
川原湯温泉の王湯に入ったことがある身として、同じ源泉を別の器で味わえる場所ができたと聞けば、行かないわけにはいかなかった。初訪問である。
「川原湯温泉 笹湯(ささゆ)」は、JR吾妻線 川原湯温泉駅のすぐ前にある複合施設「あそびの基地NOA(ノア)」の中の日帰り入浴施設だ。脱衣所に掛かる温泉分析書は、八ッ場(やんば)ダムの高台に移った共同浴場・王湯と同じ内容の1枚。元の湯と新湯という2つの源泉を混ぜた川原湯温泉の湯を、キャンプ場やカフェと同居する新しい浴室で浴びることになる。料金は大人990円で、王湯の約2倍。私が訪れたのは月曜(祝日)の17時ごろで、上がるまでずっと貸切だった。
この記事で分かること。
- 湯口の額に書かれた「源泉100%のかけ流しをこころがけ、ときに加水」という掲示の中身と、湯口の左下から水が出ていた実際の様子
- 分析書の数値(源泉75.3℃・pH7.41・溶存物質2.12g/kg)と、療養泉として掲示されている適応症・禁忌症
- 内湯と露天はどちらも41度(壁掛け温度計の目視)で、硫化水素臭がどこから来たか
- 受付・鍵・最終受付17時・支払い方法と、王湯との違いの一覧
笹湯とは|旧温泉街の第二共同浴場の名を継いだ、キャンプ場の中の湯

あそびの基地NOAは、キャンプ場・バーベキュー場・笹湯カフェ・電動アシストのレンタサイクル・小さなクラフトビール醸造所(川原湯温泉醸造舎)が同じ敷地に集まった施設で、運営は株式会社NOA。笹湯はその中の温泉棟にあたる。館内の木板には「旧温泉街にあった第二共同浴場『笹湯』の名称を復活し、キャンプ場バーベキュー場利用者は勿論、日帰り利用も可能」とある。旧温泉街には第一共同浴場の王湯のほかに、第二共同浴場の笹湯があって、その名前を引き継いだ、ということだ。

川原湯温泉そのものは、1193年(建久4年)に源頼朝が狩りの途中で湯気を見つけたと伝わる湯で、館内の掲示にも「以来八百有余年」と書かれている。この頼朝の伝承は草津と沢渡にも残っていて、3つの湯を1日で回る道筋は別の記事にまとめた → 源頼朝ゆかりの温泉めぐり|草津・沢渡・川原湯を日帰りで。柔道の嘉納治五郎が通った温泉としての歴史も、給水台の横の額と壁のパネルに詳しい。
場所は川原湯温泉駅の目の前で、群馬県観光公式サイトの案内では駅から徒歩約1分、駐車場は普通車26台で無料。私は車で行った。王湯は駅から坂を上った高台にあるので、電車で来て歩くなら笹湯のほうが近い。
湯づかい|額に書かれた「源泉100%のかけ流しをこころがけ、ときに加水」
入口の看板と湯の華の額には「源泉かけ流し」と大きく書かれている。ただ、温泉法でいう利用状況の掲示(加水・加温・循環・消毒の4項目を「あり/なし」で示す札のこと)は、私が見た範囲では館内になかった。湯の扱いを施設として具体的に書いているのは、内湯の湯口に掛かる額「湯口やけど注意」だ(壁の歴史パネルにも「時折加水して湯加減をみています」の一文はある)。
笹湯の源泉である『川原湯温泉』の温度は76度です。湯口は70度ほどにてお手を触れないようお願い致します。笹湯では源泉100%のかけ流しをこころがけておりますが ときに加水をして適温適量と、衛生面の確保をしております。あらかじめご了承ください。
つまり「かけ流しを目標にしているが、ときに水を足す」という掲示だ。加温・循環・消毒については何も書かれていないので、この記事でも「していない」とは書かない。この記事では看板の「源泉かけ流し」をそのまま使わず、額の「かけ流しをこころがけ、ときに加水」までを確かな事実として扱う。
その加水は、この日は目に見えた。湯口の左下に穴が空いていて、そこから水が出ていた。湯口そのものからは、手をかざした感じでは60度くらいに思えた(額は70度ほどとする。計測はしていない)。湯口の石の下端には、白い析出(湯の成分が固まって白く残ったもの)が厚く付いていた。湯の華の額の説明では、源泉76度(分析書では75.3℃)の湯が冷たい空気や水に触れて成分が析出したものだという。成分が固まるほど源泉が当たり続けている物的な証拠として、私はこういう湯口を見ると安心する。

浴室には「湯の華」の額もあり、白い湯葉状や黒い砂状の湯の華が湯船の底に沈んだり浮いたりする、と説明されている。ただ、私が入ったときの浴槽に湯の華は見当たらなかった。
泉質データ|王湯と同じ分析書(令和2年2月13日調査)

脱衣所の分析書は、依頼者が八ッ場ダム工事事務所、源泉名は「川原湯温泉(元の湯)」と「川原湯温泉(新湯)」の2つを混ぜた混合泉(2本の源泉を混合槽で合わせた湯のこと)で、王湯に掲げられている分析書と同じ内容だ。数値を転記する。
| 項目 | 値(分析書より) |
|---|---|
| 源泉名 | 川原湯温泉(元の湯・新湯の混合泉)・2源泉とも動力揚湯 |
| 泉質 | 含硫黄-カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉(低張性中性高温泉) |
| 源泉温度 | 75.3℃(湧出地調査時) |
| pH | 7.41(試験室)/7.1(湧出地) |
| 湧出量 | 148L/分 |
| 溶存物質 | 2.12g/kg(成分総計 2.13g/kg) |
| 主な成分(mg/kg) | 塩化物イオン652.2・硫酸イオン589.0・ナトリウム339.6・カルシウム333.3・メタけい酸88.3・メタほう酸44.6 |
| 硫黄分 | 硫化水素イオン1.9・チオ硫酸イオン2.3・遊離硫化水素1.7(mg/kg) |
| 調査年月日 | 令和2年2月13日(分析終了 令和2年2月25日・登録 令和2年2月26日) |
泉質名を噛み砕くと、「硫黄を含み、陽イオンはカルシウムとナトリウム、陰イオンは塩化物イオンと硫酸イオンが主役で、濃さは体液より薄く、中性で、源泉が熱い湯」になる。低張性=体液より薄い、中性=pH7前後、高温泉=源泉42℃以上、という区分だ。pH7.41は温泉の区分では中性だが、館内の掲示「川原湯温泉笹湯の特徴」では「人体は7.4の弱アルカリ性」と同じ値だとして弱アルカリ性寄りと説明している。溶存物質(湯に溶けている成分の合計のこと)2.12g/kgは、療養泉(環境省の鉱泉分析法指針で、成分の量や温度が一定の基準を満たすと区分される温泉のこと)の基準1g/kgを超えている。基準を超えているので、分析書には泉質名と、適応症・禁忌症の別表が付いている。
館内の掲示では、川原湯温泉は「草津温泉の上がり湯」「草津の仕上げ湯」と古くから呼ばれる、とある。強い酸性の草津で湯治をした帰りに、中性の湯で体を整えたという伝承だ。掲示には草津・万座・四万との泉質比較表まで貼ってある。
適応症と禁忌症は、分析書の別表(環境省の通知に基づくもの)の記載をそのまま紹介する。泉質別の適応症として、アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・慢性湿疹・表皮化膿症・きりきず・末梢循環障害・冷え性・うつ状態・皮膚乾燥症が挙げられている。一方で泉質別の禁忌症(その湯を避けたほうがよい状態のこと)は「皮膚又は粘膜の過敏な人、高齢者の皮膚乾燥症」。同じ皮膚乾燥症でも、高齢者の場合は禁忌症の側に挙げられている。効くと断定するものではなく、公的な区分としてそう掲示されている、という意味で読んでほしい。皮膚や粘膜が過敏な人は禁忌症に挙げられているので、入る前に医師か施設に確認してほしい。湯口の額の勧めは、長湯より短時間で数回に分ける入り方だ。
浴室体験|内湯から露天へ、どちらも41度(壁掛け温度計の目視)

浴室は男女別で、それぞれ内湯が1つと露天が1つ。サウナも水風呂もない。2025年3月の水質検査結果書も、男女の内湯と露天の4槽だけを検査対象にしていた。
まず内湯に浸かった。壁掛けの温度計は41度を指していた。湯は無色透明だが、よく見ると薄く白い濁りがある。分析書の知覚は「無色澄明」なので、浴槽でわずかに白んで見えた、という私の見え方だ。
硫化水素臭(俗にいう硫黄の匂いのこと)は、湯口から出てくる熱い湯から来た。それとは別に、湯全体から独特の匂いがした。ボイラーが動いているときの匂い、と言えば一番近い。カルシウムと硫酸塩を多く含む湯に出るといわれる石膏臭(焦げたような匂いと表現されることが多い)なのかもしれない。王湯で「油のような」と書いた匂いと同じものかどうかは、私には言い切れない。


続いて露天へ。こちらも温度計は41度。屋根が架かっていて、見えるのは木々と山。木立の奥に水面らしきものがのぞくが、湖だと言い切れるほどは見えなかった。王湯の露天は木立の隙間に八ッ場あがつま湖がのぞいたが、笹湯は山が中心の露天だ。浴室にいたのは20〜30分ほどで、その間ずっと貸切だった。上がって30分ほどたったころの体は、さっぱりしていた。
館内と受付と料金|鍵を受け取って入る方式、最終受付は17時

受付は温泉棟ではなく、NOAの正面玄関カウンターで行う。男湯のドア横の掲示によれば「正面玄関に水色の垂れ幕と看板が掛かっているときは一般者の入浴が可能」で、料金は大人(13歳以上)990円・こども(12歳以下)440円(2026年10月時点)。カウンターでオレンジ色の鍵を受け取り、温泉棟のオートロックのドアを自分で開けて入る。帰りに鍵を返す。1回券なので、温泉入口のドアを出てからの再入浴はできない。飲酒後の入浴と、入れ墨・タトゥーのある人の利用は不可と掲示されている。同じ掲示に「コンパクトな入浴施設のため、入場制限をしております。混雑時はお待ちいただくことがあります」ともある。
支払いはカードで済ませた。カウンターにはクレジットカードやPayPayなどが使える表示が出ていたので、現金のみの王湯との大きな違いになる。公式サイトにはカフェやバーベキュー、レンタサイクルなどの施設利用者向けに大人660円の割引料金が書かれているが、私は確かめていない。キャンプ場の利用者は15時から21時(最終入場20時)の別枠で、キャンプ受付時に申告する方式だ。
私が着いたのは最終受付の17時ぎりぎりだった。計画どおりに見えるが、ただ遅れただけである。計画性のなさが、この日は貸切に化けた。


脱衣所は鍵付きロッカー18個にベビーベッド、ドライヤーはダイソンだった。浴室には固形石鹸が備えてあり、シャンプーなどは持ち込みか購入になる。温泉棟の入口前には「川原湯のおいしいお水」と書かれた給水台があり、その横に川原湯温泉醸造舎のクラフトビールの瓶と、嘉納治五郎の額が並んでいた。ビールは笹湯カフェで売っているとポスターにあるが、車で来ている私には縁がなく、カフェでは何も飲食していない。

王湯と笹湯|同じ源泉を、どちらで浴びるか
王湯の数値は私の王湯の記事の訪問時のもの。料金や時間は変わることがあるので、行く前に各施設で確認してほしい。
| 項目 | 王湯(王湯会館) | 笹湯(あそびの基地NOA) |
|---|---|---|
| 料金(大人) | 500円 | 990円 |
| 営業時間 | 10:00〜18:00(最終受付17:30) | 12:00〜18:00(最終受付17:00) |
| 定休日 | 毎月第3木曜・年末年始・湯かけ祭り当日 | 月曜・火曜(祝日は営業し翌日休業) |
| 支払い | 現金のみ | クレジットカード・PayPayなどの表示あり(私はカードで払った) |
| 湯づかいの掲示 | 4項目の掲示あり(加水のみ・加温循環消毒なし) | 湯口の額(かけ流しをこころがけ、ときに加水)と歴史パネルの一文 |
| 浴室 | 内湯+露天(露天から湖がのぞく)・旧温泉街の展示 | 内湯+露天(山を見る)・新しくコンパクト・壁に歴史パネル |
| 私が入ったときの混み具合(入った日時が違うので目安) | そこそこ混んでいた | 月曜(祝日)17時台はずっと貸切。掲示には入場制限の記載あり |
| 場所 | 駅から坂を上った高台 | 駅の目の前(徒歩約1分の案内) |
歴史の重みと共同浴場の空気を取るなら王湯、新しい浴室と支払いの気楽さを取るなら笹湯、と私は分けている。両方に入って匂いの違いを確かめるのも、同じ日にできる。
周辺|湯上がりの飯は八ッ場エリアで
八ッ場ダムの観光とセットなら、道の駅八ッ場ふるさと館の八ッ場食堂で名物のダムカレーを食べた記録がある → 八ッ場ダムカレー実食|道の駅八ッ場ふるさと館 八ッ場食堂。うどんなら同じ長野原町の麦の香り 八ッ場店で、コシの強い極太麺がある。洋食なら、王湯のすぐ近くのやまきぼし(駅から徒歩15分ほどの坂の上・ビーフシチューとロコモコ)がある。
まとめ|向いている人と、向かない人
向いているのは、王湯と同じ分析書の湯に駅前で浸かりたい人、現金を持ち歩かずカードや電子マネーで払いたい人、草津の帰りに、仕上げ湯と呼ばれてきた順番どおりに回りたい人、そしてNOAのキャンプ場に泊まる人だ。駅から徒歩約1分という案内なので、電車で八ッ場に来る人にも向く。
向かないのは、500円で入れる共同浴場の値段と空気を求める人(それは王湯の領分だ)、サウナと水風呂が欲しい人(どちらもない)、加温・循環・消毒まで掲示で確かめたい人(それに触れた掲示は、私が見た範囲では笹湯になかった)。この3つに当てはまらなければ、湯口の白い析出と硫化水素臭を確かめに行く価値はある。掲示には入場制限の記載があるので、私のように最終受付の時間帯なら静かに入れる、とまでは言えない。
▶ 群馬の硫黄泉をpHと硫黄の形で横並びにした比較。王湯と笹湯はここでは「中性の含硫黄」の枠に入る → 群馬の硫黄泉 日帰り比較
▶ 東京から日帰りで行く群馬の源泉かけ流し温泉【実測】(この湯を「東京駅から最短2時間18分・川原湯温泉駅徒歩約1分」の実測つきで収録)
よくある質問
Q. 川原湯温泉 笹湯は日帰り入浴できる?料金は? A. できます。あそびの基地NOAの正面玄関カウンターで受け付け、料金は大人(13歳以上)990円・こども(12歳以下)440円です(2026年10月時点)。営業は12:00〜18:00で、最終受付は17:00です。
Q. 笹湯の定休日は? A. 月曜日と火曜日が定休で、祝日は営業し、その翌日が休みになります。公式サイトの営業カレンダーで確認してから行くのが確実です。
Q. 笹湯と王湯はどう違う? A. 湯は同じ分析書の川原湯温泉(元の湯・新湯の混合泉)です。王湯は大人500円・現金のみで、加水のみの4項目掲示がある共同浴場。笹湯は大人990円で、カードや電子マネーの表示があり、湯口の額に「源泉100%のかけ流しをこころがけ、ときに加水」という趣旨の額が掛かる新しい浴室です。
Q. 笹湯にサウナや水風呂はある? A. ありません。男女別に内湯1つと露天風呂1つの構成です。
Q. 笹湯の泉質と源泉温度は? A. 含硫黄-カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉(低張性中性高温泉)で、分析書の源泉温度は75.3℃、pH7.41、溶存物質2.12g/kgです。内湯と露天の浴槽は、私が入ったとき壁掛け温度計で41度でした。
Q. 笹湯は電車で行ける? A. JR吾妻線 川原湯温泉駅の目の前で、群馬県観光公式サイトの案内では徒歩約1分です。車なら無料駐車場があり、普通車26台と案内されています。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 川原湯温泉 笹湯(あそびの基地NOA内) |
| 所在地 | 群馬県吾妻郡長野原町大字川原湯223-5 |
| アクセス | JR吾妻線 川原湯温泉駅から徒歩約1分(群馬県観光公式サイトの案内)/関越道 渋川伊香保ICから車で約60分/無料駐車場 普通車26台 |
| 営業時間 | 12:00〜18:00(最終受付17:00)。キャンプ場利用者は15:00〜21:00(最終入場20:00) |
| 定休日 | 月曜・火曜(祝日は営業し翌日休業)。営業カレンダーは公式サイトで確認 |
| 料金 | 大人(13歳以上)990円・こども(12歳以下)440円(2026年10月時点・1回券・再入浴不可) |
| 支払い | クレジットカード・PayPayなどの表示あり(私はカードで支払った) |
| 泉質 | 含硫黄-カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉(低張性中性高温泉)・療養泉 |
| 源泉 | 川原湯温泉(元の湯・新湯の混合泉)・75.3℃・pH7.41・溶存物質2.12g/kg(令和2年2月13日調査) |
| 湯づかい | 湯口の額「源泉100%のかけ流しをこころがけておりますが、ときに加水」。加温・循環・消毒の掲示は、私が見た範囲では見当たらなかった |
| 浴室 | 男女別 内湯1+露天1。サウナ・水風呂なし。固形石鹸・ドライヤー(ダイソン)あり |
| 備考 | 飲酒後の入浴不可・入れ墨/タトゥー不可。受付はNOA正面玄関カウンター(鍵を受け取る方式) |
| 公式 | https://yamba-kawarayu-noa.com/ |



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