
日曜の朝、みなかみ町の猿ヶ京温泉にある町の公衆浴場「いこいの湯」へ。番台に人はいない。券売機で300円の入湯券を買い、木箱に入れて、あとは自分で入る方式だ。湯は内湯1槽だけで、源泉名は「猿ヶ京温泉 村有1号」。同じ猿ヶ京でも、長生館の「共有泉湯島」や、はしばの「1号井戸・2号井戸」とは別の源泉名で、掲示の分析書は泉温57.7℃、pH7.5。
先に結論。
- 300円で熱い硫酸塩・塩化物温泉に入れる(私の訪問時は体感50℃超)。設備は最小限で、石鹸もシャンプーも無い
- 湯づかい(加水・加温・循環・消毒)の掲示は無い。注ぎ続ける湯口と、浴槽脇の水道の蛇口が手がかりのすべて
- 看板の開館は午前10時。私が行った日は10時前に戸が開いていたが、時刻は看板を正とする
券売機で買って、木箱に入れる


建物は木造の平屋で、正面の破風に「いこい乃湯」の看板が掛かる。玄関脇の木の看板には、営業時間が午前10時から午後10時、料金が大人300円、子供(小学生)100円、回数券12枚3,000円とある。道路沿いの白い看板も同じ内容だった。
着いたのは10時前。開館と同時に入れば独湯だろうと踏んでいたら、10時前なのに戸は開いていて先客が3人。地元の朝は私より早い。


戸を開けると券売機がある。大人300円、小人(小学生以下)100円のボタンが並び、硬貨のほかに千円札が使える(二千円札も可の表示)。看板は「子供(小学生)」、券売機は「小人(小学生以下)」で、未就学児の料金は掲示上はっきりしない。まとめ買いの枚数ボタンもある。買った券は、番台の上に据えられた木箱に入れる。札には「入湯券をお入れ下さい。」。私がいた間、番台には誰もいなかった。支払いはこの券売機だけで、現金しか使えない。
館内は板の間と畳。ロッカーは100円硬貨

番台の奥は板の間で、畳の小上がりに低いテーブルが一つ。壁際にはmeijiの飲料自販機と、100円硬貨を1枚入れる小さなロッカーが並ぶ。浴室の入口は「女湯」「男湯」の木札だけで、暖簾は無い。壁には月謝会員の名札板が掛かり、「ご利用の際は会員証を」とあるので、地元の常連向けに月ぎめの制度があるようだ。平成20年のレジオネラ属菌検査の成績書(不検出)も貼ってある。
浴室は内湯1槽。湯口の周りが茶色に染まる

浴室は内湯が1槽だけ。白いタイルの床に、木の縁を回した正方形の浴槽が据えてあり、奥の壁の角から湯が1本落ちている。洗い場はハンドシャワーが1基で、石鹸もシャンプーも備え付けは無い。持参が前提だ。ドライヤーも無い。
湯は無色透明で、とろみは無い。そして熱い。浴槽の湯は、体感で50℃を超えていた(温度計は無いので、あくまで肌の感覚)。浴槽の右脇には水道の蛇口があり、熱ければここから水を足す造りだろう。私は足さずに入ったが、これは熱い湯に慣れた人の入り方で、勧めはしない。環境省の浴用の注意では、かけ湯で温度に慣らし、入浴時間は初めのうち3〜10分にとどめ、高齢者や高血圧、心臓病のある人、脳卒中を経験した人は42℃以上の高温浴を避けるとされている。熱いと感じたら蛇口の水で薄める。それがこの蛇口の役目だろう。上がった後は、肌がキリッとさっぱりする。
湯口の周りはタイルが茶色に染まり、湯が落ちる線に沿って析出物が層になっている(写真1)。析出は、湯が絶えず注がれて初めて育つ。湯づかいの掲示は館内に無いが、注ぎ続ける湯口と浴槽脇の蛇口という造りは、加温も循環もせず、熱ければ客が水で調整する共同浴場の型に見えた。ただしこれは造りから私が推測しただけで、掲示の裏付けは無い。だからこの記事では「かけ流し」と断定しない。
泉質データ(平成4年8月19日分析)

掲示は群馬県の「ご存じですか 上手な温泉利用法」の様式。源泉名は猿ヶ京温泉(村有1号)で、施設名の欄は手書きで「猿ヶ京ふれあいの湯」となっている。看板は「いこいの湯」だが、浴槽は一つで、館内の分析書もこの1枚だけなので、掲示の値をそのまま転記する。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 泉質 | ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉 |
| 泉温 | 57.7℃(分析時) |
| pH | 7.5 |
| 成分総計 | 1.26985 g/kg |
| 溶存物質 | 約1,268 mg/kg(陽イオン396.05+陰イオン779.5+非解離成分92.1の合算) |
| 主要イオン | Na⁺ 201・Ca²⁺ 174・K⁺ 19.1/SO₄²⁻ 511・Cl⁻ 202・HCO₃⁻ 64.1(mg/kg) |
| メタけい酸 | 70.9 mg/kg |
| 分析 | 平成4年8月19日・群馬県衛生環境研究所 |
溶存物質が1g/kgを超えるので、療養泉の基準(環境省の指針で溶存物質1g/kg以上など)は満たす。硫酸イオン511 mg/kgが主で、塩化物イオン202 mg/kgが続く組成だ。
適応症の欄(平成6年1月10日 群馬県決定)には、この温泉固有の適応症として「きりきず、やけど、慢性皮膚病、動脈硬化症」、一般的適応症として神経痛、筋肉痛、冷え症などが並ぶ。固有の禁忌症は「悪性腫瘍」、一般的禁忌症には急性疾患、重い心臓病、妊娠中(とくに初期と末期)などが挙げられている。平成6年決定の旧様式なので、現在の環境省基準の項目とは違う。効能は掲示の転記として読んでほしい。
猿ヶ京の源泉は一つではない
猿ヶ京温泉で私が掲示を確かめた源泉は、これで三つになった。
| 施設 | 源泉名 | 泉質 | 泉温 | pH |
|---|---|---|---|---|
| いこいの湯 | 猿ヶ京温泉 村有1号 | ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉 | 57.7℃ | 7.5 |
| 湯元 長生館 | 共有泉湯島 | カルシウム・ナトリウム−硫酸塩温泉 | 55.5℃ | 7.6 |
| 温泉農家民宿 はしば | 猿ヶ京源泉1号井戸・2号井戸の混合泉 | ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉 | 53.7℃ | 7.8 |
硫酸塩が主役なのは三つとも同じで、陽イオンの順(ナトリウムが先かカルシウムが先か)と、塩化物が泉質名に入るかどうかで分かれる。「村有」の由来は掲示に書かれていない。
駐車場と目印


建物の前が駐車場で、私の実感では3台分。切り返しの余裕が少ないので、大きい車はバックで入れるのが無難だった。道路沿いに白い看板が立っているので、これを目印にする。
まとめ|300円で、村有1号の熱い湯
いこいの湯は、券売機と木箱だけで回る町の公衆浴場だ。浴槽は一つ、石鹸も無い、湯づかいの掲示も無い。あるのは57.7℃の村有1号源泉と、それを受け続けて茶色に染まった湯口で、300円ならそれで十分だと思う。夜10時まで開いているので、猿ヶ京に泊まらない日帰りの締めにも使える。
猿ヶ京で湯を比べるなら、湯元 長生館の野天風呂(共有泉湯島。同じ源泉は猿ヶ京住民センター共同浴場でも400円で入れる)と、温泉農家民宿 はしば(1号井戸・2号井戸の混合泉)を合わせて回ると、源泉ごとの違いが分かる。ワンコイン以下で入れる群馬の湯は群馬の無料〜ワンコイン温泉18湯に、硫酸塩泉の湯どうしの比較は群馬の硫酸塩泉 日帰り比較に並べている。
よくある質問
Q. 猿ヶ京いこいの湯の料金と営業時間は? A. 大人300円、子供(小学生)100円で、回数券は12枚3,000円。営業時間は午前10時から午後10時です(2026年9月時点の現地看板より)。定休日の記載は看板にありませんでした。
Q. いこいの湯の湯づかい(加水・循環・消毒)は? A. 館内に温泉利用状況の掲示は無く、私の訪問では確認できませんでした。壁の角の湯口から湯が注がれ続け、浴槽脇に水道の蛇口があって、熱ければ客が水を足す造りです。源泉は猿ヶ京温泉 村有1号(57.7℃・pH7.5・ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉)。
Q. いこいの湯の支払いは現金だけですか? A. 券売機で入湯券を買い、番台の木箱に入れる無人方式です。券売機は硬貨と千円札(二千円札も可の表示)で、現金以外は使えません。
Q. いこいの湯に石鹸やシャンプーはありますか? A. 備え付けはありません。洗い場はハンドシャワー1基だけなので、持参してください。ドライヤーもありません。
基本データ表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 猿ヶ京公衆浴場 いこいの湯(みなかみ町公衆浴場・指定管理者 猿ヶ京区) |
| 所在地 | 群馬県利根郡みなかみ町猿ヶ京温泉346 |
| 営業時間 | 午前10時〜午後10時(現地看板)。定休日の記載なし |
| 料金 | 大人300円・子供(小学生)100円・回数券12枚3,000円 ※2026年9月時点の現地看板 |
| 支払い | 券売機(硬貨・千円札。二千円札も可の表示)で入湯券を買い、木箱に投函。現金のみ |
| 泉質 | ナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物温泉 |
| 源泉 | 猿ヶ京温泉 村有1号。泉温57.7℃・pH7.5・成分総計1.26985 g/kg・溶存物質 約1,268 mg/kg(平成4年8月19日分析・群馬県衛生環境研究所) |
| 湯づかい | 温泉利用状況の掲示なし。内湯1槽・壁の湯口から注湯・浴槽脇に水道の蛇口 |
| 設備 | 洗い場はハンドシャワー1基。石鹸・シャンプー・ドライヤーの備え付けなし。100円硬貨のロッカー・飲料自販機あり |
| 駐車場 | 建物前に3台分ほど(実感)。大きい車はバックで入れるのが無難 |
| 電話 | 0278-66-0296 |



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