円リターン式で、返ってはくるが最初に入れる玉が要る
- 吹割の滝から車で10分(約5km)。滝を歩いたあとの汗を流す先として、距離的にはちょうどいい
- 隣はぎょうざの満洲 東明館(大楊1519-2)。こちらは源泉かけ流しで日帰り700円、餃子も食べられる。湯づかいの違いを同じ日に比べたいなら、この2軒が徒歩圏で並んでいる
まとめ
源泉かけ流しではない。硫黄も基準ぎりぎりの2.2mg/kgしかない。数字だけ並べれば、私がふだん追いかけている湯とは真逆の施設だ。
それでも、開館直後の誰もいない露天で、川と蝉と湯口の音を浴びていた10分には、数字と関係のない良さがあった。湯の成分表だけを見に温泉へ行っているわけではない、と自分に言い聞かせるにはちょうどいい湯だった。
老神温泉には日帰り入浴を受けてくれる宿が何軒もある。石亭旅館も伍楼閣も東秀館も、隣の東明館も、私はそれぞれ入って書いてきた。ただ、日帰りのためだけに建っている施設は老神ではここだけだ。宿の都合に合わせなくていい、というのは思っているより大きい。
11時ちょうどに入って、奥の露天で目を閉じる。その10分が湯元華亭のいちばん美味しい使い方だと思う。
沼田・老神から尾瀬方面へ足を延ばすなら、道の駅 尾瀬かたしなの麺屋むつ葉(メニューとレビュー)も書いている。
よくある質問
Q. 湯元華亭は源泉かけ流しですか? A. いいえ。公式サイトの効能ページに「衛生管理のため、循環ろ過機を使用しています。」「衛生管理のため、塩素消毒を実施しています。」「源泉減少時は、浴槽内の衛生・循環の為、加温加水します。」と明記されています。なお老神温泉観光協会のサイトには「源泉かけ流しの温泉」という表記もありますが、この記事は施設自身が公式サイトに書いている内容を根拠にしています。
Q. 泉質と硫黄の濃さは? A. 単純硫黄温泉(低張性弱アルカリ性温泉)です。館内に掲示された分析書(平成25年9月11日調査)では硫化水素イオン2.1mg/kg・遊離硫化水素0.1mg/kgで、合計2.2mg/kg。療養泉の硫黄基準2.0mg/kgをわずかに上回る値です。溶存物質は0.44g/kgでした。
Q. 男湯と女湯は決まっていますか? A. 日替りの入替制です。玄関に「本日の日替り湯」の掲示があり、谷の湯と滝の湯が入れ替わります。
Q. 「湯本花亭」と書かれているのを見ますが、どれが正しいですか? A. 正しくは「湯元華亭」です。読みは「ゆもとはなてい」で、レシートの店名にもそのふりがなが印字されています。
Q. 入館料はいくらですか? A. 大人(中学生以上)1,000円、子供(小学生)500円、幼児(0〜6歳)無料です(入湯税込・2026年8月時点)。支払いは現金のみで、館内にその表示があります。
Q. 休館日はいつですか? A. 水・木・金が休館です(祝日は営業)。ただし館内メンテナンスにともなう臨時休館が出ることがあるため、公式サイトのお知らせ欄かInstagramで確認してから行くのが確実です。
Q. 空いている時間帯は? A. 月曜に訪問した際は、開館の11時に入って浴室に1人だったのは最初の10分ほどで、湯から上がって着替えている頃には10人ほどになっていました。空いているのは開館直後の短い時間だけです。
Q. 食事はできますか? A. 館内に食事処があります。蕎麦・うどんが中心で、食事も飲み物もラストオーダーは15時です。
Q. 個室は使えますか? A. 有料個室があります。8畳が2時間2,000円、10畳が2時間3,000円、延長は1時間ごとに1,000円/1,500円です(2026年8月時点)。
基本データ|老神温泉 湯元華亭の日帰り入浴(立ち寄り湯)・料金・泉質
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 老神温泉 湯元華亭 |
| 所在地 | 群馬県沼田市利根町大楊1519-4 |
| 電話 | 0278-56-4126 |
| アクセス | 関越道 沼田ICから国道120号(日光・尾瀬方面)経由で約13km・車で約20分/JR上越線 沼田駅から関越交通バス「老神温泉」経由路線(公式案内)/吹割の滝から約5km・車で10分 ※距離と所要時間は2026年8月にGoogleマップで実測 |
| 営業時間 | 11:00〜19:00(最終入館18:00・食事L.O.15:00)/水・木・金 休館(祝日は営業) |
| 料金 | 大人(中学生以上)1,000円/子供(小学生)500円/幼児(0〜6歳)無料(入湯税込・2026年8月時点) |
| 個室 | 8畳 2時間2,000円(延長1時間1,000円)/10畳 2時間3,000円(延長1時間1,500円) |
| 支払い | 現金のみ(館内に表示あり・2026年8月時点) |
| 泉質 | 単純硫黄温泉(低張性弱アルカリ性温泉) |
| 源泉 | 老神温泉 2号泉(泉温41.5℃・pH8.4・利用量140L/分・動力揚湯) |
| 湯づかい | 循環ろ過・塩素消毒・源泉減少時は加温加水(公式サイト記載) |
| 公式 | https://hanatei.info/ |



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