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源泉かけ流しの見分け方|群馬の温泉の掲示で読む5つの型

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沢渡温泉の龍鳴館の公式サイトには、「源泉100%かけ流し」とある(2026年10月時点)。館内の掲示を読むと、循環利用の欄に理由が書き込んである。そして私が入ったとき、目の前の浴槽は縁から湯があふれ続けていた。

どれかが嘘だ、という話ではない。公式サイトも同じページで「湯の花が多すぎるため一部濾過させていただいております」と断っている。食い違って見えるのは、「源泉かけ流し」という言葉の意味が、一つに決まっていないからだ。

源泉かけ流しを追いかけてこのブログを書いている私にとって、ここを曖昧なままにはできない。法律と国の資料を読み直して、行き着いた答えは一つだった。

最初に見るのは、浴室や脱衣所に貼ってある掲示の「温泉利用状況」。加水・加温・循環ろ過・入浴剤と消毒の4項目だ。 湯のあふれ方や塩素の匂いだけでは、湯を戻して使っているかどうかは分からない。公式サイトの「かけ流し」は、施設によって使い方に幅がある。

この記事では、4項目の根拠になっている温泉法を確かめたうえで、群馬の温泉で私が撮ってきた掲示を5つの型に分けて読む。掲示を読んでも分からないことも、最後にまとめた。

結論|源泉かけ流しの見分け方は、掲示の4項目を読むこと

温泉の脱衣所や浴室には、「温泉成分等掲示表」といった紙が貼ってある。その中に、湯をどう使っているかを書いた欄がある。読むのは次の4つだ。

項目ひとことで言うと
加水(かすい)温泉に水を足している
加温(かおん)温泉を温めている。冷めないように温度を保つ場合も含む
循環(じゅんかん)・ろ過浴槽の湯を外に出して、また浴槽に戻している。ろ過は、その途中で汚れをこし取ること
入浴剤・消毒入浴剤を入れている。または塩素系の薬などで湯を消毒している

この4つは、施設が自主的に書いているものではない。温泉法という法律の第18条第1項が、温泉を入浴用や飲み用として客に提供する者に、成分などを施設内の見やすい場所へ掲示するよう義務づけている。何を掲示するかは、細かい決まりを定めた温泉法施行規則の第10条にあり、その第2項がこの4つだ。

しかも、やっている場合は理由も書く決まりになっている。条文の言葉では、加水・加温・循環は「その旨及びその理由」、入浴剤と消毒は「当該入浴剤の名称又は消毒の方法及びその理由」。つまり、やっているなら理由つきで書いてある。条文は環境省が公開している温泉法と施行規則で読める。

掲示の文は、どこの施設も似ている。環境省の『逐条解説 温泉法』(条文を一つずつ解説した資料)に、書き方の例が載っているからだろう。

項目書き方の例(逐条解説より)読むところ
加水「源泉温度が高いので加水しています。」「温泉の供給量の不足を補うため加水しています。」理由。熱いからか、湯の量が足りないからか
加温「(源泉温度が低いので)入浴に適した温度に保つため加温しています。」湧き出したときの温度(泉温)と見比べる
循環・ろ過「衛生管理のため、循環ろ過装置を使用しています。」「浴槽内の温度を均一に保つため、循環装置を使用しています。」あふれた湯を戻しているかどうか。「あり」なら、次の節の区分ではかけ流しに入らない
入浴剤・消毒「衛生管理のため、塩素系薬剤(オゾン、紫外線)を使用しています。」消毒の方法。循環とは別の行

法令の上では4項目だが、群馬で見る掲示表は「入浴剤の有無」と「消毒処理の状況」を別の行にして、5行で書いてあるものが目につく。後で載せる三峰の湯やリバートピア吉岡の掲示がそうだ。

「源泉かけ流し」に法律の定義はない|あるのは業界団体の用語

掲示の4項目に「かけ流し」という言葉は出てこない。温泉法にも施行規則にも、「源泉かけ流し」の定義はない。国民生活センターも、2016年12月に公表した消費者トラブルの解説(原ページは公開を終えていて、保存版で読める)で「「源泉かけ流し」については同法では定められていません」と書いている。

定義を持っているのは業界団体だ。日本温泉協会の温泉用語解説は、かけ流しを3段階に分けている。

呼び方水を足す(加水)温める(加温)
温泉かけ流し(温泉完全放流式)できるできる
源泉かけ流し(源泉完全放流式)できないできる
源泉100%かけ流し(源泉100%完全放流式)できないできない

3つに共通する条件は、浴槽に常に新しい湯を注いであふれさせ、あふれた湯を浴槽に戻して再利用しないこと。家の風呂でたとえるなら、蛇口の湯を出しっぱなしにして、あふれた分はそのまま流してしまう使い方だ。注ぐ湯が温泉であることも、条件に入っている。3つの違いは、水を足してよいか、温めてよいかだけ。

「源泉かけ流し」で温めることだけは認めている点について、協会の用語解説は「公正取引委員会では成分の変化が少ないという観点から加温に関しては可能という見解を示しています」と書いている。この見解は、協会への事前ヒアリングの中で示されたものだという注記つきだ。

同じ用語解説には、かけ流しではない方式も載っている。

  • 放流・循環併用式:浴槽に常に新しい湯を注いであふれさせているが、あふれた湯や浴槽内の湯をろ過器(汚れをこし取る装置)などに通して、再び浴槽に戻す方式
  • 循環式・循環ろ過式:常に新しい湯を注ぐことはせず、浴槽の湯を外に出して再び戻す方式

循環は、プールの水をきれいに保つ仕組みを思い浮かべると分かりやすい。水を外に出し、ろ過器に通して、また戻す。

掲示の行を、この区分に当てはめると次のようになる。

掲示の行協会の区分で言うと
循環・ろ過が「あり」かけ流しではない(放流・循環併用式か、循環式・循環ろ過式)
循環・ろ過が「なし」で、加水が「あり」「温泉かけ流し」の候補
循環・ろ過と加水が「なし」で、加温が「あり」「源泉かけ流し」の候補
循環・ろ過、加水、加温がすべて「なし」「源泉100%かけ流し」の候補

「候補」と書いたのは、掲示では決まらない条件が一つ残るからだ。新しい湯を常に注いであふれさせているかどうかは、4項目のどこにも書かれない。 循環していなければかけ流し、とは言えない。富岡市の大島鉱泉は循環も消毒もしていないが、冷たい鉱泉を沸かし、足りない分を水で足して張った沸かし湯(溜め湯)だ。新しい湯を注ぎ続ける使い方ではないので、かけ流しには入らない。ここは湯口とあふれ方を自分の目で見るか、施設に尋ねる。

ただし、これは協会の用語であって法令ではない。施設の公式サイトやパンフレットに書かれた「かけ流し」が、すべてこの区分どおりとは限らない。だから掲示を読む。

循環が悪いという話ではない。4項目が掲示に加わったのは2005年で、経緯は後半に書く。そのときに環境省の審議会(専門家が集まる会議)がまとめた報告(答申)は、循環ろ過方式と源泉かけ流し方式について「どちらの方式が一義的に他より優れているという性格のものではない」と書いている。かみ砕けば、どちらが上と決められるものではない、ということだ。適切に管理された循環ろ過は、温泉資源の保護と衛生の確保のための重要な手段だ、とも。私がかけ流しを選ぶのは好みの話で、その好みに合う湯を探すために掲示を読んでいる。

群馬の温泉の掲示を、5つの型で読む

ここからは実物を見ていく。どれも私が入浴した施設で撮った掲示だ。

型1|全部「していません」。消毒しない理由まで書いてある

水上温泉 天野屋の額に入った温泉成分等掲示表。右下に温泉利用状況の欄がある
水上温泉 天野屋の温泉成分等掲示表。右下の「温泉利用状況」に加水・加温・循環ろ過・入浴剤・消毒の記載がある

みなかみ町の水上温泉 天野屋の掲示は、こう書いてある。

  • 「加水・加温はしていません。」
  • 「循環ろ過装置・入浴剤は使用していません。」
  • 「毎日換水清掃しておりますので消毒作業はしておりません。」

4項目とも「なし」。掲示の上では、日本温泉協会の3段階でいちばん条件の厳しい「源泉100%かけ流し」の候補になる。残る条件は自分の目で見た。私が入ったとき、湯口から注がれた湯は、湯船の縁からあふれ続けていた。掲示の「なし」と、目で見たあふれ。2つがそろって、私はこの湯をかけ流しと書いている。

目を留めたいのは3行目で、消毒をしない理由として「毎日換水清掃」が書かれている。換水(かんすい)は、浴槽の湯を入れ替えることだ。していないことにも理由を添える掲示は、読む側にとってありがたい。

型2|加水あり。理由の欄で意味が変わる

八塩温泉 鬼石観光ホテルの貼り紙。加水・加温・循環・消毒剤の使用と、それぞれの理由が書かれている
八塩温泉 鬼石観光ホテルの貼り紙。4項目すべてに理由が添えてある

藤岡市の八塩温泉 鬼石観光ホテルは、4項目すべてが「あり」だ。

  • 「加水しています 温泉の供給量の不足を補うため」
  • 「加温しています 入浴に適した温度に保つため」
  • 「循環しています 浴槽内の温度を一定に保つため」
  • 「消毒剤を使用しています 衛生管理のため塩素系薬剤を使用」

言い回しは硬いが、中身は単純だ。湯の量が足りないので水を足し、入りやすい温度にするために温め、温度を一定に保つために湯を回し、塩素系の薬で消毒している。

加水の行は、理由まで読むと意味が変わる。私の過去記事から、加水の理由だけを並べてみる。

施設掲示にある加水の理由
鬼石観光ホテル(藤岡市)「温泉の供給量の不足を補うため」
せせらぎの湯(高崎市倉渕町)「源泉温度が高いため、加水をしています。」
尾島温泉 利根の湯(太田市)「塩化物の濃度が高いので加水しています。」

同じ「加水あり」でも、湯の量を補うため、熱い源泉を冷ますため、濃い成分を薄めるためと、事情は3つとも違う。せせらぎの湯は、温泉分析書(成分や温度を調べた結果の表)の泉温が62.6℃。そのままでは入れない熱さだ。加水の行は「あり・なし」で止めずに、理由まで読む。

型3|加温あり。分析書の泉温と見比べる

湯端温泉の掲示。「冷鉱泉のため加温しています」などの利用状況が書かれている
湯端温泉の掲示。「冷鉱泉のため加温しています」の一行がある

高崎市吉井町の湯端温泉の掲示は、加温の理由が短い。「冷鉱泉のため加温しています」。冷鉱泉(れいこうせん)は、冷たいまま湧いてくる温泉のこと。分析書の泉温は15.0℃だから、沸かさなければ湯にならない。

加温の行は、分析書の泉温と見比べると意味が分かる。泉温が低い冷鉱泉なら、沸かすのは入浴するための前提だ。日本温泉協会の区分でも、加温していることだけでは「源泉かけ流し」から外れない。

ただし湯端温泉の場合、同じ掲示に加水(供給量の不足を補うため)と、循環ろ過装置・塩素系薬剤の使用(温泉資源の保護と衛生管理のため)も書いてある。4項目すべて「あり」なので、かけ流しではない。加温の行だけで決めず、残りの3行も読む。

型4|同じ建物でも、浴槽ごとに違う

リバートピア吉岡の家族風呂に貼られた温泉成分等掲示表。温泉利用状況の欄に別の紙が貼り直されている
リバートピア吉岡の家族風呂の掲示表。「温泉利用状況」の欄だけ、紙が貼り直されている

吉岡町のリバートピア吉岡は、大浴場と家族風呂で掲示の中身が違う。

項目大浴場(男湯の内湯・露天)の掲示家族風呂の掲示
加水「源泉温度が高いため、地下水を加えています。」「源泉温度が高いため、水道水を加えています。」
加温「入浴に適した温度に保つため、浴槽の温度が40度以下の時加温しています。」「加温はしていません。」
循環・ろ過「衛生管理のため、循環ろ過装置を使用しています。」「循環・濾過は行っていません。」
消毒「衛生管理のため、次亜塩素酸ナトリウム(食品添加物)を使用しています。」「消毒処理はしていません。」

同じ源泉、同じ建物でも、浴槽が変われば湯の使い方が変わる。掲示表には「浴室名」や「浴槽名」の欄があるので、その掲示がどの浴槽の話なのかを先に確かめる。 施設の名前で「ここはかけ流し」「ここは循環」と覚えてしまうと、ここを見落とす。

型5|加水・加温・循環はなし。それでも塩素は使う

月夜野温泉 三峰の湯の温泉成分等掲示表。下段の温泉利用状況に、加水・加温・循環ろ過・入浴剤・消毒の5行がある
月夜野温泉 三峰の湯の温泉成分等掲示表。下段の「温泉利用状況」が5行に分かれている

みなかみ町の月夜野温泉 三峰の湯の掲示は、上の4行と最後の1行で向きが違う。

  • 「加水していません。」
  • 「加温していません。」
  • 「循環・ろ過装置は使用していません。」
  • 「入浴剤は使用していません。」
  • 「衛生管理のため塩素系薬剤を使用しています。」

湯は薄めず、沸かさず、回さず、そのうえで塩素系薬剤で消毒している。私が入ったときも、縁からのあふれは途切れなかった。かけ流しと塩素消毒は、両立する。 消毒の行と循環の行は別々に読むものだ。

厚生労働省が示している「公衆浴場における衛生等管理要領」は、浴槽の湯を塩素系の薬で消毒し、湯の中に残っている塩素の濃さ(遊離残留塩素濃度)を「通常0.4mg/L程度」に保つことを求めている。この部分は、循環式かかけ流し式かで分けた書き方になっていない。泉質などの条件で塩素系の薬が使えない場合に、別の方法で衛生を保つ道も書かれている。

よくある誤解に答える|あふれ方と匂いでは決められない

湯があふれていれば、かけ流し?

そうとは限らない。冒頭の沢渡温泉 龍鳴館がその例だ。私が入ったとき、大浴場の浴槽は縁から湯があふれ続けていた。掲示は、ロビーのような場所の壁に掛かった手書きの額「温泉の表示」で、加水も加温も「なし」。循環利用の欄には「温度を平均に保ち、湯花その他を除去し濾過きれいにする」と理由が書いてあり、括弧書きでフィルターの消毒にも触れている。湯花(ゆばな)は、湯の中にできる温泉成分のかたまりのことだ。「温泉の入替」の欄には「源泉かけ流しのため浴槽内の温泉は24時間に3回自然に入れ替っている」とある。

沢渡温泉 龍鳴館の額に入った手書きの掲示「温泉の表示」。加水・加温は「なし」、循環利用の欄と温泉の入替の欄に手書きの説明がある
沢渡温泉 龍鳴館の「温泉の表示」。循環利用の欄に理由、その下に「温泉の入替」の欄がある

新しい湯を注いであふれさせながら、ろ過して戻す。掲示のとおりなら、日本温泉協会の用語で言う「放流・循環併用式」がいちばん近い。協会の区分では、かけ流しとは別の方式だ。そしてこの方式は、定義の上でも湯があふれる。

厚生労働省の要領も、浴槽水は「常に満杯状態に保ち、かつ、十分にろ過した湯水又は原湯を供給することにより溢水させ、清浄に保つこと」としている。溢水(いっすい)は、あふれさせること。原湯(げんゆ)は、使い回しをせずに浴槽へ直接注ぐ湯のことだ。ろ過した湯であふれさせる浴槽が、最初から想定されているわけだ。

あふれた湯を浴槽に戻しているかどうかは、縁を眺めていても分からない。 掲示の「循環・ろ過」の行を読むしかない。

塩素の匂いがしたら、循環?

これも、私が入った湯では対応していなかった。

施設掲示の循環・ろ過掲示の消毒私が感じた匂い
三峰の湯(みなかみ町)なし塩素系薬剤気にならなかった
尾島温泉 利根の湯(太田市)あり塩素系薬剤きつくなかった
明和温泉 川俣の湯(明和町)あり塩素系薬剤入浴中はそれほど感じず、持参したタオルに残った

循環していない三峰の湯でも、塩素は使っている。循環している2つの湯でも、入っているあいだに匂いを強く感じたわけではない。3つとも消毒ありの掲示なのに、入浴中の匂いは「気にならなかった」「きつくなかった」「それほど感じなかった」。私の鼻は、検査機器としては採用できない。

匂いがしないからといって、消毒していないとは言えない。まして循環しているかどうかは、匂いでは決められない。 型5で見たとおり、消毒と循環は別の行だ。

公式サイトと掲示が違ったら?

館内の掲示を読む。掲示は温泉法で義務づけられたもので、環境省の事業者向けパンフレットは、掲示をしない場合や虚偽の掲示をした場合は罰則の対象になると説明している。一方、公式サイトやパンフレットの「かけ流し」には、法令の定義がない。

冒頭の龍鳴館に戻る。公式サイトの「源泉100%かけ流し」と、掲示の循環利用の記載。日本温泉協会の用語で測れば、先ほど見たとおり放流・循環併用式に近く、3段階のどの「かけ流し」にも当たらない。協会の用語解説は「源泉100%」という表記についても、「公正取引委員会では、湧出した温泉を加水・加温・循環・濾過することなく利用する場合にのみこの表記が使用できるとしています」と書いている。

ただし、協会の用語は法令ではない。この表記の良し悪しを決めるのは、この記事の役目ではない。公式サイトは一部濾過を自分で断っていて、掲示も同じ「濾過」の字で理由を書いている。湯が24時間に3回入れ替わっていることも、掲示に書いてある。

言葉の使い方には、施設ごとに幅がある。掲示の4項目は、どの施設も同じ項目で書く。 比べるなら、こちらだ。

国民生活センターの解説も、かけ流しの温泉を利用したい場合は、パンフレットやネットだけでなく直接施設に問い合わせるよう勧めていた。言葉の定義が一つでない以上、それがいちばん確実だ。

掲示を読んでも分からないこと|割合・欠落・古さ

加水の割合と、新しい湯の量

4項目が教えてくれるのは「しているか」と「なぜか」まで。どのくらい加水しているか、新しい湯を毎分どれだけ入れているかは、掲示の項目にない。

項目にしなかった理由を、審議会の答申は「気温の変化や利用者の多寡により変動する可能性があること、また、測定や検証が困難であること」と説明している。気温や混み具合で変わるうえに、測るのも確かめるのも難しい、という理由だ。だから、加水ありの湯がどのくらい薄まっているかは掲示から読めない。

龍鳴館の「24時間に3回自然に入れ替っている」のような一行は、法令が求める4項目の外の情報だ。書いてあれば、それだけ読む材料が増える。

掲示が見当たらない施設もある

中之条町の尻焼温泉 弁天の湯では、浴室で利用状況の掲示を見つけられなかった。私が見落としたのかもしれないし、別の場所に貼ってあったのかもしれない。

だから記事では、かけ流しとも循環とも書かなかった。掲示が見当たらないことだけで、施設の側に落ち度があるとは言えない。分からないときは、推測で埋めずに施設へ尋ねる。

掲示は古いままのこともあり、貼り直されることもある

型4のリバートピア吉岡の家族風呂は、掲示表の分析年月日が平成17年4月1日で、「温泉利用状況」の欄だけ新しい紙が貼ってあった。館内には令和7年の温泉分析書が別に掲示されていたので、成分の数値はそちらで読める。

温泉法は、成分の分析を10年以内ごとに受け直して、掲示の内容を変更するよう定めている。掲示を読むときは、分析年月日も一緒に見る。 古ければ、新しい分析書が別に貼られていないか探す。

もう一つ、古い証書の例がある。中之条町の尻焼温泉 星ヶ岡山荘の脱衣所には、日本温泉協会の「天然温泉」の看板が掲げてあり、その中に「温泉利用証」がある。発行は2010年、掲示有効期限は2015年。宿の旧名「関晴館」の名義で、対象は「河鹿風呂/女湯内湯」と浴槽まで書いてある。

循環装置は「なし」、給排湯方式は「完全放流式」。完全放流式は、協会の用語でかけ流しのことだ。加水は「あり」で、理由は「泉温が高いので入浴に適温にするため常時水道水を加水しています」。加温は「なし」。利用証の記載のとおりなら、協会の3段階で言う「温泉かけ流し」になる。新しい湯の注入量(毎分59.5リットル)まで載っていて、これは法令の4項目には無い数字だ。

看板の隅には、「天然温泉表示制度の見直しにより新規受付および更新手続きは、休止しております」という協会の貼り紙がある。協会のサイトによると、この天然温泉表示看板は、2019年2月28日にすべての有効期限が切れて廃止された。期限の切れた証書も資料にはなるが、いつの時点の情報かを確かめてから読む。

同じ温泉利用証は、渋川市の金島温泉 富貴の湯でも撮った。1号の露天風呂が対象で、発行は2010年。こちらは循環装置の欄が「あり」で、目的は「浴槽内の温度を均一に保つ為」と書かれている。施設のパネルは【かけ流し】なので、記事では掲示3枚を並べて読んだ。

行く前にネットで読めることもある

環境省は2024年(令和6年)6月の通知で、施設内の掲示とあわせて、掲示内容をインターネット等で公開することを「基本とする」とした(対応が難しい場合を除く)。

公式サイトに掲示の内容を載せている施設なら、行く前に4項目を読める。載っていなければ、現地で読む。

なぜ4項目が掲示されるようになったのか|2004年の表示問題

この4項目が掲示に加わったのは2005年5月24日。きっかけは前年の2004年に、各地で温泉の表示をめぐる問題が続いたことだった。長野県は白骨温泉の4事業者に、景品表示法(商品やサービスを実際よりよく見せる表示を禁じる法律)に違反するおそれがあるとして注意をしている(8月19日)。群馬県も伊香保町の7施設を立入検査し、うち5施設に注意をした(9月1日。いずれも中央環境審議会 温泉小委員会の資料より)。

同じ年の9月に、環境省が全国約2万軒の温泉利用施設に実態調査をして、6割を超える施設から回答を得ている(中央環境審議会の答申の資料より)。

行っている浴槽を持つ施設その旨を表示していた
加水32.5%16.1%
加温51.4%19.2%
循環ろ過50.4%16.0%

右の列が、回答した施設全体に対する割合なのか、左の列の施設の中での割合なのかは、資料に書かれていない。どちらで読んでも、行っているのに表示していない施設が少なくなかったことになる。

表示されないことの多かった加水・加温・循環ろ過が、翌年、掲示の項目に加わった。

まとめ|源泉かけ流しを現地で見分ける3ステップ

  1. 掲示を探す。脱衣所か浴室の壁。「温泉成分等掲示表」の下のほうか、別の貼り紙に「温泉利用状況」がある。見当たらなければ、ロビーのあたりも見る。龍鳴館の額は、脱衣所ではなくロビーのような場所に掛かっていた
  2. 4項目と理由を読む。どの浴槽の掲示かを確かめてから、循環・ろ過の行、加水の理由、加温と泉温、消毒の順に。循環・ろ過が「なし」なら、加水と加温の行で、協会の3段階のどの候補かまで分かる。そこから先は、湯口から湯が注がれて縁からあふれているかを見る
  3. 分からなければ尋ねる。掲示が見当たらない、公式サイトと違う、割合を知りたい。どれも施設に聞くのが早い。聞くなら、あふれた湯を浴槽に戻しているか、新しい湯を注ぎ続けているか、水を足しているならその理由、の3つから

掲示を6湯ぶん読み比べた記事が安中・富岡・下仁田の日帰り温泉6湯だ。6軒のうち4軒が冷鉱泉という土地で、富岡市の大島鉱泉もこの中にある。

この読み方が向いているのは、かけ流しの湯を自分で選びたい人だ。加水の割合や湯の入れ替わる速さまで数字で知りたい人には、掲示だけでは足りない。数字は施設に尋ねる。数字にならないところは、入って確かめる。

よくある質問

Q. 加温していても「源泉かけ流し」と言えますか?
A. 法律に「源泉かけ流し」の定義はありません。日本温泉協会の用語解説は、新しい湯を常に注いであふれさせ、あふれた湯を浴槽に戻さず、加水もしない方式を「源泉かけ流し」とし、加温はできるとしています。加温している場合は、その旨と理由を掲示する決まりです。

Q. 塩素の匂いがしたら循環ですか?
A. 匂いだけでは分かりません。たとえば月夜野温泉 三峰の湯の掲示は、加水・加温・循環ろ過はしておらず、衛生管理のため塩素系薬剤を使用しているという内容です。循環の有無は掲示の「循環・ろ過」の行、消毒は「消毒」の行で、別々に確かめます。

Q. 湯があふれていれば、かけ流しですか?
A. あふれているだけでは決められません。新しい湯を注いであふれさせながら、一部をろ過して浴槽に戻す方式(日本温泉協会の用語で「放流・循環併用式」)もあるためです。掲示の「循環・ろ過」の行を読んでください。

Q. 加水や循環の掲示が見当たらない施設は、どう判断すればいいですか?
A. 掲示が見当たらないだけでは判断できないので、施設に尋ねるのが確実です。見落としや、別の場所に掲示されている可能性もあります。環境省は2024年(令和6年)の通知で、掲示内容をインターネット等でも公開することを基本としており、公式サイトで読める場合もあります。

Q. 熱いので自分で水を足しました。これも「加水」になりますか?
A. 掲示の対象になる加水には当たりません。環境省の事業者向けパンフレットのQ&Aは「温泉利用者自らが加水(湯)を行うことは、掲示対象にはなりません」としています。掲示の「加水」は、施設が温泉に水を加えて提供している場合の話です。

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