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老神温泉 石亭の日帰り入浴|メノウ風呂と非加温かけ流し

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メノウの原石が壁一面に埋め込まれた内湯。無色透明の湯
メノウの原石が壁一面に埋め込まれた内湯。無色透明の湯

木曜の昼、老神温泉の石亭旅館で日帰り入浴してきた。宿の立ち寄り湯なので、朝のうちに電話で確認したら「今日は宿泊のお客さんが14時頃に来るので、その前までなら」とのこと。この「電話してから行く」が石亭の正解だと、あとでご主人の話を聞いて確信することになる。

  • 壁一面にメノウ(瑪瑙)の原石を埋め込んだ「宝石風呂」が名物の、昭和の風情が残る宿
  • 泉質はアルカリ性単純硫黄温泉(pH8.5)。夏は加温なし・加水なし・循環なし・消毒なしの源泉かけ流し(掲示で確認)
  • 59.1℃の源泉を、500m先からの自然落下と源泉の量だけで適温にする湯守の仕事
  • 日帰り1,000円・11:00〜18:00。定休日はないが湯を抜く日がある=行く前に電話を

料金・営業情報は2026年8月時点(現地掲示・公式サイトより)。

壁一面のメノウ風呂|「宝石風呂」は伊達じゃなかった

内湯の湯口。白い析出物がびっしり付いた石組みと黒石
内湯の湯口。白い析出物がびっしり付いた石組みと黒石

この日案内されたのは男湯側(掲示の様子から、男女入れ替え制とみられる)。内湯に入ると、壁とコーナーの湯口まわりに、赤・緑・茶のメノウの原石がびっしり埋め込まれている。公式サイトいわく「宝石風呂と言われるメノウの石を埋め込んだ壁」。原石をひとつずつ壁に貼り込んだ浴室は、豪華というより手仕事の年季を感じる造りだ。

そして湯口は白い析出に厚く覆われている。無色透明の湯だが、通ってきた成分の痕跡は隠せない。

露天風呂は「ある」。2023年の情報は古い

露天エリア。大小2つの湯船と庭石
露天エリア。大小2つの湯船と庭石

事前リサーチでは露天の情報が割れていた。2023年の訪問ブログは「内湯のみ」、旅館組合サイトは「露天あり」、公式サイトは「夏から運営開始予定」。現地の答えは明快で、露天は2槽とも稼働中だった。すだれと波板の屋根がかかった半露天スタイルで、大小2つの湯船が庭石と緑に囲まれている。

湯づかい|源泉の量だけで温度を作る

露天の湯口。バルブ付きの源泉管から丸太を伝って注がれる
露天の湯口。バルブ付きの源泉管から丸太を伝って注がれる

脱衣所の「温泉利用状況」掲示を転記する。

  • 加水の状況:加水していません
  • 加温の状況:冬期(12月〜3月)のみ、入浴に適した温度にするため加温しています
  • 循環・ろ過状況:循環ろ過装置は使用していません
  • 入浴剤:使用していません
  • 消毒処理:消毒剤は入れていません

つまり夏のいまは、加温すらしていない完全な源泉かけ流し。59.1℃の源泉をどうやって入れる温度(体感42℃前後)まで下げているのか。ご主人に聞くと「源泉は500mほど先の川の下からポンプアップして、自然落下で温度を下げている」とのこと。湯口のバルブで源泉の注ぐ量を絞ったり開けたりして、湯船ごとの温度を作っている。加水でも機械でもなく、距離と重力と蛇口。昔ながらの温度調節だ。

泉質データ|アルカリ性単純硫黄温泉(分析書より)

脱衣所の温泉成分等掲示表
脱衣所の温泉成分等掲示表

現地掲示の温泉分析書(分析年月日:平成16年11月1日)から転記する。

項目
源泉名7号線(老神温泉)
泉質アルカリ性単純硫黄温泉
泉温59.1℃(利用施設40℃)
pH8.5
成分総計0.52g/kg
主要成分Na⁺ 132mg・Ca²⁺ 23.0mg/SO₄²⁻ 144mg・Cl⁻ 100mg・HS⁻ 3.2mg
メタけい酸63.0mg

溶存成分は0.52g/kgと薄めだが、硫化水素イオン(HS⁻)を3.2mg含み、泉質名の通り硫黄泉(療養泉)に該当する。掲示ではこの温泉固有の適応症として慢性皮膚病・慢性婦人病・きりきず・糖尿病が挙げられている(温泉法に基づく掲示より。効果を保証するものではない)。老神には昔から「脚気川場に瘡老神」——皮膚のことなら老神の湯、という言い回しが伝わる土地柄で、掲示の一行目に慢性皮膚病が来ているのはその伝承と重なる。

面白いのは香りだ。湯は無色透明で、鼻を近づけてもほぼ無臭。なのに、湯に浸かるとかすかに「温泉に来た」という気配がある。分析書を見ると理由が分かる。硫黄分はHS⁻(イオン)の形で溶けていて、卵臭のもとになる遊離硫化水素(H₂S)は0.0。アルカリ性の湯では硫黄がイオン型に寄るので、匂いは立たないのに硫黄泉ではある——この「ほぼ無臭の硫黄泉」が石亭の湯の正体だ。

昭和39年の手書き分析表が残っている

昭和39年の手書き「分析表」の掲示板
昭和39年の手書き「分析表」の掲示板

館内にはもう一枚、昭和39年(1964年)8月25日付の手書き「分析表」が掲げられている。泉温66.0度・pH8.8、性状の欄には「無色透明にして硫化水素臭あり」。40年後の平成16年版分析書と並べると、泉温は66.0℃→59.1℃、pHは8.8→8.5と数字が動いている。源泉そのものが変わったのか、分析の方法や基準が変わったのかは、二枚の板だけでは分からない。ただ、60年前の技師が筆で書いた「硫化水素臭あり」の一行と、いまのほぼ無臭の湯を突き合わせて考えられること自体が贅沢で、この板そのものが老神の湯の歴史資料だ。

浴室体験|内湯は熱め、露天でのんびり

内湯は体感43℃前後の熱めだ。

肌ざわりが面白い。pH8.5のアルカリ性というと「ぬるすべ」を期待するが、この湯はぬるっともこないし、硫酸塩泉のようにピシッときしむわけでもない。その中間の、バランスのいい肌ざわり。成分表を見れば納得で、硫酸塩も塩化物もアルカリ性も、どれか一つが突出する湯ではないのだ。

露天に移ると体感42℃前後、小さい湯船は40℃前後で、こちらは長湯向き。熱めの湯と縁の岩に腰掛けての外気クールダウンを何度か往復する、いつものやり方がよく捗る。すだれ越しの光の下、木曜の昼は最初から最後まで独泉だった。誰にも会わずに、59.1℃の源泉が自然に冷めていく湯を独り占めする。贅沢の種類としてはかなり上等な部類だと思う。

実用情報|定休日なし、ただし電話してから

日帰り入浴は11:00〜18:00・1,000円。公式サイトには「1,000円+入湯税」とあるが、今回支払ったのは1,000円ちょうどだった。2時間まで休憩室込みで利用でき、飲み物などの持ち込みもできる(ゴミは持ち帰り)。

ご主人いわく、日帰りの定休日は特にないが、お湯を抜いて掃除する日があるとのこと。宿の立ち寄り湯なので、当日の宿泊状況によっても受け入れ時間は変わる。電話(0278-25-3422)で一本確認してから向かうのが確実だ。ちなみに館内にはレジオネラ症防止対策講習の修了証も掲げられていて、小さな宿ながら衛生管理はきちんとしている。

老神・白沢の回遊動線

今日は白沢の和食とんかつ まるきちで昼を食べてから石亭に来た。国道120号でとんかつ→老神の湯という流れは、時間もちょうどよく収まる。

▶ 泉質の数値は群馬の源泉かけ流し41湯 泉質比較データに、硫黄泉どうしの比較は群馬の硫黄泉 日帰り比較に本記事の数値を収録。独泉狙いの方は貸切・個室・独湯の日帰り温泉7選もどうぞ。

まとめ|電話一本かけて行く価値のある湯

石亭の湯は、派手さはない。無色透明でほぼ無臭、成分も0.52g/kgと薄い。それでも、メノウの壁と湯口の析出、加温も消毒もしない夏のかけ流し、源泉の量だけで温度を作る湯守の手仕事——「本物の湯」の条件が静かに揃っている。島根や大分の湯治場で覚えた、あの「何もしていない湯」の空気が群馬の老神にもあった。

日帰り客への門はいつも開いているわけではない。だからこそ、電話一本かけてから行く。その一手間の先に、この湯はある。

よくある質問

Q. 石亭旅館は日帰り入浴できる? A. できます。受付は11:00〜18:00、料金は1,000円です(2026年8月時点・筆者訪問時の支払い額)。日帰りの定休日はありませんが、湯を抜く日や宿泊状況により入れない場合があるため、事前に電話(0278-25-3422)で確認するのが確実です。

Q. 石亭旅館の温泉はかけ流し? A. 掲示によると、加水なし・循環ろ過なし・消毒剤なしで、加温は冬期(12月〜3月)のみです。夏期は加温もしない源泉かけ流しです。

Q. 石亭旅館の泉質は? A. アルカリ性単純硫黄温泉(pH8.5・源泉59.1℃)です。無色透明でほぼ無臭ですが、硫化水素イオンを含む硫黄泉です(現地掲示の温泉分析書より)。

Q. 石亭旅館に露天風呂はある? A. あります。大小2つの露天風呂の稼働を確認しました(2026年8月時点・筆者実見)。

基本データ表

項目内容
施設名石亭旅館(老神温泉。別棟に「薬師の湯 石亭」の看板あり)
所在地群馬県沼田市利根町老神568
アクセス関越道沼田ICから車で約20〜25分(国道120号で老神温泉街へ)
駐車場あり(玄関前)
日帰り入浴11:00〜18:00・2時間まで(休憩室込み・持ち込み可)
料金1,000円(2026年8月時点・筆者支払い額。公式表記は「1,000円+入湯税」)
定休日なし(湯を抜く日あり=事前電話推奨)
電話0278-25-3422
支払い現金(今回1,000円)
泉質アルカリ性単純硫黄温泉(pH8.5・源泉59.1℃)
源泉7号線(老神温泉)※現地掲示表記
湯づかい加水なし・循環なし・消毒なし・加温は冬期のみ(掲示より)
宿泊素泊まり対応(店頭看板「日帰り温泉 素泊りの宿」より)・楽天トラベルに掲載あり

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