
日曜の朝9時半ごろ、みなかみ町の猿ヶ京温泉にある「猿ヶ京住民センター共同浴場」へ。住民センターの1階が浴場で、受付に人はいない。料金箱に400円を入れて、自分で入る。運営は猿ヶ京区で、掲示には「猿ヶ京区」「猿ヶ京区長」の名がある。源泉名は「共有泉湯島」。同じ猿ヶ京温泉の湯元 長生館が引いているのと同じ源泉で、掲示の分析値は泉温55.5℃、pH7.6。浴室は男女別で、男湯の浴槽は一つ。私が入った時は体感46℃だった。
先に結論。
- 400円を料金箱に入れる無人の共同浴場。営業は6時30分から22時まで。石鹸もシャンプーも備え付けは無い
- 温泉利用状況の掲示は、加水・加温・循環ろ過・入浴剤・塩素系薬剤の5項目すべて「していません」。浴槽の湯を毎日全部入れ替えるから塩素を使わない、と書いてある
- 湯は無色透明で匂いも無く、湯口には白い析出物がざらざらと育っている。熱ければ奥の水道から自分で水を足す
石段を上がって、料金箱に400円


建物は白壁に木の柱を見せた2階建てで、2階の庇に「猿ヶ京住民センター」の看板が掛かる。道路からは石段を上がる。駐車場は見当たらなかったので、車なら停める場所を先に考えておいたほうがいい。浴場の入口は1階で、戸を開けると小さな受付の棚がある。

棚には「営業時間 6時30分〜22時まで」の紙と、「入浴料金のご案内」として大人400円、小学生以下200円と書かれた紙、それに木の「入浴料金箱」が並ぶ。料金のご案内の差出人は猿ヶ京区。人はいないので、400円を箱に入れる。見ているのは、沼田警察署の「防犯カメラ作動中」のステッカーだけだ。お釣りは出ない造りなので、小銭を用意していく。
同じ棚には「刺青、タトゥーのある方並びに泥酔の方の入浴は固くお断りしております」の掲示もあり、こちらの差出人は猿ヶ京区長だ。消火器と手指消毒も並んでいた。
木の梁の下に、浴槽が一つ


男湯は、太い木の梁をそのまま見せた高い天井の下に、緑の丸タイルで縁取った浴槽が一つ。壁は板張りで、腰の高さまで茶色のタイル。窓は一つで、電気は点けなかったが、朝の光で十分明るかった。洗い場には椅子が一つあるだけで、シャワーは左手の壁に一つ。

湯は奥の木枠に通した鉄管から、絶えず浴槽に落ちている。湯口の周りは白い析出物が厚く層になり、触るとざらざらした塊だ。この白い層は、湯が注がれ続けて初めて育つ。長生館では内湯(大浴場)の湯口に同じように厚い白い層が育っていて、野天風呂の湯口は薄い結晶層だった。
湯は無色透明で、匂いも味も無い。浴槽の湯は体感で46℃。湯口の湯は、55℃くらいはあった感触で、掲示の泉温55.5℃と矛盾しない。温度計は無いので、どちらも私の肌の感覚だ。私は水を足さずに入ったが、これは熱い湯に慣れた人の入り方で、勧めはしない。環境省の浴用の注意では、かけ湯で温度に慣らし、入浴時間は初めのうち3〜10分にとどめ、高齢者や高血圧、心臓病のある人、脳卒中を経験した人は42℃以上の高温浴を避けるとされている。熱いと感じたら、奥の水道から水を足す。


その水の足し方にも、区の決まりがある。脱衣所と浴室の間の戸に貼られた張り紙は「利用者の皆さんへ 水道光熱費の節約の為 シャワーの利用は洗髪のみでお願いします 尚、浴槽への加水はなるべく奥の水道をご利用下さい」。浴槽の縁には水色のホースが伸びていて、これが加水用だ。

同じ戸には赤い文字で「注意」の紙も貼ってあり、水のホースを浴槽の縁にかけたまま出ないでほしい、という趣旨だ。理由は書いていないが、隣の張り紙が水道光熱費の節約を掲げているので、同じ趣旨だと私は読んだ。
掲示の5項目がすべて「していません」

脱衣所の温泉成分等掲示表には、温泉利用状況の欄がある。5項目すべて「していません」。転記する。
- 加水していません
- 加温していません
- 循環ろ過装置は使用していません
- 入浴剤は入れていません
- 浴槽水を毎日完全に換えて浴槽を十分に清掃しているため、塩素系薬剤は使用していません
源泉から落ちた湯がそのまま浴槽に溜まり、あふれて捨てられる。それを毎日全部抜いて洗う。私が源泉かけ流しの条件にしている掲示の5項目を、この浴場は文字で満たしている。ただし「加水していません」は施設側の運用の話で、浴槽の縁のホースで客が水を足せば、その時の湯は薄まる。

塩素を使わない浴場で気になるのがレジオネラ属菌だが、受付の壁にレジオネラ検査結果報告書が貼ってある。採水は2025年6月30日、報告は7月16日、結果は「検出されず」(定量限界 10 cfu/100mL)。塩素を使わない理由として掲示にあるのは毎日の完全入替で、少なくとも採水時点で菌が出ていなかったことを示すのがこの検査結果だ。
泉質データ(平成14年11月8日分析)
掲示の分析は平成14年11月8日、社団法人群馬県薬剤師会。男湯の掲示の値をそのまま転記する。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 源泉名 | 共有泉湯島 |
| 泉質 | ナトリウム・カルシウム−硫酸塩温泉(弱アルカリ性低張性高温泉) |
| 泉温 | 55.5℃(分析時) |
| pH | 7.6 |
| 成分総計 | 1.21 g/kg |
| 溶存物質 | 約1,204 mg/kg(陽イオン356+陰イオン783+非解離成分65.4の合算) |
| 主要イオン | Ca²⁺ 218・Na⁺ 130・K⁺ 7.03/SO₄²⁻ 652・Cl⁻ 100・HCO₃⁻ 28.7(mg/kg) |
| メタけい酸 | 54.3 mg/kg |
溶存物質が1g/kgを超えるので、療養泉の基準(環境省の指針で溶存物質1g/kg以上など)は満たす。硫酸イオン652 mg/kgが主で、塩化物イオン100 mg/kgは泉質名に入らない量だ。
適応症の欄(昭和45年8月10日 群馬県決定)には、この温泉固有の適応症は空欄で、一般的適応症として神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、虚弱児童、慢性婦人病、きりきず、やけど、慢性皮膚病、動脈硬化症が並ぶ。禁忌症は急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾病、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾病など。昭和45年決定の旧様式なので、現在の環境省基準の項目とは違う。効能は掲示の転記として読んでほしい。
長生館と同じ分析書。泉質名の順が違う
この掲示の数値は、長生館の大浴場に貼ってある共有泉湯島の掲示(同じ平成14年分析)と、泉温、pH、各イオンの値まで全部一致する。同じ分析書を写した掲示だ。
ところが泉質名の書き方が違う。住民センターの掲示は「ナトリウム・カルシウム−硫酸塩温泉」、長生館の掲示は「カルシウム・ナトリウム−硫酸塩温泉」で、陽イオンの順が逆になっている。数値で見ると、カルシウム218 mg/kgはミリバル(電荷を考えた当量)に直して約10.9、ナトリウム130 mg/kgは約5.7で、カルシウムの方が多い。どこかの転記で順が入れ替わったのだろう。この記事は、目の前の掲示のとおりに書く。適応症の決定年月日も、住民センターの掲示は昭和45年8月10日、長生館の現行掲示は昭和49年11月12日と別だ。
入浴心得の五か条と、区の決まり
浴室の壁に「入浴心得」の板が掛かる。入浴前によく洗う事、タオルは浴そう内に入れぬ事、浴そう内でひげをそらない事、浴そう内で歯をみがかない事、浴そう内でマタを洗わぬ事。赤い字で「入浴の方は必ず守る事」、最後に「皆さんの共同風呂です 他人に迷惑な行為はせず 常に清潔を心がけましょう」。
区の共同風呂に、外から入らせてもらう。掲示の決まりはこの五か条と、受付と戸に貼られた紙の分だけ。それだけ守れば入れる。私が入った日曜の朝は誰もおらず、泉温55.5℃の源泉が落ちる音だけだった。
猿ヶ京で合わせて回る
猿ヶ京温泉の日帰りで、私が掲示を確かめた源泉は三つある。共有泉湯島はこの住民センターと湯元 長生館(野天風呂500円・内湯1,000円)が使い、長生館の掲示も5項目すべて「していません」だ。温泉農家民宿 はしばは「猿ヶ京源泉1号井戸・2号井戸の混合泉」で、こちらはナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉。同じ猿ヶ京の公衆浴場いこいの湯(300円)は「猿ヶ京温泉 村有1号」で、いこいの湯には湯づかいの掲示が無い。同じ温泉地で源泉名が三つ。湯づかいは、掲示5項目がすべて「なし」の3軒(住民センターは毎日の完全入替、はしばは一日おきの完全換水)と、掲示の無いいこいの湯に分かれる。源泉が三つある温泉地は、続けて回ると湯の違いが肌で分かる。
猿ヶ京温泉が昭和33年の相俣ダム建設で湯島温泉から集団移転し、各旅館が自前の源泉でなく共同源泉「共有泉湯島」を引いて再出発したことは、長生館の記事に書いた。この住民センターの湯も、その共同源泉を区の浴場で使っている一つだ。
まとめ|猿ヶ京の日帰りで400円、5項目「していません」の湯
猿ヶ京住民センター共同浴場は、料金箱と張り紙だけで回る区営の共同浴場だ。男湯の浴槽は一つ、受付に人もいない。あるのは、湯づかいを5項目とも「していません」と書いた掲示と、泉温55.5℃の共有泉湯島を受け続けて白く固まった湯口で、400円ならそれで十分だと思う。朝6時30分から夜10時まで開いているので、猿ヶ京に泊まらない日帰りの最初にも、最後にも使える。
ワンコイン以下で入れる群馬の湯は群馬の無料〜ワンコイン温泉18湯に、硫酸塩泉の湯どうしの比較は群馬の硫酸塩泉 日帰り比較に並べている。
▶ 猿ヶ京住民センター共同浴場のpH・メタけい酸・溶存物質を群馬の他の湯と一枚の表で並べた比較は群馬の源泉かけ流し52湯 泉質比較データにまとめています。
▶ みなかみの日帰り温泉4選|500円〜の源泉かけ流しと独湯
▶ 群馬の貸切・個室で入れる源泉かけ流しまとめ(家族風呂・貸切風呂で独り占めできる施設を集めている)
よくある質問
Q. 猿ヶ京住民センター共同浴場は地元の人以外も入れますか? A. 入れます。会員制の掲示は無く、受付は無人で、料金箱に大人400円(小学生以下200円)を入れて入る方式です。掲示の決まりは、刺青・タトゥーのある方と泥酔の方はお断り、シャワーは洗髪のみ、浴槽への加水は奥の水道から。入浴心得の板も浴室にあるので、地元の共同風呂に入らせてもらう気持ちで使ってください。石鹸・シャンプーの備え付けは無いので持参してください。
Q. 猿ヶ京住民センター共同浴場の料金と営業時間は? A. 大人400円、小学生以下200円で、料金箱に入れます(お釣りは出ないので小銭を用意)。営業時間は6時30分から22時までです(2026年9月時点の現地掲示より)。定休日の記載は掲示にありませんでした。
Q. 猿ヶ京住民センター共同浴場は源泉かけ流しですか? A. 掲示の上ではそうです。温泉成分等掲示表の温泉利用状況は、加水・加温・循環ろ過・入浴剤・塩素系薬剤の5項目すべて「していません」です。浴槽水を毎日完全に換えて清掃するため塩素を使わない、と掲示にあり、レジオネラ検査結果報告書(2025年6月採水)は「検出されず」でした。源泉は共有泉湯島(55.5℃・pH7.6)。熱い時は客が奥の水道から水を足す造りです。
Q. 猿ヶ京住民センター共同浴場のお湯は熱いですか? A. 熱いです。私の訪問時は浴槽が体感46℃でした(温度計は無いので肌の感覚です)。無色透明で匂いも無く、湯口には白い析出物が育っています。
基本データ表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 猿ヶ京住民センター共同浴場(運営 猿ヶ京区) |
| 所在地 | 群馬県利根郡みなかみ町猿ヶ京温泉1165-2(受付の公衆浴場許可証の所在地。新治村時代の表記を現行の地名に直した。地図アプリでは1165-5 1階) |
| 営業時間 | 6時30分〜22時(現地掲示)。定休日の記載なし |
| 料金 | 大人400円・小学生以下200円 ※2026年9月時点の現地掲示 |
| 支払い | 受付の料金箱に現金を入れる。無人・お釣りなし |
| 駐車場 | 見当たらなかった(2026年9月時点)。建物の前は道路で、私が見た範囲では停める場所が用意されていない |
| 泉質 | ナトリウム・カルシウム−硫酸塩温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)※掲示の表記 |
| 源泉 | 共有泉湯島。泉温55.5℃・pH7.6・成分総計1.21 g/kg・溶存物質 約1,204 mg/kg(平成14年11月8日分析・社団法人群馬県薬剤師会) |
| 湯づかい | 掲示の温泉利用状況:加水・加温・循環ろ過・入浴剤・塩素系薬剤の5項目すべて「していません」(浴槽水を毎日完全入替)。男女別の内湯(男湯は1槽・女湯は未確認)・木枠の湯口から注湯・浴槽脇に加水用の水道とホース |
| 衛生 | レジオネラ検査結果報告書(2025年6月30日採水)「検出されず」を受付に掲示 |
| 設備 | 洗い場は椅子1脚・シャワー1つ。石鹸・シャンプー・ドライヤーの備え付けなし |
| 利用条件 | 刺青・タトゥーのある方、泥酔の方は入浴不可(掲示)。シャワーは洗髪のみ、加水は奥の水道から |
| 電話 | 0278-25-4777(地図アプリ表示。浴場に電話番号の掲示なし) |



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