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温泉のヒートショック対策|41℃目安と群馬の湯温を比べた

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「湯温は41度以下、湯につかる時間は10分まで」。冬の入浴事故を防ぐ目安として、消費者庁が示してきた数字だ。

ところが、私が群馬の温泉で撮ってきた掲示や湯温計の写真を並べ直すと、41℃以下の浴槽ばかりではない。42℃や43℃は珍しくなく、44℃を超える設定の浴槽もある。写真は残っていないが、高崎の天神の湯では、源泉浴槽の温度計が47℃を指していた。

目安が現実離れしている、という話ではない。この目安は、高齢者の入浴中の事故を減らすための注意喚起に書かれたものだ。事故が多いのは家や居住施設の浴槽だ。この目安は、温泉の浴槽を何℃にするかを決めた基準ではない。だから冬の温泉では、目安の41度と、目の前の浴槽の温度が同じとは限らない。その差を確かめるのは、入る側だ。

この記事では、入浴中の事故の数字と起きる仕組みを消費者庁と環境省の資料で確かめたうえで、群馬の温泉の湯温を、掲示や湯温計の写真に残っている値で温度帯別に並べる。そのあと、熱い湯での私の入り方と、冬の温泉で気をつける点を脱衣所から露天風呂までの順にまとめた。

※本記事は公的機関の公開資料と私の入浴体験の紹介であり、医学的助言ではない。持病のある方や治療中の方は、入浴について医師に相談してほしい。

結論|41℃は目安。私の記録では、41℃以下と言い切れる湯は少数だった

知りたいこと答え出どころ
湯温と時間の目安湯温は41度以下、つかる時間は10分まで消費者庁(2020年・2022年)、政府広報オンライン(2025年更新)
高温の湯を避ける人高齢者、高血圧、心臓病、脳卒中の経験のある方は、42℃以上の高温浴を避ける環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」
事故が多い時期11月〜4月の冬季が中心消費者庁(2020年)
群馬の温泉の湯温(私の記録)湯温計と施設の掲示14件のうち、41℃以下と言い切れるのは4件。成分の掲示などに書かれた、湯を使う場所の温度は、10件のうち9件が42℃以上この記事の2つの表(掲示・湯温計の写真)

数字の読み方は後半で整理する。まずは、なぜ冬の風呂がここまで注意されるのかを見ていく。

入浴中の事故はどれくらい起きているか|交通事故の3倍以上

消費者庁が2025年12月に出した注意喚起によると、浴槽の中で溺れて亡くなった人は、令和6年(2024年)の1年間で7,776人。厚生労働省の人口動態統計(1年間の出生や死亡を集計した国の統計)の数字だ。このうち65歳以上が7,363人で、約95%を占める。同じ年に交通事故で亡くなった65歳以上は2,103人だから、その3倍を超える。

年代別に見ると、80歳以上が4,717人(60.7%)、65〜79歳が2,646人(34.0%)。15〜64歳は393人(5.1%)で、割合は小さいがゼロではない。

冬に集中することも数字に出ている。同じ資料が紹介する東京消防庁のデータでは、令和5年に溺れる事故で救急搬送された高齢者は460人。月別に見ると、8月の5人に対して12月は85人、1月は78人だった。

月1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
搬送された高齢者(人)7862553840161159194285

(東京消防庁管内・令和5年・65歳以上。消費者庁の2025年12月の資料より。5月は40人で、4月の38人より多い)

この7,776人は、死因が「溺死」と記録された人の数だ。入浴中に心臓や脳の病気で亡くなった人まで含めると、もっと多いと考えられている。消費者庁の2020年の資料は、病死なども含めた入浴中の急死を年間約19,000人とする厚生労働省の研究班の推計を紹介している。入浴の安全についての公的情報は、温泉の効能を公的資料で読み直した記事でも扱った。

ヒートショックとは|温度差による血圧の急変で起きる健康被害

消費者庁の2022年の資料は、ヒートショックをこう説明している。

ヒートショックとは温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動する等によって起こる健康被害と捉えられており、失神したり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を起こすことがあり、特に冬場に多く見られます。

言いかえると、寒い場所と熱い湯を行き来することで血圧が急に上がったり下がったりし、そのせいで体に起きるトラブルのことだ。心筋梗塞は心臓の血管が詰まる病気、不整脈は脈が乱れること、脳梗塞は脳の血管が詰まる病気を指す。

風呂の場面に当てはめると、流れはこうなる。暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室に入ると、血圧が上がる。そのあと温かい湯につかると、今度は血圧が下がる。消費者庁の2020年の資料は、こうした血圧の変動で脳に行く血が減って意識を失うことがあり、それが入浴中に起こると溺れる事故につながると考えられている、と書いている。

なお、最新の2025年12月の注意喚起には「ヒートショック」という言葉が出てこない。原因として挙げているのは次の2つだ。

  • 暖かい室内と寒い脱衣所や浴室との温度差などによる、急激な血圧の変動
  • 熱いお湯をはった浴槽内に長くつかることによる、体温上昇での意識障害(意識がぼんやりしたり、なくなったりすること)

つまり、気をつける相手は温度差だけではない。湯そのものの熱さと、つかっている長さも原因に数えられている。2020年の資料には「42度で10分入浴すると体温が38度近くに達し」、意識障害で浴槽から出られなくなったり、浴槽の中にしゃがみ込んだりして溺れるおそれがある、とある。

もう一つ、出るときの話もある。湯の中では体に水圧がかかっている。そこから急に立ち上がると、水圧で押されていた血管が一気に広がり、脳に行く血が減って、一時的に意識を失うことがある。同じ資料が「脳が貧血状態になる」と表現している現象だ。

群馬の温泉は何℃か|掲示と湯温計の写真を並べた

では、実際の温泉は何℃なのか。これまでに書いた群馬の温泉の記事から、湯温の数字が写真に残っているものだけを抜き出した。体感で「このくらい」と書いた値は入れていない。表の1行を1件と数える。

数字の重みが違うので、表は2つに分けた。

  • 1つ目の表:浴室の湯温計と、施設が貼り出している計測値や設定温度、参考値。施設が「うちの湯はこの温度」と示している値
  • 2つ目の表:温泉成分の掲示などにある「利用施設」「使用位置」の温度。浴槽など、湯を使う場所の温度として掲示に書き込まれた値で、今日の湯温とは限らない

湯温計と、施設が示している温度|14件

温度帯施設・浴槽写真で読めた値根拠
41℃以下砦乃湯(安中)内湯冬期38.5度前後(夏期39.5度前後)施設の掲示(無加温・正午の参考値)
41℃以下幡谷温泉 ささの湯(片品)内風呂39〜40℃施設の掲示
41℃以下万座ホテルジュラク(万座)内湯40.4℃施設の掲示(12時半の計測値)
41℃以下鈴森の湯(みなかみ)露天・大きな内湯41度まで加温施設の掲示(設定)
41℃台ハタの湯(小野上温泉)個室「岩井堂」41.1℃、11分後に42.4℃湯温計
41℃台万座ホテルジュラク 露天2つ41.4℃、41.3℃施設の掲示(12時半の計測値)
41℃台せせらぎの湯(倉渕)室内風呂・露天風呂どちらも41.5℃施設の掲示(只今の温度)
41℃台砦乃湯 露天冬期41〜42度(夏期39〜40度)施設の掲示(設定)
42〜43℃台ハタの湯 個室「古城台」42.1℃湯温計
42〜43℃台弁天の湯(尻焼温泉)42.6℃湯温計
42〜43℃台御座之湯(草津)湯畑源泉の浴槽42.0〜43.0℃施設の掲示
44℃以上御座之湯 万代鉱源泉の浴槽44.0〜45.0℃施設の掲示
上限の設定三峰の湯(みなかみ)露天約42.5℃以内に設定施設の掲示
上限の設定三峰の湯 内風呂約44.5℃以内に設定施設の掲示

14件のうち、41℃以下と言い切れるのは4件だった。41℃をわずかに超えるか、またいでいるものが4件。42℃以上が4件。残る2件は三峰の湯で、「約42.5℃以内」「約44.5℃以内」という上限の設定なので、どの帯とも決められない。

浴槽の角に置かれた温度計。湯温42.6℃の表示
尻焼温泉 弁天の湯の温度計。湯温の表示は42.6℃
「入浴温度について」の掲示。内風呂約44.5℃、露天約42.5℃以内に設定とある
三峰の湯の掲示。内風呂は約44.5℃以内、露天風呂は約42.5℃以内に設定するとある

成分の掲示などに書かれた、湯を使う場所の温度|10件

施設・浴槽写真で読めた値根拠
リバートピア吉岡 男子内湯・男子露天利用施設40℃成分の掲示(平成17年分析)
星ヶ岡山荘(尻焼温泉)浴槽温度42.0℃温泉利用証(2010年発行)
相間川温泉ふれあい館(倉渕)利用施設42.0℃成分の掲示
伍楼閣(老神温泉)利用施設42.0℃成分の掲示
七福の湯 前橋店使用位置42℃成分の掲示
明和温泉 川俣の湯(HOTEL R9・川俣駅前)使用位置42.0℃成分の掲示
群馬温泉 やすらぎの湯(高崎)大浴場利用場所42度温泉利用状況の掲示
王湯(川原湯温泉)利用施設43.0℃成分の掲示
伊香保露天風呂使用位置43.5℃木札の掲示
とべの湯(鹿沢温泉)利用施設45℃成分の掲示

こちらは10件のうち9件が42℃以上だった。ただし、掲示に書き込まれた時点の値だ。川俣の湯は、掲示の「使用位置」が42.0℃なのに対して、浴室の湯温表示は41℃台だった。目安にはなるが、今日の湯温の代わりにはならない。

2つの表を合わせると、19施設で24件になる。

この表の読み方|3つの但し書き

1つ目。数字は撮った時点のものだ。 砦乃湯の掲示は、季節で温度が変わると書いている。内湯は加水も加温もしておらず、「午前・午後でも温度がかわります」とある。加温している露天は、夏期39〜40度、冬期は41〜42度を保つようにしているという。露天は冬のほうが熱く、内湯は冬のほうがぬるい。

2つ目。湯温は入っている間にも動く。 ハタの湯の個室では、部屋に入ってすぐの湯温計が41.1℃で、11分後には42.4℃を指していた。上がり続けたわけではなく、その後も41℃から42.5℃のあいだを行ったり来たりしていた。同じ浴槽が、目安の線の近くを上下していたことになる。

壁の丸型デジタル湯温計。赤いLEDで41.1℃
ハタの湯の個室の湯温計。部屋に入ってすぐは41.1℃
同じ湯温計。11分後に42.4℃
同じ湯温計。11分後は42.4℃

3つ目。これは私が行った温泉の記録で、群馬全体の統計ではない。 源泉かけ流しを目当てに回っているうえ、温度の数字が写真に残っていた浴槽だけを並べている。行き先にも、拾い方にも偏りがある。

写真は残っていないが、現地で温度計や掲示を読んで記事に書いた値もある。そのうち3つを別枠で挙げておく。

施設・浴槽現地で読んだ値読んだもの
尾島温泉 利根の湯(太田)露天40.3℃、内湯40.6℃、泡風呂40.1℃浴槽の表示
紅葉館(鹿沢温泉)浴槽温度44.8℃温泉利用証
天神の湯(高崎)源泉浴槽47℃温度計

並べて分かるのは、私の記録の範囲では、41℃以下と言い切れる湯のほうが少ないということだ。41度以下の湯を選ぶことはできる。ただ、確かめずに入れば、41℃を超えていることは珍しくない。そして、数字は浴室や脱衣所のどこかに出ていることが多い。湯温計か、掲示か、成分表の隅だ。

「41度」と「42℃」|2つの目安は誰に向けたものか

公的資料には、湯温の数字が2つ出てくる。出どころも相手も別だ。

数字書いてある資料誰に向けたものか
湯温41度以下・10分まで消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」(2020年11月)ほか高齢者と、その家族
42℃以上の高温浴は避ける環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」(2019年3月)高齢者、高血圧、心臓病、脳卒中の経験のある方

「41度以下・10分まで」は、高齢者の入浴事故を防ぐための目安だ。消費者庁の資料の脚注によると、もとは厚生労働省の研究班(平成24〜25年度)がまとめた「安全な入浴の手引き」にある。2022年の資料と、政府広報オンラインの記事(2025年11月更新)も同じ数字を載せている。

一方、2025年12月の消費者庁の注意喚起は、数字を書いていない。書き方はこうだ。

熱いお湯での入浴及び長時間の入浴は避け、湯温や入浴時間などについて温度計やタイマーを活用して見える化をしましょう

数字が消えた理由は、資料からは分からない。読み取れるのは、熱い湯と長湯を避けるという方向は変わっていないことと、感覚に頼らず温度計と時計で確かめるよう求めていることだ。

「42℃以上は避ける」は、温泉のパンフレットに出てくる線で、相手がはっきり決まっている。表の右の列のとおりだ。同じ項目には、心肺機能の弱った方は半身浴や部分浴が望ましいこと、入る時間は「なれるまで3〜10分くらいを1〜2回」「なれてきたら15〜20分くらいを2〜3回」という目安も載っている。環境省が温泉施設の注意書きについて定めた基準(2014年の通知)にも同じ項目があり、そちらでは回数は「1日当たり」と書かれている。

では、43℃の湯なら何分までか。44℃ならどうか。こうした換算は、私が読んだ消費者庁、政府広報、環境省の資料のどこにも書かれていない。環境省の基準も、入浴時間は「入浴温度により異なるが、1回当たり、初めは3~10分程度とし、慣れてきたら15~20分程度まで延長してもよい」と書くだけで、温度ごとの分数は示していない。熱い湯に「何分までなら大丈夫」という数字を、私は公的資料の中に見つけられなかった。

湯温の表で42℃以上だった浴槽は、湯がその温度のとおりなら、高齢者や高血圧、心臓病、脳卒中の経験のある方にとっては、環境省が「避けてください」と書いている温度だ。それ以外の人はどうか。消費者庁は「熱いお湯」が何℃からかを示していない。ただ、2020年の資料は41度以下を目安にし、42度で10分つかると体温が38度近くに達する例を挙げている。だから私は、42℃以上を「熱いお湯」の側と読んでいる。

熱い湯に、私はどう入っているか

私は44℃を超える浴槽にも入る。入り方は単純だ。短く入って、出る。これを繰り返す。

時間は計っていない。体感で出る。ここは消費者庁の「タイマーを活用して見える化」とは違うやり方で、人に勧められるものではない。体感がどれくらい当てにならないかは、島根の温泉で身をもって知った。

温泉津温泉の元湯で、体感は当てにならないと知った

島根県の温泉津(ゆのつ)温泉に、元湯という共同浴場がある。公式サイトによると、浴槽は「熱い湯(46~48度)」「ぬるい湯(43~44度)」「初めての方(38~40度)」の3つ。源泉の温度は49.9〜50.0度(2024年7月現在)で、源泉から浴槽までの距離は「わずか1~1.6m」。加水も加熱も冷却も循環もしていないという。「ぬるい湯」と名のつく浴槽でも43〜44度だ。

私もかつて、この元湯に通っていた。その頃、源泉はまず小さな四角い浴槽に流れ込んでいた。湯は透明に近かった。そこから隣の浴槽へ流れると、湯の色が濃くなっていた。

元湯の浴槽の並びを描いたイメージイラスト(写真ではない)。中央奥の小さな四角い浴槽が、源泉にいちばん近い
元湯の浴槽の並びを描いたイメージイラスト(写真ではない)。中央奥の小さな四角い浴槽が、源泉にいちばん近い

私の入り方はいつも同じだった。最初に、源泉にいちばん近いその小さな浴槽に入った。次に、隣の浴槽に何回か入った。最後の締めに、もう一度小さな浴槽に入った。この小さな浴槽が、公式の3つのどれに当たるのかは確かめていない。

その小さな浴槽でのことだ。我慢しながら、まだいけるだろうと思っていた。そろそろ限界だと感じて、出ようと体を動かした。その途端、まわりの湯が動いて、体が痛いほど熱くなった。

じっとしている間は耐えられても、動けば熱い湯が肌に当たり直す。じっとしていたときより、動いた途端のほうがずっと熱かった。私の「まだいける」は、出るときのぶんを勘定に入れていなかったわけだ。

体感だけで粘ると、出るときに痛い目を見る。時計のある浴室なら、時計を見るほうが確かだ。環境省のパンフレットが、慣れるまでは1回3〜10分くらいとしているのも、短く入るという点で同じ向きの話だと受け取っている。

冬の温泉での入り方|脱衣所から露天風呂までの順番で

公的資料の注意点は、家の風呂を想定したものが多い。温泉へ行く日の流れに沿って並べ直すと、こうなる。

場面やること出どころ
行く前食後すぐ、飲酒後、薬を飲んだあとの入浴は避ける消費者庁(食後・飲酒後は環境省も)
運動のあと過度の疲労時と、運動後30分間は入浴を控える環境省
入る前とあと水分をとる。入浴中も喉が渇いたらこまめに消費者庁、環境省
浴室に入ったら手足からはじめて、全身にかけ湯をする環境省、消費者庁
浴槽の前で湯温計や掲示で温度を確かめる消費者庁(温度計で見える化)
つかっている間熱い湯と長湯を避ける。目安は41度以下・10分まで消費者庁
出るとき急に立ち上がらない。手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立つ消費者庁
連れがいるとき高齢者、子ども、体の不自由な人を1人きりで入らせない環境省

家の風呂と違う点を、3つ補っておく。

脱衣所は自分で暖められない。だから、かけ湯

消費者庁の対策の1番目は「入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう」だ。家ならできるが、温泉の脱衣所や洗い場の温度は客には変えられない。

その場で自分にできるのは、かけ湯だ。消費者庁の2020年の資料は「血圧の変動を抑えるため、湯につかる前にかけ湯を入念に行いましょう」と書いている。環境省は「手足からはじめて全身に」、政府広報オンラインは心臓から遠い足先のほうから肩まで徐々に、と順番まで示している。いきなり肩までつからないための手順だと読める。

冬の露天風呂は、温度差がいちばん大きい場面

私は露天風呂の外気が好きだ。ただ、消費者庁が原因の1つに挙げているのは温度差だ。濡れた体で冬の外気の中を歩き、そこから熱い湯に入る露天風呂は、温泉の中で温度差がいちばん大きくなる場面だと私は考えている。

公的資料は露天風呂を名指ししていないので、ここは私の読み方になる。やることは内湯と同じで、かけ湯をしてから入ること、熱い湯に長くつからないこと、出るときにゆっくり立つこと。湯から上がって外気で涼むときも、急に立ち上がらない。

温泉には人の目がある。ただし「温泉のほうが安全」とは言えない

消費者庁の2022年の資料によると、65歳以上の浴槽での死亡事故(令和3年・5,097人)のうち、4,750人が家や居住施設の浴槽で起きている。約9割だ。

温泉施設の浴室には、ほかの客や従業員の目がある。家で1人で入るより、異変に気づいてもらいやすいとは思う。ただ、家の風呂と温泉では入る回数がまったく違うので、この数字から「温泉のほうが安全」とは言えない。人の目を当てにするより、連れには「先に上がる」「露天にいる」と一声かけておくほうが確かだ。消費者庁が同居者への一声を勧めているのと、同じ考え方になる。

リスクの高い人と、親を連れて行くとき

環境省のパンフレットが「温度、入り方に注意しましょう」と名前を挙げているのは、高齢者、高血圧、心臓病、脳卒中の経験のある方、そして心肺機能の弱った方だ。前の4つに当てはまる人は42℃以上の高温浴を避ける。心肺機能の弱った方は、半身浴(みぞおちのあたりまでつかる入り方)や部分浴(手や足だけを湯につける入り方)が望ましいとされている。

事故の数字でも、80歳以上が全体の約6割を占める。親や祖父母を冬の温泉へ連れて行くなら、湯温の表は行き先を探す手がかりにはなる。ただ、表の値は撮った日のもので、季節でも時間でも動く。入る前に、その日の湯温を湯温計か掲示で確かめるのが先だ。パンフレットは、高齢者、子ども、体の不自由な人を1人きりで入らせないことも求めている。

もっと低い温度の湯を探すなら、群馬のぬる湯 日帰り12選がある。32.8℃からのぬる湯を温度順に並べ、加温しているかどうかも湯ごとに書いた。その記事にも書いたが、冬のぬる湯は湯冷めしやすいと私は感じている。温かい浴槽が併設された施設を選ぶと安心だ。

私のような40代も、関係のない話ではない。15〜64歳で亡くなった人は、令和6年で393人いる。

自宅の風呂では|脱衣所と浴室を暖める

ここからは家の風呂の話だ。消費者庁の資料に並ぶ対策は、家でできることが中心になっている。事故の多くが、家や居住施設の浴槽で起きているからだ。

  • 入る前に脱衣所と浴室を暖める。浴室に暖房がなければ、浴槽に湯を入れるときにシャワーから給湯する。湯が沸いたら十分にかき混ぜて蒸気を立て、蓋を外しておく
  • 湯温と入浴時間は、温度計とタイマーで確かめる
  • 入る前に、家族に一声かける。家族は「時間が長い」「音が全くしない」「突然大きな音がした」と感じたら、ためらわずに声をかける
  • 浴槽の中で意識がもうろうとしたら、気を失う前に湯を抜く

2020年の資料には、居間や脱衣所が18度未満の住宅では、湯温42度以上の「熱め入浴」が増えるという調査結果も紹介されている。寒い家ほど、熱い湯に入る人が多いということだ。

自宅の風呂の湯そのものを良くしたい人には、自宅風呂を温泉に近づける3段階の記事がある。

まとめ|冬の温泉で確かめる3つ

  1. 湯温を見る。浴室の湯温計か掲示で、いま入ろうとしている浴槽が何℃かを確かめる。公的な目安は41度以下・10分まで。高齢者や高血圧、心臓病、脳卒中の経験のある方は、42℃以上を避ける
  2. かけ湯をして、長くつからない。手足から全身へ。「何℃なら何分まで」という数字は、私が読んだ公的資料には無かった。熱い湯ほど短く、が私のやり方だ。時計のある浴室なら、時計を見るほうが確かだ
  3. ゆっくり立つ。出るときは手すりや浴槽のへりを使う。連れには一声かけておく

入浴の安全は、季節で注意点が変わる。夏の水分補給とサウナについては夏のサウナと熱中症の記事に、温泉の効能を公的資料でどこまで言えるかは温泉の効能はどこまで本当?にまとめた。

出典

よくある質問

Q. ヒートショックとは何ですか?
A. 消費者庁の資料は、温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動することなどによって起こる健康被害と説明しています。失神したり、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を起こすことがあり、特に冬場に多く、高齢者に多いのが特徴とされています。

Q. 温泉の湯温と入浴時間に、公的な目安はありますか?
A. 消費者庁は、高齢者の入浴事故を防ぐ目安として「湯温は41度以下、湯につかる時間は10分まで」を示してきました(2020年・2022年の資料)。環境省の温泉利用のパンフレットは、高齢者、高血圧、心臓病、脳卒中の経験のある方は42℃以上の高温浴を避けるよう書いています。

Q. 42℃を超える熱い温泉には、何分まで入れますか?
A. 「何℃なら何分まで」という換算は、この記事で確認した消費者庁、政府広報オンライン、環境省の資料には書かれていませんでした。環境省の基準は、入浴時間は入浴温度により異なるとしたうえで、1回当たり初めは3〜10分程度としています。消費者庁は、熱いお湯での入浴と長時間の入浴を避け、湯温や入浴時間を温度計やタイマーで確かめるよう呼びかけています。

Q. 冬の露天風呂で気をつけることは何ですか?
A. 公的資料に露天風呂を名指しした注意は見当たりませんが、事故の原因として挙げられているのは温度差による急激な血圧の変動と、熱い湯に長くつかることです。入る前にかけ湯をする、熱い湯に長くつからない、出るときに急に立ち上がらない、の3つは内湯と同じです。

Q. 入浴中の事故は高齢者だけの話ですか?
A. 多くは高齢者ですが、それ以外の年代でも起きています。消費者庁が紹介している令和6年の人口動態統計では、浴槽での溺死7,776人のうち65歳以上が7,363人(約95%)、15〜64歳は393人(5.1%)でした。

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